【完結】色素も影も薄い私を美の女神と誤解する彼は、私を溺愛しすぎて困らせる。

すだもみぢ

文字の大きさ
上 下
50 / 60

第47話 別れ

しおりを挟む

 
 
 
 
 
 
 
 
 向かい合うように座ったままの俺たち――俺はまたユンファ様に口付け、その甘い舌を舐めて、絡めとってやりながら。
 ユンファ様の首元を覆っていた白い布、彼のうなじにある紐をほどき、緩めて――すると案外容易く、はらりとそれは、取り払うことができた。
 そうして俺が脱がせるなりユンファ様は、は…と唇を自ら離し――その顔を伏せ気味に…それでいて嬉しそうに頬を染め、微笑んでいる。
 
「…そういえば…先ほど僕は、清いのは唇だけだなんだと言いましたが…ソンジュ様、実はまだ…――僕の首にも、ジャスル様の唇は触れておりません…、先ほどは、首布をしたままでしたから……」
 
「…おぉそうですか…、それは何より嬉しく思います。――ふ、では…失礼いたします、ユンファ様……」
 
 ユンファ様はどこか緊張したように「はい…」と答えながら、その首を横へ反らして俺に差し出してくる。
 俺はユンファ様の、まだ踏み荒らされていない新雪…その白く、流れるような美しい首筋を上からそっと鎖骨まで、つー、と指先で掠め撫でた。…意外にもしっかりと喉仏が、孤島のように浮かんでいるのが何とも官能的だ。
 ひく…とわずかな反応を示した彼に、俺はその人の首筋へ顔を寄せ――口付ける。
 
「…ふ、…ん…っ♡」
 
 ふにゅりと俺の唇が触れれば、ゾクゾク、と先ほどより反応を強め、ユンファ様は俺の肩をきゅうと掴んでくる。…甘く小さな声をもらしたユンファ様、カタカタと震えているその手、ぬくもりの濃いなめらかな白肌は粟立ち…――もう片手は自分の口元を押さえた彼、
 
「あっ、なっなんて声を…! ごめんなさい、く、擽ったくて……」
 
「…ふ…本当にそれだけですか、ユンファ様…? とても艶やかで、可愛らしい声でしたよ…。どうか堪えず、あるがままに声を出してくださいませ……」
 
 どうせもう、誰ぞに聞かれたところで今更よ、ならば思うままにつがい合うほうがよい…俺はユンファ様の首筋にそう囁き――それから、舌を出してつぅと擽ればビクリ、ひっとよりあらわな反応を見せるユンファ様。
 
 なんと初々しく、可愛らしい反応か…――。
 
 つー…と舌でなぞり、軽く吸い付き、ペロペロと舐める…甘く、芳醇な桃の香も濃い――桃の味もまた、濃い。
 
「…ん…♡ …んぅ…♡ は、あ、くっ擽ったい…、ぁぁ…♡」
 
 ひくん、……ひくん、と小さく跳ねるユンファ様の体は、俺を誘う。…擽ったい、などと言いながら甘い声を出しているこの人は、未知の快感にそう言っているだけなのだ。
 
「…ぅぅ…♡ そ、ソンジュ様…ぁ……」
 
 ちろちろとその甘い肌を舐め、ちゅうと軽く吸い付きながら――するりと彼の衿元を撫でるよう割り、ユンファ様の肩のほうへ下げてゆく。
 
「…ソンジュ様…、あの……」
 
「…綺麗だ……」
 
 あらわになった白い鎖骨は、くっきりと浮き――首の筋に繋がって、華奢な影を落としている。…というのもユンファ様は、先ほど思い切って自分の胸元を俺に見せ付けてきたわり、…胸板の中央まで衿元を掴んで引き上げ、胸を隠し、俯かせた顔を真っ赤にしているのだ。
 しかし、その人の黒髪がさらりとかかる白い肩は、すっかり晒され――今曲げられている肘まで、その薄桃色の着物も、中の襦袢も下ろされている。
 
「…はは、むしろ…でございますよ、ユンファ様……」
 
「……? それは、どういう…」
 
 すかさずその鎖骨にちゅっと吸い付けば、ぁ、と息を詰めたユンファ様。
 ならばと俺は、ユンファ様の帯を解いてゆく。…幸い、俺にとってこの装束は勝手知ったるという構造であり、俺がこの帯を解いてゆくのは、それこそ鎖骨を舐めながらでもできるほど、あまりにも簡単である。
 
