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第三十七話 兄妹 1
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「ステラ……仕事に就くつもりあるなら、いいかげん希望だしてくれないか?」
「ごめんなさい……」
痺れを切らした特士担当調査室のトップからお叱りを受けてしまった。
修道院希望は正式に取り下げたのだが、その後で希望がなかなか出せなかった私の元に、とうとう王宮から苦情が来たのだ。
単にカルマリンお兄様が、仕事から逃げるついでに私のところに顔を出して、催促を受けているだけだともいうが。
そのカルマリンお兄様はだらしなく椅子に座って、蜂蜜色の髪を掻きあげながら、お茶請けの焼き菓子をむしゃむしゃ食べている。その兄の紅茶をタイミングよくつぎ足しているのはミレンディアだ。
私はその前でうなだれていた。
「色々迷っていて、決めかねてて……」
「贅沢な悩みだなぁ」
そういわれればぐうの音も出ない。彼視点からしたらそうだろう。
王族で、しかも嫡男として生まれついた以上、他の選択肢など選びようがなかったのだから。
この国で、カルマリン王太子以上に職業どころか他の選択の自由もない人はいないだろう。
彼に比べたら自分は王女の立場だったとしても、まだ自由だった。
「確かにさ、お前は自分の才覚でもって特士という資格を得たよ? でも、俺みたいに最初からその受験すらできない人間だっているということを覚えていてくれよな」
「……そりゃそうですけど……」
「冗談だよ……なんか、お前、無駄にナーバスになってない?」
最初から受験する考えすらないからな? と反省した表情の私に、兄の方がオロオロしだした。
しかし兄は冗談ぽく言っていたが、そう思っていてもおかしくないのだ。
強固な、血による継承となっているこの国の王位は男子の子供が優先して相続となる。
「まー、お前の受験の時ですら俺も父上も反対してたんだけどね。スピネルだけが賛成してたんだよな」
「え? スピネル様と婚約して国内にとどまることが決定してたから受験できたってことではなくて?」
「受験勉強自体が姫がするには過酷すぎるレベルだって知ってたから、無理だから止めろとも言ってたんだよ。でもスピネルがやらせてみろって」
スピネル様から聞いていたのと話が違う、知らない事実が現れた。
彼は私と婚約破棄する意志はなかったのに、合格したら私が裏切るかのように婚約破棄を言い出したものだから噴飯ものだっただろう。
なんとなく申し訳ない気分になった。私がそう思っていたところに。
「なんつーか……ごめんな?」
なぜか兄が謝ってきた。
「何がですか?」
「俺が余計なこと言ったせいで、お前らを余計にこじらせちまったみたいなんでさ……」
なんのことだろうと思って話しを聞いていたら、どうやら大聖母職の凍結のことらしい。
兄の言葉もスピネル様の政治的後押しの一因だったときいて、その事実より兄の誤解の内容の方にあきれ返ってしまった。
「もう気になさらないでください」
こじらせる以前にこじらせるような関係も、二人の間になかったのだから。
これもある種の結果オーライみたいなものなのだろうか。
しかし、兄の顔は晴れない。何かを言いたそうな、聞きたそうな顔をしている兄だったが、諦めたのか、はぁ、と大きく1つため息をついた。
「お前って、ほんとにいつも何も言わないな。なんでそうなったかとかもさ……」
「はい?」
「もういいよ……じゃあ、お前ってスピネルとどうすんの? 結局このまま結婚してもいいのか?」
「……それに関してはもう収拾がつきましたし。スピネル様が婚約解消するおつもりがないなら、そのまま結婚するしかないでしょう?」
それに、相手に何か思惑があるみたいだし。
よくわからないなら、このまま黙って状況を見ているしかない。
「そうじゃないよ。じゃあ、お前はスピネルのこと、好きなわけ?」
「お兄様?」
なぜ結婚することと、好きがイコールで繋がるような言い方をしているのだろう。
平民のリベラルタスが言った時はまだ納得いったけれど、相手が生まれた瞬間から自分の婚約者となった人がいる兄は、私以上に結婚に夢を見ることができないはずなのに。
兄の考えがわからなくて首を傾げた。兄は私のその様子を見て、ああ、うう、と頭を掻きむしっている。
「ちゃんと、スピネルのことを男として見て、生涯を共にできるって思えるのか? 将来浮気しちゃったーとか、そういうのは後で考えるとしてもさ」
なんかとんでもないことを言われた気がする。
兄にとって、結婚した人が浮気するのはさておいてもいいことらしい。
先ほどまでお菓子を貪り食っていたのに、唐突に真剣な顔をされるから困る。どこか遠いところを見ているような目で言っているが、何を考えているのだろうか。
