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第71章 ベップ躍動
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白神、進覇、獣王の猛反撃。
呂布軍の足は止まり、大乱戦の中でペップ達は進む。
敵軍総大将の呂布は竹子、甲斐、夜叉子と交戦している。
我らが主なら問題ない。
私兵がするべき事は主の戦いを援護する事だ。
そのためには敵兵を圧倒する必要がある。
「ペップ大丈夫!?」
「ガルルルッ!! 全然平気だよ! 早く行こうぜ!! あ、危ない!! ガルルルルッ!!」
「ペップ!!」
「直ぐに追いつく!!」
進覇隊の少佐の後ろに乗るルーナ。
2人を討ち取らんと呂布軍が襲いかかる。
ルーナが援護して進覇の少佐が討ち取る。
それでも倒しきれない敵はペップが完璧なまでに倒していった。
初陣のペップは初陣とは思えないほどに敵を倒していった。
「どけおらああああ!!!!!!」
「ふっ。 随分威勢の良い士官であるな。」
「ええ。 彼は今日が初陣なのです。」
「なんと。 末恐ろしいのお。」
「全くです。」
進覇の少佐でさえ関心するほどに。
ペップは戦場で躍動していた。
周囲の呂布軍を倒して、味方にまで声をかけている。
これが初陣なのか?
夜叉子が見込んだ男だというのか。
「逃げたければ逃げろよ呂布軍がああ!!! みんな頑張れ!! 呂布軍は引いているぞ!!!」
『おおおおおおおおお!!!!!!!』
ペップの声に応えるかの様に3隊の兵士達が咆哮を上げている。
爆発する士気の中でもペップは輝いていた。
生まれついての戦いの才能。
それがペップなのだ。
呂布軍は左から3隊の攻撃され右からはレミテリシアと混成軍に。
そして中央には3将の正規軍が反撃に出ていた。
やがて戦況は傾いた。
「追いかけろおおおお!!!!!」
『おおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!』
「お頭のために1人でも多く狩れえええええ!!!!!」
『ガオオオオオッ!!!!!!!』
呂布軍の要であった呂玲が甲斐に破れた事で敗走する兵士が出始めた。
呂玲も部下を連れて敗走。
ペップはその状況において猛追を始めた。
逃げる呂布軍の背中に次々と噛み付いた。
「殺せえええ!!!!」
『ガルルルルッ!!!』
白神隊と進覇隊はその場に止まった。
しかし獣王隊だけは追いかけた。
それが仕事なのだ。
敵兵に恐怖を与えたまま、1人でも多くの敵を狩る。
それが獣王でそれが誇り。
タイロンとクロフォードが先頭で獣王隊を率いるペップを見ている。
「実戦向きだったね。」
「お頭は気づいていたのかな。」
「たぶんね。 それでも部下に訓練をさせたのは兵士としての心構えを覚えさせるためだったんだろうね。」
「お頭はさすがだなあ。」
「ふっ。 当然だよ。」
逃げる敵の背中を斬る事は武士が多く在籍している白神、進覇には難しい事だった。
武士道に反するのだ。
しかし白神も進覇も心では理解している。
誰かがやらなくてはならないと。
敵を逃してもまた戻ってくる。
生き残った敵は練度を上げてまた殺しに来る。
そうなる前に徹底的に狩る。
しかしそんな事は賊の行いであって武士にはできない。
だからこそいい。
獣王は武士じゃない。
元は夜叉子の山賊だったのだから。
獣王隊とペップは中間地点にまで追撃した。
逃げる呂布軍を数千人は殺したであろう。
「もういいよ。 さあ帰るよ。」
タイロンの命令で獣王隊もやっと追撃の手を緩めて撤退を開始した。
