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第40話 父の形
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1年生も残り僅か。
学校生活は冬休みへと入りつつあった。
祐輝は相変わらず授業といえば社会科と国語しか真面目にやっていなかった。
特に理科の授業は何よりも嫌いだった。
祐輝は昆虫が大嫌いだったのだ。
理科では昆虫も時より出てくるものだから祐輝は授業をサボって図書室に隠れて日本史の本を読んだり学校の中を歩き回っていたりした。
「おー祐輝ー!」
「ゲーオ?」
「久しぶりー。」
小学校の頃に転校してきたゲーオだ。
彼も真面目に学校には来ていなかった。
今日はたまたま来ていた。
「今日は学校来ているんだね。」
「そうそうー。 家だと父親が発狂してて眠れないから学校で寝に来た。」
ゲーオの家庭環境は劣悪なのだろう。
祐輝は込み入って聞くことはしなかったがゲーオを見ているとわかる。
親から教わるであろう教養や礼儀がなっていなかった。
特に日本人は礼儀にうるさい人種だ。
人と会話をしているというのに指を差したりするのは失礼というものだ。
ゲーオに気にする様子もなくタバコ臭いブレザーの制服がヨレヨレだ。
「保健室の先生なら寝かせてくれるよ。」
「そうだなー。 あ、祐輝! 俺さあ東王会の先輩がいるんだけどさー祐輝に会いたがってたよー?」
「そっか。 俺は野球頑張るから入らないって言っといてくれよ。」
「えー野球なんて辞めちゃえよー。」
ゲーオは何も考える事なく言っただけだ。
しかしその言葉を聞くと祐輝の中で眠っている「何か」が目を覚ましかける。
言葉にできないほどの怒りが込み上げてきて手が小刻みに震えだす。
ゲーオのヘラヘラした表情を見ると殴り飛ばしてやりたくなった。
何もしないで道を誤ってる奴が偉そうに言うなと。
「うるせえなあ。」
「は?」
「まともに努力もしねえカスが何だってえ?」
祐輝はゲーオの胸ぐらを掴むとそのまま地面に叩きつけた。
校舎内でサボる2人は廊下で殴り合いの喧嘩を始めた。
ゲーオはカッターナイフを取り出したが祐輝に驚く様子もなくカッターナイフを持つ右手を蹴るとカッターナイフは飛んでいった。
そして祐輝はゲーオを何発も殴って鼻血を出させるとその場からいなくなった。
祐輝は学校を抜け出して家に帰った。
帰り道にある綺麗な稲荷神社に立ち寄って気持ちを落ち着かせる。
「はあ・・・あれはよくなかった・・・」
静かで落ち着いた雰囲気のある稲荷神社にいると気持ちが落ち着いて冷静になれた。
ゲーオに対してしてしまった事を反省している。
鼻血が出て抵抗できなくなるまで殴ってしまった。
中学生じゃなかったら捕まっている。
きっと家に電話が来ていて母親の真美が泣き崩れている。
祐輝には様々な事がよぎった。
稲荷神社に来てからもう1時間も経つ。
しかし動く気にもなれなかった。
「時より自分が自分じゃない気がする・・・」
そんな事を考えているとなんだか悲しくなってきた。
何か精神的な病気なんじゃないか。
それだからキレると止まらないのか。
自分が野球なんて続けていいのか。
「どうしてかなあ・・・佐藤コーチが父親だったら俺はゲーオの事を殴らずに我慢できる男になれてたのかなあ・・・雄太さん優しいもんなあ」
ゲーオの家庭環境も劣悪だが祐輝もなかなかだ。
父親の祐一の所有する自社ビルで暮らしているのに会う事はない。
自社ビルという存在が自分には形だけだが父親がいると再認識させる。
父親がいるのに自分に男のなんたるかや野球の楽しさを教えてくれるのは他人の父親。
かつて一樹の父もそうだった。
祐一よりも自分を大切に考えてくれていた。
「どうしてあいつの子供になったのかなあ。 貧乏でもいいから大事にしてもらいたかったなあ。」
「見てられないなあ。 君のそんな顔。 俺がお前の父親になってやろうか?」
突然話しかけてきた黒スーツの男性。
強面だがどこか優しそうにも見えた。