「俺はさ、王になる未来を持っている。皆、俺の後ろに王冠を見ている。王とは全ての民に対して相手が臣だ。だからこの国の誰もが俺が命じれば従わざるを得なくなっちまう存在だ。そんな相手となんてまともな恋愛しようとしてくれる人間はいないんだよな。でもさ、お前は違うだろ? 王族といってもお前は対等の相手として結婚できるし、望めば臣籍にだって下れる。そんなお前がさ、王女だから誰かを好きになるのを諦めるとか、そういうのってもったいなくない? 王太子としてしか生きれない俺からしたら、自分の気持ちを無視してどーすんのって思う」
「お兄様……」
それなら同じ王族であり、自分と同じ立場の婚約者である隣国の姫君……エルザ様と恋をすればいいだけなのに。
隣の国の方だというのに生まれつき躰が弱く、まだ一度もお会いしたことのない王女だ。
兄は私にこんなことを言うのに、自分にはそんな可能性があり得ないというような言い回しをしている。
自分はまだ幼いという婚約者の彼女を、愛するつもりがないのだろうか。
「婚約期間ってさ、まだ結婚してないんだから、ある種のお試し期間じゃねーの? だからさ、お前は自分が幸せになるための結婚をしろ。お前だけじゃなくて、シルヴィアにも俺、同じこと言ったんだからな? ほんとに嫌ならやめちまえばいーんだ」
「王命での婚約を?」
「ダメ元って言葉知ってるか? とりあえずダダをこねる。それでうまくいったら儲けもの」
ふざけたように兄が笑う。
違う言葉だけれど本質は同じようなことを、どこかで自分も言ったことがあるような気がする。
あの時、初めて彼……スピネル様と喧嘩をした日。
自分と結婚したくないはずのスピネル様が、チャンスを掴まないことを腹立たしく感じていた。
その時にスピネル様に言ったことは『選ぶものは少ないかもしれないけれど、納得できるように戦え』ということだった。
兄がいうのは、彼を受け入れると決めたのなら、自分をも変えろということなのかもしれない。
それは、スピネル様が『不満があったら言え、直せるところは直す』といったのと同じなのだろうか。
――私は正直なところ、まだそういうことを、ちゃんとわかっていない。
「……お兄様と私、似てますね」
「兄妹だからじゃないか? 片親しかつながってないけど」
そう言ってお互いの顔を見つめる。
男だからだろうか。昔は正妃様に似ていると思っていた兄は、今はどことなく父王の面影が見える気がする。
歳をとって顔立ちが変わってきたのだろう。
ということは、父によく似ていると言われる私も兄に似ているのだろうか。
自分がどのように人から見られ、そしてどのような未来を過ごすべきかを幼い時から意識している王太子。
どこか飄々として軽い人だと思うこともあったけれど、やはりしっかりしているなぁ、と尊敬の念を抱きつつも、王国の帝王学はちゃんと実っているようだと失礼な安心もしてしまった。
「ごめんなさい……」
痺れを切らした特士担当調査室のトップからお叱りを受けてしまった。
修道院希望は正式に取り下げたのだが、その後で希望がなかなか出せなかった私の元に、とうとう王宮から苦情が来たのだ。
単にカルマリンお兄様が、仕事から逃げるついでに私のところに顔を出して、催促を受けているだけだともいうが。
そのカルマリンお兄様はだらしなく椅子に座って、蜂蜜色の髪を掻きあげながら、お茶請けの焼き菓子をむしゃむしゃ食べている。その兄の紅茶をタイミングよくつぎ足しているのはミレンディアだ。
私はその前でうなだれていた。
「色々迷っていて、決めかねてて……」
「贅沢な悩みだなぁ」
そういわれればぐうの音も出ない。彼視点からしたらそうだろう。
王族で、しかも嫡男として生まれついた以上、他の選択肢など選びようがなかったのだから。
この国で、カルマリン王太子以上に職業どころか他の選択の自由もない人はいないだろう。
彼に比べたら自分は王女の立場だったとしても、まだ自由だった。
「確かにさ、お前は自分の才覚でもって特士という資格を得たよ? でも、俺みたいに最初からその受験すらできない人間だっているということを覚えていてくれよな」
「……そりゃそうですけど……」
「冗談だよ……なんか、お前、無駄にナーバスになってない?」
最初から受験する考えすらないからな? と反省した表情の私に、兄の方がオロオロしだした。
しかし兄は冗談ぽく言っていたが、そう思っていてもおかしくないのだ。
強固な、血による継承となっているこの国の王位は男子の子供が優先して相続となる。
「まー、お前の受験の時ですら俺も父上も反対してたんだけどね。スピネルだけが賛成してたんだよな」
「え? スピネル様と婚約して国内にとどまることが決定してたから受験できたってことではなくて?」
「受験勉強自体が姫がするには過酷すぎるレベルだって知ってたから、無理だから止めろとも言ってたんだよ。でもスピネルがやらせてみろって」
スピネル様から聞いていたのと話が違う、知らない事実が現れた。
彼は私と婚約破棄する意志はなかったのに、合格したら私が裏切るかのように婚約破棄を言い出したものだから噴飯ものだっただろう。
なんとなく申し訳ない気分になった。私がそう思っていたところに。