その後呂布の討ち死にを聞いた獣王隊は歓喜した。
劣勢の戦況を覆した白陸軍の活躍は天上界に轟いた。
ペップも得意げに帰っていく。
「やってやったぜええ!!!!!」
白陸に戻ったペップはやっとルルと再会した。
大活躍だったペップは嬉しそうにしている。
しかしルルは浮かない表情だ。
不思議そうにルルの肩に手を置いて見ている。
「どうしたよ? 大勝利だぞ!!」
「12頭・・・」
「え?」
「ペップがいない間に12頭も仲間が死んだよ・・・」
「・・・・・・」
輝かしい大勝利の裏では戦死した兵士がいる。
ペップの部下だけで12頭。
獣王隊全体では122頭も戦死した。
これが戦争だ。
ペップは残酷な事実を知った。
「そうなのか・・・」
「勝手に走っていくから・・・私はみんなを一生懸命指揮したけど・・・呂布軍は強かったよ・・・」
「ご、ごめんな・・・」
「ペップは指揮官に向いてないよ・・・自分の活躍ばかり考えて・・・」
ルルは悲しそうに兵舎へと戻っていく。
ペップは愕然としてその場に立ち尽くしている。
すると背中をボンッと押された。
驚いて振り返るとクロフォードが見ている。
「どうした若造。 まさか誰も死なずに戦いに勝利できたとでも思ったか?」
「はい・・・」
「甘いな。 お前は確かによくやった。 叱る事があるなら勝手に白神の元へ行った事だ。 しかしその結果お前が獣王の先頭に立って敵の追撃までした。 褒めてやると同時に命令には従え。 今回は運が良かった。」
「あ、あの少佐・・・お、俺は指揮官に向いてませんか?」
落ち込んだ表情でクロフォードに話している。
耳をシクシクとかきながらも手や服についた呂布軍の兵士の血を美味しそうに舐めている。
そしてため息交じりの声で言った。
「向いているかどうか。 それは向いている。 しかし今のお前は経験もなければ冷静でもなかった。 ただお頭の様なカリスマ性だけで活躍した。 うちのお頭にはカリスマ性があって、冷静で賢い、そして優しい。 お前にないものばかりだ。」
圧倒的カリスマ性。
ペップは地獄の様な戦場で躍動した。
しかし目先の戦闘しか考えられなかった。
自分が持ち場を離れた事でルルがどんな思いをしたのか。
戦死した12頭はペップがいれば何か変わっていたかもしれない。
確かにあの時ペップが持ち場を離れた。
しかしルルは見送った。
結果として部下を死なせた。
後になって責任をペップに押し付けるのも間違っている。
まだ全員が未熟。
しかしこれはスポーツではない。
戦争なのだ。
必ず死んでしまう者が出る。
それを忘れてはいけない。
「少佐・・・俺が甘かったです・・・」
「まあ活躍は事実だ。 今日だけは喜べよ。 明日からは反省してお頭の背中を追いかけろ。」
「はい!!」
若き猛獣の躍動。
それは戦場全体では小さな事かもしれない。
しかしペップが戦っていた場所では大きな事だった。
レミテリシアの様に戦場全体の流れを変える事はできなくても。
部隊1つの勢いを取り戻した事は事実だ。
「ふう。 まだまだね。」
「はいお頭。」
「でも安心したよ。 私の目には狂いはなかったよ。」
「我らがお頭の目に狂いはありませんよ。」
「ふっ。 ありがとね。」
呂布との激闘を繰り広げた夜叉子は疲れた表情で煙管を吸っている。
タイロンが夜叉子の肩を揉んでいる。
城の下からペップを見下ろしている。
若き猛獣の躍動は夜叉子の心を少しだけ。
元気づけた。
激戦から数日後。
ペップは中尉になっていた。
しかしルルとは変わらず険悪な雰囲気のままだった。
「ルルおはよう。」
「どうも中尉殿。」