その男は財布から大量の金を出すと祐輝に渡した。
「俺の息子になれ。」
学校生活は冬休みへと入りつつあった。
祐輝は相変わらず授業といえば社会科と国語しか真面目にやっていなかった。
特に理科の授業は何よりも嫌いだった。
祐輝は昆虫が大嫌いだったのだ。
理科では昆虫も時より出てくるものだから祐輝は授業をサボって図書室に隠れて日本史の本を読んだり学校の中を歩き回っていたりした。
「おー祐輝ー!」
「ゲーオ?」
「久しぶりー。」
小学校の頃に転校してきたゲーオだ。
彼も真面目に学校には来ていなかった。
今日はたまたま来ていた。
「今日は学校来ているんだね。」
「そうそうー。 家だと父親が発狂してて眠れないから学校で寝に来た。」
ゲーオの家庭環境は劣悪なのだろう。
祐輝は込み入って聞くことはしなかったがゲーオを見ているとわかる。
親から教わるであろう教養や礼儀がなっていなかった。
特に日本人は礼儀にうるさい人種だ。
人と会話をしているというのに指を差したりするのは失礼というものだ。
ゲーオに気にする様子もなくタバコ臭いブレザーの制服がヨレヨレだ。
「保健室の先生なら寝かせてくれるよ。」
「そうだなー。 あ、祐輝! 俺さあ東王会の先輩がいるんだけどさー祐輝に会いたがってたよー?」
「そっか。 俺は野球頑張るから入らないって言っといてくれよ。」
「えー野球なんて辞めちゃえよー。」
ゲーオは何も考える事なく言っただけだ。
しかしその言葉を聞くと祐輝の中で眠っている「何か」が目を覚ましかける。
言葉にできないほどの怒りが込み上げてきて手が小刻みに震えだす。
ゲーオのヘラヘラした表情を見ると殴り飛ばしてやりたくなった。
何もしないで道を誤ってる奴が偉そうに言うなと。
「うるせえなあ。」
「は?」
「まともに努力もしねえカスが何だってえ?」
祐輝はゲーオの胸ぐらを掴むとそのまま地面に叩きつけた。
校舎内でサボる2人は廊下で殴り合いの喧嘩を始めた。
ゲーオはカッターナイフを取り出したが祐輝に驚く様子もなくカッターナイフを持つ右手を蹴るとカッターナイフは飛んでいった。
そして祐輝はゲーオを何発も殴って鼻血を出させるとその場からいなくなった。
祐輝は学校を抜け出して家に帰った。
帰り道にある綺麗な稲荷神社に立ち寄って気持ちを落ち着かせる。
「はあ・・・あれはよくなかった・・・」
静かで落ち着いた雰囲気のある稲荷神社にいると気持ちが落ち着いて冷静になれた。
ゲーオに対してしてしまった事を反省している。
鼻血が出て抵抗できなくなるまで殴ってしまった。
中学生じゃなかったら捕まっている。
きっと家に電話が来ていて母親の真美が泣き崩れている。
祐輝には様々な事がよぎった。
稲荷神社に来てからもう1時間も経つ。
しかし動く気にもなれなかった。
「時より自分が自分じゃない気がする・・・」
そんな事を考えているとなんだか悲しくなってきた。
何か精神的な病気なんじゃないか。
それだからキレると止まらないのか。
自分が野球なんて続けていいのか。
「どうしてかなあ・・・佐藤コーチが父親だったら俺はゲーオの事を殴らずに我慢できる男になれてたのかなあ・・・雄太さん優しいもんなあ」
ゲーオの家庭環境も劣悪だが祐輝もなかなかだ。
父親の祐一の所有する自社ビルで暮らしているのに会う事はない。
自社ビルという存在が自分には形だけだが父親がいると再認識させる。
父親がいるのに自分に男のなんたるかや野球の楽しさを教えてくれるのは他人の父親。
かつて一樹の父もそうだった。
祐一よりも自分を大切に考えてくれていた。
「どうしてあいつの子供になったのかなあ。 貧乏でもいいから大事にしてもらいたかったなあ。」
「見てられないなあ。 君のそんな顔。 俺がお前の父親になってやろうか?」
突然話しかけてきた黒スーツの男性。
強面だがどこか優しそうにも見えた。
その男は財布から大量の金を出すと祐輝に渡した。
「俺の息子になれ。」
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