「なんつーか……ごめんな?」
なぜか兄が謝ってきた。
「何がですか?」
「俺が余計なこと言ったせいで、お前らを余計にこじらせちまったみたいなんでさ……」
なんのことだろうと思って話しを聞いていたら、どうやら大聖母職の凍結のことらしい。
兄の言葉もスピネル様の政治的後押しの一因だったときいて、その事実より兄の誤解の内容の方にあきれ返ってしまった。
「もう気になさらないでください」
こじらせる以前にこじらせるような関係も、二人の間になかったのだから。
これもある種の結果オーライみたいなものなのだろうか。
しかし、兄の顔は晴れない。何かを言いたそうな、聞きたそうな顔をしている兄だったが、諦めたのか、はぁ、と大きく1つため息をついた。
「お前って、ほんとにいつも何も言わないな。なんでそうなったかとかもさ……」
「はい?」
「もういいよ……じゃあ、お前ってスピネルとどうすんの? 結局このまま結婚してもいいのか?」
「……それに関してはもう収拾がつきましたし。スピネル様が婚約解消するおつもりがないなら、そのまま結婚するしかないでしょう?」
それに、相手に何か思惑があるみたいだし。
よくわからないなら、このまま黙って状況を見ているしかない。
「そうじゃないよ。じゃあ、お前はスピネルのこと、好きなわけ?」
「お兄様?」
なぜ結婚することと、好きがイコールで繋がるような言い方をしているのだろう。
平民のリベラルタスが言った時はまだ納得いったけれど、相手が生まれた瞬間から自分の婚約者となった人がいる兄は、私以上に結婚に夢を見ることができないはずなのに。
兄の考えがわからなくて首を傾げた。兄は私のその様子を見て、ああ、うう、と頭を掻きむしっている。
「ちゃんと、スピネルのことを男として見て、生涯を共にできるって思えるのか? 将来浮気しちゃったーとか、そういうのは後で考えるとしてもさ」
なんかとんでもないことを言われた気がする。
兄にとって、結婚した人が浮気するのはさておいてもいいことらしい。
先ほどまでお菓子を貪り食っていたのに、唐突に真剣な顔をされるから困る。どこか遠いところを見ているような目で言っているが、何を考えているのだろうか。
「俺はさ、王になる未来を持っている。皆、俺の後ろに王冠を見ている。王とは全ての民に対して相手が臣だ。だからこの国の誰もが俺が命じれば従わざるを得なくなっちまう存在だ。そんな相手となんてまともな恋愛しようとしてくれる人間はいないんだよな。でもさ、お前は違うだろ? 王族といってもお前は対等の相手として結婚できるし、望めば臣籍にだって下れる。そんなお前がさ、王女だから誰かを好きになるのを諦めるとか、そういうのってもったいなくない? 王太子としてしか生きれない俺からしたら、自分の気持ちを無視してどーすんのって思う」
「お兄様……」
それなら同じ王族であり、自分と同じ立場の婚約者である隣国の姫君……エルザ様と恋をすればいいだけなのに。
隣の国の方だというのに生まれつき躰が弱く、まだ一度もお会いしたことのない王女だ。
兄は私にこんなことを言うのに、自分にはそんな可能性があり得ないというような言い回しをしている。
自分はまだ幼いという婚約者の彼女を、愛するつもりがないのだろうか。
「婚約期間ってさ、まだ結婚してないんだから、ある種のお試し期間じゃねーの? だからさ、お前は自分が幸せになるための結婚をしろ。お前だけじゃなくて、シルヴィアにも俺、同じこと言ったんだからな? ほんとに嫌ならやめちまえばいーんだ」
「王命での婚約を?」
「ダメ元って言葉知ってるか? とりあえずダダをこねる。それでうまくいったら儲けもの」
ふざけたように兄が笑う。
違う言葉だけれど本質は同じようなことを、どこかで自分も言ったことがあるような気がする。
あの時、初めて彼……スピネル様と喧嘩をした日。
自分と結婚したくないはずのスピネル様が、チャンスを掴まないことを腹立たしく感じていた。
その時にスピネル様に言ったことは『選ぶものは少ないかもしれないけれど、納得できるように戦え』ということだった。
兄がいうのは、彼を受け入れると決めたのなら、自分をも変えろということなのかもしれない。
それは、スピネル様が『不満があったら言え、直せるところは直す』といったのと同じなのだろうか。
――私は正直なところ、まだそういうことを、ちゃんとわかっていない。
「……お兄様と私、似てますね」
「兄妹だからじゃないか? 片親しかつながってないけど」
そう言ってお互いの顔を見つめる。
男だからだろうか。昔は正妃様に似ていると思っていた兄は、今はどことなく父王の面影が見える気がする。
歳をとって顔立ちが変わってきたのだろう。
ということは、父によく似ていると言われる私も兄に似ているのだろうか。
自分がどのように人から見られ、そしてどのような未来を過ごすべきかを幼い時から意識している王太子。
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