さっと敬礼して直ぐにいなくなってしまう。
よそよそしい態度でルルは目も合わせない。
ペップは考えていた。
「参ったなあ・・・部下も増えるのに副官のルルがあんな感じだとなあ・・・」
仲間が12頭も戦死した事はペップにとっても受け入れがたい事実だ。
しかし悲しむくらいなら成長したかった。
それが戦死した仲間にできる事だった。
「お前らありがとうな・・・俺はもっと成長する。 お前らの犠牲を無駄にしねえから。」
基地の中のベンチに座って空を見ている。
するとたこ焼きを持って走っている者がいる。
隣には竹子とルーナもいる。
それに琴の姿も。
「あっちい!! 早く夜叉子に持っていかねえと!」
「そないに焦らんでええよお。」
「ふふ。 夜叉子に会いたいんだよねえ。」
「そうだよ! こんな美味いたこ焼き熱いうちに食わせてやらねえと。」
虎白はたこ焼きを大事に持っている。
竹子や琴は笑いながらついていく。
するとルーナがペップに気がついた。
ビシッと敬礼している。
ペップも敬礼するとニコリと微笑んで虎白の後を追った。
「虎白様かあ。 何やってんだろ。 たこ焼きをお頭に食わせるとか言ってたな。」
虎白は戦いで疲れた家族に必ず何かする。
竹子には膝枕をして眠るまで側にいた。
甲斐には添い寝を。
そして夜叉子には愛する琴が作ったたこ焼きを持って今から会いに行く。
虎白は家族が大好きだ。
そして家族達も虎白が大好きなのだ。
「なんかいいなあ。 虎白様の決定で俺の仲間達も死んだんだよな・・・でも現場にいた指揮官の俺達の責任だよな。 虎白様ならこんな時どうするのかな・・・」
ペップは虎白と話したそうにソワソワしていた。
城の中に入ると竹子達の笑い声が聞こえる。
夜叉子も何処か幸せそうにたこ焼きを食べている。
すると虎白はペップに気がついた。
そして近づいてくるとじっと見ている。
「なんだお前。 中尉になったのか?」
「ま、まあ・・・」
「嬉しそうじゃねえな?」
「あ、あの虎白様・・・俺のせいで部下を死なせてしまって・・・副官のルル少尉が口も聞いてくれません・・・これから中隊を指揮するのにこれじゃ・・・」
「ルルって女の子のライオンだったよな?」
困った表情でうなずくペップも見て虎白は呆れた表情でため息をつく。
耳をしくしくかきながら遠くを見てあくびしている。
その呑気な様子に顔が強ばる。
「それだよそれ。 お前は自分の事しか考えてねえな。 俺が悩んでいるのに何眠そうにしてんだこの狐って思ったろ?」
「え、えっと・・・」
「ルル少尉をあんまり知らねえから確定的な事は言えねえけどさ。 女の子ってのは自分の事を大切に考えてあげないと寂しがるんだよ。 俺はお前のお頭が大好きだからよ。 呂布と戦って部下まで死なせてしまった夜叉子が傷ついていると思ってな。 たこ焼き持ってきたんだよ。」
虎白はいち早く決断して天上門で呂布軍を迎え撃った。
その結果国民に犠牲はなく、優秀な大将軍の活躍もあって勝利した。
しかし全てを決定した虎白の判断は称賛に値するが本人は何も喜ぶ事はなく、傷ついた大将軍達に寄り添った。
一方ペップは自分の活躍に酔いしれてルルの気持ちを理解してあげられなかった。
ルルを知らない虎白だったがかなり的確な事を言っていた。
「なるほど・・・」
「別にそのルルを嫁にしろとは言ってねえ。 でも女の子なんだから大切に扱ってやれ。 まあお前みたいな男の子はな。 ぶっ飛ばせばいいけどよ。 ヒヒッ。」
「ありがとうございます!!!」
「指揮官は我慢する事も大事だからよ。 グッと堪えてルルに寄り添ってやれよ。 あんまりイライラしたらまた喧嘩してやるからよ。」
