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第59話 将来の自分へ
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自分の未来を真剣に考え始めている祐輝は月曜日になり、学校へ行った。
この何事もない普通の学校生活は祐輝にとって気が休まる時間だった。
不良生徒はたくさんいるものの、祐輝は誘惑もしっかりと断ち切り野球に集中しようとしていた。
だが、学校では不良生徒が授業を抜け出しては校舎内で暴れているのが日常茶飯だ。
教師に取り押さえられて厳しい指導を受ける事になるが少しでも目を離すと生徒は学校から抜け出して街へ出て行く。
自由気ままでやりたい放題の不良生徒に対して羨ましいという感情を祐輝は捨て切れていなかったのも事実だった。
学校が終わり祐輝はいつもの様にミズキとランニングをしている。
「ゲーオのやつまた暴れてたね。」
「怖いよねえ。」
「もし俺が暴れたらどうする?」
「ふふふ! 野球できなくなるよ。」
ミズキは得意げな表情で期待している答えは返しませんという態度だ。
祐輝は「あっ」っと黙り込みチラリとミズキの顔を見るとニコニコと嬉しそうに笑っていた。
いつもの公園に着くとゆっくりとストレッチをしてから壁に向かってボールを軽く投げ始める。
ミズキはベンチに座って公園に向かう途中で買った駄菓子を食べながら見ているのが日常だ。
しばらく投げ込んで祐輝はまたしても軽く投げ始めてからストレッチをして一息つくとミズキの隣に座った。
「麩菓子食べる?」
「ありがとう。」
「それにしても祐輝君のボールって本当に速いよねえ!」
「まだまだ。 こんなんじゃ越田には勝てないよ。」
ミズキからもらった麩菓子を食べながら祐輝は越田の快音が鳴り響くバッティング姿を想像していた。
鋭いスイングと破壊音とも言えるバットがボールを運ぶ音を思い浮かべると祐輝の胸は熱くなった。
しかし警察官と話した時に悩んでいたナインズに残って野球をする事への疑問も消えたわけではない。
「なあミズキー。」
「なにい?」
「10年後の俺達ってどうなってんのかな。」
「えっ!? な、なにそれ!?」
警察官のような立派な人間になれているのか?
祐輝は将来の事が不安でならなかった。
突然の質問に驚くミズキは少し顔を赤くしておどおどしながらも冷静になろうと金平糖を口にたくさん入れた。
「大人になったら仕事して結婚して子供ができるだろ? いつか俺達だって大人になるんだよ。 その時俺達は何してるのかなって。」
「け、結婚!? そ、それはまだ早いかなあ・・・」
「え??」
ミズキの顔はリンゴ飴の様に赤くなっている。
祐輝は口角を少し上げると麩菓子にかぶりついた。
しばらくの間沈黙が続いたがミズキは金平糖を平らげるとふうっと大きく呼吸して口を開いた。
「憧れの仕事はまだわからないなあ。 でも結婚して子供と幸せに暮らすのはいいねえ! 男の子と女の子どっちも欲しいなあ! それで男の子には野球やらせるの!」
「マジか。 じゃあ女の子には勉強しっかりさせてバカな男の子に教えてやらないとな。」
「いいなあ。 毎日幸せかなあ?」
「幸せに決まってるよ。」
それは10年も未来の話だと言うのに修学旅行にでも行くかのような興奮っぷりだ。
直ぐ訪れる未来ではないのに楽しみになってきた2人は日が暮れるまで将来の話で盛り上がっていた。
祐輝は昨日の試合後に出会った警察官の話もした。
「へえ! お巡りさん優しいねえ!」
「カッコよかったよ。 あんな立派な大人になれるのか不安だよ。」
「プロ野球選手は立派だと思うよ?」
「なれたらね。」
「なれるよー! まだ中学生だよ?」
祐輝は静かにうなずいた。
その通りだとコクコクとうなずいた。
こんなにも可愛いミズキの将来像を聞いても付き合いもせずに野球に賭けているのに結果を残せなかったらミズキに申し訳ない。
