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第38話 ミズキと祐輝
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越田へ思いを寄せる一方で祐輝の中学生活は平凡だった。
授業は適当に受けて家に帰る。
街に出て喧嘩をすれば東王会の構成員に声をかけられてしまう。
それはエースという夢への邪魔になる。
祐輝は家に帰っては歴史の勉強を続けた。
日本史をほぼ完璧なまでに覚えると世界史へと目を向け始めた。
歴史だけが自分の教科書で生き甲斐。
そんな平凡な少年へとなっていった。
ある日の学校での事だ。
ミズキは祐輝の隣に座った。
「あ、あのさ。 わ、私で良ければ・・・つ、つき・・・」
「月!? ああ月ねえ。 理科の授業で天体観測がどうとか言ってたね。」
「ええ!? あ、うん。 月って綺麗だよねえ・・・」
「そうだね。 太陽の光が反射しているから夜空で光るんだったよね。 そりゃ昔の人は神聖なものに見えるよなあ。 山中鹿之介なんて我に七難八苦を与えたまえとか言っちゃうんだからねえ。」
いつもこんな調子だった。
ミズキが話しかけると祐輝は優しく返答する。
しかし「付き合って」や「好き」という言葉が出そうな雰囲気になると祐輝は直ぐに話をそらしていた。
高い教養と豊富な知識でミズキを翻弄すると祐輝は足早にどこかへいってしまう。
下を向くミズキだがミズキも諦めなかった。
休み時間になると必ず話しかけてきた。
「あ、あのさあ。」
「ミズキ知ってるか? 日本人は昔から鶏肉は食べていたけど他の肉は食べた事なかったんだ。」
「え、うん?」
「それでな。 初めて肉を食べたのは牛でも豚でもない馬なんだよ。 戦闘で死んだ馬を食べたんだってさ。」
「へ、へえ・・・」
「じゃあ練習しに行くか。 ミズキ今日もついてくるのか?」
「う、うん・・・」
祐輝の頭の回転もさる事ながら話を強引に持っていく祐輝にミズキはペースを持っていかれ続けている。
本当は付き合いたい。
しかし祐輝は何故か話をそらす。
いつもの様に学校が終わると直ぐに家に帰ってランニングに出る祐輝と自転車を隠しているミズキは一緒に帰った。
「それバレたら高校進学に響くんじゃね?」
「いいのいいのー。」
「案外悪いよなあ。」
「ふふふ。」
楽しげに帰る2人。
地獄の合宿から帰るとある変化にミズキが気がついた。
それは祐輝すら気がつかない事だった。
「15時37分。 あれー。 いつも45分ぐらいになるのにー。 今日なんて祐輝君がたくさん話してくれたから50分ぐらいになっていると思った。」
「あ、あれ? 確かにな。 俺も軽く走っていた気がしたけど。」
走りながらミズキと会話をしている。
合宿前ならなんだかんだで息を荒くしていた。
しかし今は呼吸を上げる事もなくいつもの公園に着いた。
ミズキが言わなくては気がつかなかった。
「いい事を教えてくれたよ。 俺も成長してんだなあ。」
「凄いねえ! 疲れないの?」
「そうだねえ。 まだ全然いけるかな。」
成長期の少年とは恐ろしいものだ。
死ぬほど練習して死ぬほど食べて眠ると成長してしまう。
祐輝は確かに成長していた。
そして祐輝はミズキの自転車カゴからグローブとボールを取り出すと壁に向かって投げ始めた。
季節は残暑で蒸し暑さもあるが日が沈むと少し肌寒くなってきた。
1年生という時間もそろそろ終わり2年生になる。
下っ端の1年生から主力になるのだ。
祐輝はその自覚があった。
「祐輝君!!」
「ああ?」
「あ、あのさ!」
「うん。」
突然ミズキが大きな声を上げるので祐輝は驚いて壁から跳ね返ってくるボールを取り逃した。
慌ててボールを追いかけると道路へと転がっていく。
周りを見ずに道路へ飛び出した瞬間。
「いってっ!!」
ププッー!!!!!!!!!!