そして虎白は立ち去った。
夜叉子達と楽しげにしている。
ペップはルルの元へ向かった。
呂布軍の足は止まり、大乱戦の中でペップ達は進む。
敵軍総大将の呂布は竹子、甲斐、夜叉子と交戦している。
我らが主なら問題ない。
私兵がするべき事は主の戦いを援護する事だ。
そのためには敵兵を圧倒する必要がある。
「ペップ大丈夫!?」
「ガルルルッ!! 全然平気だよ! 早く行こうぜ!! あ、危ない!! ガルルルルッ!!」
「ペップ!!」
「直ぐに追いつく!!」
進覇隊の少佐の後ろに乗るルーナ。
2人を討ち取らんと呂布軍が襲いかかる。
ルーナが援護して進覇の少佐が討ち取る。
それでも倒しきれない敵はペップが完璧なまでに倒していった。
初陣のペップは初陣とは思えないほどに敵を倒していった。
「どけおらああああ!!!!!!」
「ふっ。 随分威勢の良い士官であるな。」
「ええ。 彼は今日が初陣なのです。」
「なんと。 末恐ろしいのお。」
「全くです。」
進覇の少佐でさえ関心するほどに。
ペップは戦場で躍動していた。
周囲の呂布軍を倒して、味方にまで声をかけている。
これが初陣なのか?
夜叉子が見込んだ男だというのか。
「逃げたければ逃げろよ呂布軍がああ!!! みんな頑張れ!! 呂布軍は引いているぞ!!!」
『おおおおおおおおお!!!!!!!』
ペップの声に応えるかの様に3隊の兵士達が咆哮を上げている。
爆発する士気の中でもペップは輝いていた。
生まれついての戦いの才能。
それがペップなのだ。
呂布軍は左から3隊の攻撃され右からはレミテリシアと混成軍に。
そして中央には3将の正規軍が反撃に出ていた。
やがて戦況は傾いた。
「追いかけろおおおお!!!!!」
『おおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!』
「お頭のために1人でも多く狩れえええええ!!!!!」
『ガオオオオオッ!!!!!!!』
呂布軍の要であった呂玲が甲斐に破れた事で敗走する兵士が出始めた。
呂玲も部下を連れて敗走。
ペップはその状況において猛追を始めた。
逃げる呂布軍の背中に次々と噛み付いた。
「殺せえええ!!!!」
『ガルルルルッ!!!』
白神隊と進覇隊はその場に止まった。
しかし獣王隊だけは追いかけた。
それが仕事なのだ。
敵兵に恐怖を与えたまま、1人でも多くの敵を狩る。
それが獣王でそれが誇り。
タイロンとクロフォードが先頭で獣王隊を率いるペップを見ている。
「実戦向きだったね。」
「お頭は気づいていたのかな。」
「たぶんね。 それでも部下に訓練をさせたのは兵士としての心構えを覚えさせるためだったんだろうね。」
「お頭はさすがだなあ。」
「ふっ。 当然だよ。」
逃げる敵の背中を斬る事は武士が多く在籍している白神、進覇には難しい事だった。
武士道に反するのだ。
しかし白神も進覇も心では理解している。
誰かがやらなくてはならないと。
敵を逃してもまた戻ってくる。
生き残った敵は練度を上げてまた殺しに来る。
そうなる前に徹底的に狩る。
しかしそんな事は賊の行いであって武士にはできない。
だからこそいい。
獣王は武士じゃない。
元は夜叉子の山賊だったのだから。
獣王隊とペップは中間地点にまで追撃した。
逃げる呂布軍を数千人は殺したであろう。
「もういいよ。 さあ帰るよ。」
タイロンの命令で獣王隊もやっと追撃の手を緩めて撤退を開始した。
その後呂布の討ち死にを聞いた獣王隊は歓喜した。
劣勢の戦況を覆した白陸軍の活躍は天上界に轟いた。
ペップも得意げに帰っていく。