祐輝はナインズで成長できないなら自分だけで成長すると固く決めたのだ。
必ず越田を倒すと誓って。
この何事もない普通の学校生活は祐輝にとって気が休まる時間だった。
不良生徒はたくさんいるものの、祐輝は誘惑もしっかりと断ち切り野球に集中しようとしていた。
だが、学校では不良生徒が授業を抜け出しては校舎内で暴れているのが日常茶飯だ。
教師に取り押さえられて厳しい指導を受ける事になるが少しでも目を離すと生徒は学校から抜け出して街へ出て行く。
自由気ままでやりたい放題の不良生徒に対して羨ましいという感情を祐輝は捨て切れていなかったのも事実だった。
学校が終わり祐輝はいつもの様にミズキとランニングをしている。
「ゲーオのやつまた暴れてたね。」
「怖いよねえ。」
「もし俺が暴れたらどうする?」
「ふふふ! 野球できなくなるよ。」
ミズキは得意げな表情で期待している答えは返しませんという態度だ。
祐輝は「あっ」っと黙り込みチラリとミズキの顔を見るとニコニコと嬉しそうに笑っていた。
いつもの公園に着くとゆっくりとストレッチをしてから壁に向かってボールを軽く投げ始める。
ミズキはベンチに座って公園に向かう途中で買った駄菓子を食べながら見ているのが日常だ。
しばらく投げ込んで祐輝はまたしても軽く投げ始めてからストレッチをして一息つくとミズキの隣に座った。
「麩菓子食べる?」
「ありがとう。」
「それにしても祐輝君のボールって本当に速いよねえ!」
「まだまだ。 こんなんじゃ越田には勝てないよ。」
ミズキからもらった麩菓子を食べながら祐輝は越田の快音が鳴り響くバッティング姿を想像していた。
鋭いスイングと破壊音とも言えるバットがボールを運ぶ音を思い浮かべると祐輝の胸は熱くなった。
しかし警察官と話した時に悩んでいたナインズに残って野球をする事への疑問も消えたわけではない。
「なあミズキー。」
「なにい?」
「10年後の俺達ってどうなってんのかな。」
「えっ!? な、なにそれ!?」
警察官のような立派な人間になれているのか?
祐輝は将来の事が不安でならなかった。
突然の質問に驚くミズキは少し顔を赤くしておどおどしながらも冷静になろうと金平糖を口にたくさん入れた。
「大人になったら仕事して結婚して子供ができるだろ? いつか俺達だって大人になるんだよ。 その時俺達は何してるのかなって。」
「け、結婚!? そ、それはまだ早いかなあ・・・」
「え??」
ミズキの顔はリンゴ飴の様に赤くなっている。
祐輝は口角を少し上げると麩菓子にかぶりついた。
しばらくの間沈黙が続いたがミズキは金平糖を平らげるとふうっと大きく呼吸して口を開いた。
「憧れの仕事はまだわからないなあ。 でも結婚して子供と幸せに暮らすのはいいねえ! 男の子と女の子どっちも欲しいなあ! それで男の子には野球やらせるの!」
「マジか。 じゃあ女の子には勉強しっかりさせてバカな男の子に教えてやらないとな。」
「いいなあ。 毎日幸せかなあ?」
「幸せに決まってるよ。」
それは10年も未来の話だと言うのに修学旅行にでも行くかのような興奮っぷりだ。
直ぐ訪れる未来ではないのに楽しみになってきた2人は日が暮れるまで将来の話で盛り上がっていた。
祐輝は昨日の試合後に出会った警察官の話もした。
「へえ! お巡りさん優しいねえ!」
「カッコよかったよ。 あんな立派な大人になれるのか不安だよ。」
「プロ野球選手は立派だと思うよ?」
「なれたらね。」
「なれるよー! まだ中学生だよ?」
祐輝は静かにうなずいた。
その通りだとコクコクとうなずいた。
こんなにも可愛いミズキの将来像を聞いても付き合いもせずに野球に賭けているのに結果を残せなかったらミズキに申し訳ない。
祐輝はナインズで成長できないなら自分だけで成長すると固く決めたのだ。
必ず越田を倒すと誓って。
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