突然の頭痛に頭を抑えていると目の前を車が猛スピードで通過した。
驚いた表情でミズキを見ると青ざめていた。
危うく大事故になるところだった。
突然の頭痛がなければ・・・
授業は適当に受けて家に帰る。
街に出て喧嘩をすれば東王会の構成員に声をかけられてしまう。
それはエースという夢への邪魔になる。
祐輝は家に帰っては歴史の勉強を続けた。
日本史をほぼ完璧なまでに覚えると世界史へと目を向け始めた。
歴史だけが自分の教科書で生き甲斐。
そんな平凡な少年へとなっていった。
ある日の学校での事だ。
ミズキは祐輝の隣に座った。
「あ、あのさ。 わ、私で良ければ・・・つ、つき・・・」
「月!? ああ月ねえ。 理科の授業で天体観測がどうとか言ってたね。」
「ええ!? あ、うん。 月って綺麗だよねえ・・・」
「そうだね。 太陽の光が反射しているから夜空で光るんだったよね。 そりゃ昔の人は神聖なものに見えるよなあ。 山中鹿之介なんて我に七難八苦を与えたまえとか言っちゃうんだからねえ。」
いつもこんな調子だった。
ミズキが話しかけると祐輝は優しく返答する。
しかし「付き合って」や「好き」という言葉が出そうな雰囲気になると祐輝は直ぐに話をそらしていた。
高い教養と豊富な知識でミズキを翻弄すると祐輝は足早にどこかへいってしまう。
下を向くミズキだがミズキも諦めなかった。
休み時間になると必ず話しかけてきた。
「あ、あのさあ。」
「ミズキ知ってるか? 日本人は昔から鶏肉は食べていたけど他の肉は食べた事なかったんだ。」
「え、うん?」
「それでな。 初めて肉を食べたのは牛でも豚でもない馬なんだよ。 戦闘で死んだ馬を食べたんだってさ。」
「へ、へえ・・・」
「じゃあ練習しに行くか。 ミズキ今日もついてくるのか?」
「う、うん・・・」
祐輝の頭の回転もさる事ながら話を強引に持っていく祐輝にミズキはペースを持っていかれ続けている。
本当は付き合いたい。
しかし祐輝は何故か話をそらす。
いつもの様に学校が終わると直ぐに家に帰ってランニングに出る祐輝と自転車を隠しているミズキは一緒に帰った。
「それバレたら高校進学に響くんじゃね?」
「いいのいいのー。」
「案外悪いよなあ。」
「ふふふ。」
楽しげに帰る2人。
地獄の合宿から帰るとある変化にミズキが気がついた。
それは祐輝すら気がつかない事だった。
「15時37分。 あれー。 いつも45分ぐらいになるのにー。 今日なんて祐輝君がたくさん話してくれたから50分ぐらいになっていると思った。」
「あ、あれ? 確かにな。 俺も軽く走っていた気がしたけど。」
走りながらミズキと会話をしている。
合宿前ならなんだかんだで息を荒くしていた。
しかし今は呼吸を上げる事もなくいつもの公園に着いた。
ミズキが言わなくては気がつかなかった。
「いい事を教えてくれたよ。 俺も成長してんだなあ。」
「凄いねえ! 疲れないの?」
「そうだねえ。 まだ全然いけるかな。」
成長期の少年とは恐ろしいものだ。
死ぬほど練習して死ぬほど食べて眠ると成長してしまう。
祐輝は確かに成長していた。
そして祐輝はミズキの自転車カゴからグローブとボールを取り出すと壁に向かって投げ始めた。
季節は残暑で蒸し暑さもあるが日が沈むと少し肌寒くなってきた。
1年生という時間もそろそろ終わり2年生になる。
下っ端の1年生から主力になるのだ。
祐輝はその自覚があった。
「祐輝君!!」
「ああ?」
「あ、あのさ!」
「うん。」
突然ミズキが大きな声を上げるので祐輝は驚いて壁から跳ね返ってくるボールを取り逃した。
慌ててボールを追いかけると道路へと転がっていく。
周りを見ずに道路へ飛び出した瞬間。
「いってっ!!」
ププッー!!!!!!!!!!
突然の頭痛に頭を抑えていると目の前を車が猛スピードで通過した。
驚いた表情でミズキを見ると青ざめていた。
危うく大事故になるところだった。
突然の頭痛がなければ・・・
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