「やってやったぜええ!!!!!」
白陸に戻ったペップはやっとルルと再会した。
大活躍だったペップは嬉しそうにしている。
しかしルルは浮かない表情だ。
不思議そうにルルの肩に手を置いて見ている。
「どうしたよ? 大勝利だぞ!!」
「12頭・・・」
「え?」
「ペップがいない間に12頭も仲間が死んだよ・・・」
「・・・・・・」
輝かしい大勝利の裏では戦死した兵士がいる。
ペップの部下だけで12頭。
獣王隊全体では122頭も戦死した。
これが戦争だ。
ペップは残酷な事実を知った。
「そうなのか・・・」
「勝手に走っていくから・・・私はみんなを一生懸命指揮したけど・・・呂布軍は強かったよ・・・」
「ご、ごめんな・・・」
「ペップは指揮官に向いてないよ・・・自分の活躍ばかり考えて・・・」
ルルは悲しそうに兵舎へと戻っていく。
ペップは愕然としてその場に立ち尽くしている。
すると背中をボンッと押された。
驚いて振り返るとクロフォードが見ている。
「どうした若造。 まさか誰も死なずに戦いに勝利できたとでも思ったか?」
「はい・・・」
「甘いな。 お前は確かによくやった。 叱る事があるなら勝手に白神の元へ行った事だ。 しかしその結果お前が獣王の先頭に立って敵の追撃までした。 褒めてやると同時に命令には従え。 今回は運が良かった。」
「あ、あの少佐・・・お、俺は指揮官に向いてませんか?」
落ち込んだ表情でクロフォードに話している。
耳をシクシクとかきながらも手や服についた呂布軍の兵士の血を美味しそうに舐めている。
そしてため息交じりの声で言った。
「向いているかどうか。 それは向いている。 しかし今のお前は経験もなければ冷静でもなかった。 ただお頭の様なカリスマ性だけで活躍した。 うちのお頭にはカリスマ性があって、冷静で賢い、そして優しい。 お前にないものばかりだ。」
圧倒的カリスマ性。
ペップは地獄の様な戦場で躍動した。
しかし目先の戦闘しか考えられなかった。
自分が持ち場を離れた事でルルがどんな思いをしたのか。
戦死した12頭はペップがいれば何か変わっていたかもしれない。
確かにあの時ペップが持ち場を離れた。
しかしルルは見送った。
結果として部下を死なせた。
後になって責任をペップに押し付けるのも間違っている。
まだ全員が未熟。
しかしこれはスポーツではない。
戦争なのだ。
必ず死んでしまう者が出る。
それを忘れてはいけない。
「少佐・・・俺が甘かったです・・・」
「まあ活躍は事実だ。 今日だけは喜べよ。 明日からは反省してお頭の背中を追いかけろ。」
「はい!!」
若き猛獣の躍動。
それは戦場全体では小さな事かもしれない。
しかしペップが戦っていた場所では大きな事だった。
レミテリシアの様に戦場全体の流れを変える事はできなくても。
部隊1つの勢いを取り戻した事は事実だ。
「ふう。 まだまだね。」
「はいお頭。」
「でも安心したよ。 私の目には狂いはなかったよ。」
「我らがお頭の目に狂いはありませんよ。」
「ふっ。 ありがとね。」
呂布との激闘を繰り広げた夜叉子は疲れた表情で煙管を吸っている。
タイロンが夜叉子の肩を揉んでいる。
城の下からペップを見下ろしている。
若き猛獣の躍動は夜叉子の心を少しだけ。
元気づけた。
激戦から数日後。
ペップは中尉になっていた。
しかしルルとは変わらず険悪な雰囲気のままだった。
「ルルおはよう。」
「どうも中尉殿。」
さっと敬礼して直ぐにいなくなってしまう。
よそよそしい態度でルルは目も合わせない。
ペップは考えていた。
「参ったなあ・・・部下も増えるのに副官のルルがあんな感じだとなあ・・・」
