青春聖戦 24年の思い出

くらまゆうき

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第51話 大学サークル化

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そして一週間後の週末。


鈴木監督が車から降りてくると助手席から若者が降りてきた。


健太の号令で挨拶をすると何食わぬ顔でグラウンドに入っていく。




「今日から練習に入る高橋コーチな。」




大学名の入ったユニフォームを着ている。


詳しい挨拶はなく何事もなく守備練習が始まった。


ポジションについた祐輝達は丸一日守備練習を行った。


鈴木監督は疲れると高橋コーチにノックを代わってもらった。


力任せで打ってくる高橋コーチのノックは危険そのものだった。


練習が終わるとエルドが怒っている。




「俺もう辞める!」
「おいおい・・・」




背番号も一番最後の13番にされてまともな練習もできないナインズに呆れていた。


エルドは愛想の悪さから良くやる気がないのではと勘違いされていた。


野球の技術もさほどなかったがバッティングだけは飛距離が出ていた。


エルドは打撃練習に集中したかったが新体制が発足して以来、バットを持てるのは試合の時だけだった。


祐輝と健太もエルドの言い分には納得していた。




「それにしても打撃練習やらないで勝てると思ってんのかな・・・」
「違う! あいつらはそんな事考えてないんだよ。 ただ大学サークルの延長でやってんだよ!!」
「確かにね。 そうだ! 明日の練習は集合時間の1時間前に集まって打撃練習俺達だけでやろう!! 俺が投げるから!」
「ほんと!? 祐輝の球を打てるのは良い練習だ!!」





祐輝達は鈴木監督なしで選手だけで朝早く来て練習を始める事にした。


これでやる気が伝わって鈴木監督も見直してくれるのではと祐輝は期待していた。


エルド達も祐輝の130キロ近いボールを打てるのは良い練習だった。


そして翌日の早朝。





「よしじゃあ1人ずつ打っていこう。 まずエルドから。」




祐輝はエルド相手に手を抜く事なく速いストレートをしっかり投げた。


まるで当たらなかったがエルドは嬉しそうだった。


後輩の1年生達には少し速度を遅くして投げていた。


最初は当たらなかったが段々とバットにかすってきていた。


練習を続ければ打てる様になるかもしれない。


中でもエルドは一番嬉しそうだった。


1時間経つと鈴木監督がグラウンドに入ってきた。




「おい!!! 何勝手に練習やってんだよ!! てめえら全員今日ランニングだ馬鹿野郎!!!!」





鈴木監督は激怒してランニングをさせた。


祐輝は健太と顔を見合わせて困惑していた。


何が悪かったのか?


それは責任者のいない状態での練習だった。


グラウンドは大間総監督が毎日、街から借りている。


子供だけで勝手に使う事はできなかった。


そして管理人が大間総監督に苦情を入れたのだった。


鈴木監督は祐輝達に激怒していた。


外野で走る祐輝達は不満で爆発しそうになっていた。


そして鈴木監督の方を見ると昨日、突如現れた高橋コーチとは別に若者が数人来ていた。


高橋コーチは自分の彼女まで連れてきていた。




「あいつら誰だよ。 やっぱり俺もう辞める!!」
「大問題だよね。 いやあ。 でも誰に相談すればいいんだ・・・佐藤コーチなら何とかしてくれそうだけどAチームと別のグラウンドにいるしね・・・」
「危ない!!」
『!!!!!』





外野を走っているとボールが飛んできた。


何事かと鈴木監督達の方を見ると高橋コーチらが外野に向かってボールを打ってきている。


まるで祐輝達がいないかの様に。


打球に注意しながら一日中走った。


グラウンドの使用時間が迫ると何も言わずに鈴木監督らは帰っていった。


後片付けをして祐輝達はグラウンドの外の公園で会議していた。


このままでは崩壊してしまうと。




「大間総監督に話す?」
「でもどうやって連絡取るの?」
「・・・・・・」




八方塞がりの祐輝は誰にも助けを求める事ができなかった。


成長するために大切な1年間をこの有様で終わらせたくなかった。


しかしどうする事もできなかった。


中学生達では何もできなかったのだ。
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