仲間が12頭も戦死した事はペップにとっても受け入れがたい事実だ。
しかし悲しむくらいなら成長したかった。
それが戦死した仲間にできる事だった。
「お前らありがとうな・・・俺はもっと成長する。 お前らの犠牲を無駄にしねえから。」
基地の中のベンチに座って空を見ている。
するとたこ焼きを持って走っている者がいる。
隣には竹子とルーナもいる。
それに琴の姿も。
「あっちい!! 早く夜叉子に持っていかねえと!」
「そないに焦らんでええよお。」
「ふふ。 夜叉子に会いたいんだよねえ。」
「そうだよ! こんな美味いたこ焼き熱いうちに食わせてやらねえと。」
虎白はたこ焼きを大事に持っている。
竹子や琴は笑いながらついていく。
するとルーナがペップに気がついた。
ビシッと敬礼している。
ペップも敬礼するとニコリと微笑んで虎白の後を追った。
「虎白様かあ。 何やってんだろ。 たこ焼きをお頭に食わせるとか言ってたな。」
虎白は戦いで疲れた家族に必ず何かする。
竹子には膝枕をして眠るまで側にいた。
甲斐には添い寝を。
そして夜叉子には愛する琴が作ったたこ焼きを持って今から会いに行く。
虎白は家族が大好きだ。
そして家族達も虎白が大好きなのだ。
「なんかいいなあ。 虎白様の決定で俺の仲間達も死んだんだよな・・・でも現場にいた指揮官の俺達の責任だよな。 虎白様ならこんな時どうするのかな・・・」
ペップは虎白と話したそうにソワソワしていた。
城の中に入ると竹子達の笑い声が聞こえる。
夜叉子も何処か幸せそうにたこ焼きを食べている。
すると虎白はペップに気がついた。
そして近づいてくるとじっと見ている。
「なんだお前。 中尉になったのか?」
「ま、まあ・・・」
「嬉しそうじゃねえな?」
「あ、あの虎白様・・・俺のせいで部下を死なせてしまって・・・副官のルル少尉が口も聞いてくれません・・・これから中隊を指揮するのにこれじゃ・・・」
「ルルって女の子のライオンだったよな?」
困った表情でうなずくペップも見て虎白は呆れた表情でため息をつく。
耳をしくしくかきながら遠くを見てあくびしている。
その呑気な様子に顔が強ばる。
「それだよそれ。 お前は自分の事しか考えてねえな。 俺が悩んでいるのに何眠そうにしてんだこの狐って思ったろ?」
「え、えっと・・・」
「ルル少尉をあんまり知らねえから確定的な事は言えねえけどさ。 女の子ってのは自分の事を大切に考えてあげないと寂しがるんだよ。 俺はお前のお頭が大好きだからよ。 呂布と戦って部下まで死なせてしまった夜叉子が傷ついていると思ってな。 たこ焼き持ってきたんだよ。」
虎白はいち早く決断して天上門で呂布軍を迎え撃った。
その結果国民に犠牲はなく、優秀な大将軍の活躍もあって勝利した。
しかし全てを決定した虎白の判断は称賛に値するが本人は何も喜ぶ事はなく、傷ついた大将軍達に寄り添った。
一方ペップは自分の活躍に酔いしれてルルの気持ちを理解してあげられなかった。
ルルを知らない虎白だったがかなり的確な事を言っていた。
「なるほど・・・」
「別にそのルルを嫁にしろとは言ってねえ。 でも女の子なんだから大切に扱ってやれ。 まあお前みたいな男の子はな。 ぶっ飛ばせばいいけどよ。 ヒヒッ。」
「ありがとうございます!!!」
「指揮官は我慢する事も大事だからよ。 グッと堪えてルルに寄り添ってやれよ。 あんまりイライラしたらまた喧嘩してやるからよ。」
そして虎白は立ち去った。
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