 ――甘く香る芳醇な桃の熟れた匂い…若桃に、かぷりと甘噛み。…つまり、その鎖骨にやわく歯を立てると、ぴくんっとユンファ様の体が小さく跳ねる。
 
「…ッ♡ ソンジュ、様……」
 
 そのあとは、鎖骨のくぼみを舌で擽る。…ユンファ様の、自分の着物を握ったその手にきゅうと、力が入る。
 するりと、かかる髪を避けるように撫で付けたその人の肩――俺の手のひらは、ユンファ様の意外にも筋肉質な、それでいて細い二の腕をなめらかに、滑りゆく。
 
「…はぁぁ……♡ ソンジュ様、僕…幸せでございます…」
 
 すると、それだけでふるふるとしたユンファ様の体がじんわりと熱くなり、内側からしっとりと湿ってくる――。
 
「……俺も、愛しのユンファ様に触れることが許され、今、至上の喜びを感じております……」
 
「……、ふふ…」
 
 斜へ伏せられた、その端正な顔は頬が紅潮し、はにかんでほのかに笑う。――着物の衿元を持ち上げて胸元を隠し、やや竦められた白い肩、それによってよりくっきりと浮かんだ妖艶な鎖骨と…上部のみ覗く、平たく雪のように白い胸板。…艶美な黒髪がさらさら落ちて、いくらかまたその白い肩に、胸板にかかる。
 
 
 
 可憐でありながら、何とも妖艶な人だ――男として、貪欲となるほどに。
 
 
 
 
 
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いつか彼女を手に入れる日まで

月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

彼の秘密はどうでもいい

真朱
恋愛
アンジェは、グレンフォードの過去を知っている。アンジェにとっては取るに足らないどうでもいいようなことなのだが、今や学園トップクラスのモテ男へと成長したグレンフォードにとっては、何としても隠し通したい黒歴史らしい。黒歴史もろともアンジェを始末したいほどに。…よろしい。受けてたちましょう。     ◆なんちゃって異世界です。史実には一切基づいておりませんので、ご理解のほどお願いいたします。  ◆あらすじはこんなカンジですが、お気楽コメディです。  ◆ざまあのお話ではありません。ご理解の上での閲覧をお願いします。スカッとしなくてもクレームはご容赦ください。

元婚約者が愛おしい

碧桜 汐香
恋愛
いつも笑顔で支えてくれた婚約者アマリルがいるのに、相談もなく海外留学を決めたフラン王子。 留学先の隣国で、平民リーシャに惹かれていく。 フラン王子の親友であり、大国の王子であるステファン王子が止めるも、アマリルを捨て、リーシャと婚約する。 リーシャの本性や様々な者の策略を知ったフラン王子。アマリルのことを思い出して後悔するが、もう遅かったのだった。 フラン王子目線の物語です。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

【完結】婚約破棄されたので田舎に引きこもったら、冷酷宰相に執着されました

21時完結
恋愛
王太子の婚約者だった侯爵令嬢エリシアは、突然婚約破棄を言い渡された。 理由は「平凡すぎて、未来の王妃には相応しくない」から。 (……ええ、そうでしょうね。私もそう思います) 王太子は社交的な女性が好みで、私はひたすら目立たないように生きてきた。 当然、愛されるはずもなく――むしろ、やっと自由になれたとホッとするくらい。 「王都なんてもう嫌。田舎に引きこもります!」 貴族社会とも縁を切り、静かに暮らそうと田舎の領地へ向かった。 だけど―― 「こんなところに隠れるとは、随分と手こずらせてくれたな」 突然、冷酷無慈悲と噂される宰相レオンハルト公爵が目の前に現れた!? 彼は王国の実質的な支配者とも言われる、権力者中の権力者。 そんな人が、なぜか私に執着し、どこまでも追いかけてくる。 「……あの、何かご用でしょうか?」 「決まっている。お前を迎えに来た」 ――え? どういうこと? 「王太子は無能だな。手放すべきではないものを、手放した」 「……?」 「だから、その代わりに 私がもらう ことにした」 (いや、意味がわかりません!!) 婚約破棄されて平穏に暮らすはずが、 なぜか 冷酷宰相に執着されて逃げられません!?

もう何も信じられない

ミカン♬
恋愛
ウェンディは同じ学年の恋人がいる。彼は伯爵令息のエドアルト。1年生の時に学園の図書室で出会って二人は友達になり、仲を育んで恋人に発展し今は卒業後の婚約を待っていた。 ウェンディは平民なのでエドアルトの家からは反対されていたが、卒業して互いに気持ちが変わらなければ婚約を認めると約束されたのだ。 その彼が他の令嬢に恋をしてしまったようだ。彼女はソーニア様。ウェンディよりも遥かに可憐で天使のような男爵令嬢。 「すまないけど、今だけ自由にさせてくれないか」 あんなに愛を囁いてくれたのに、もう彼の全てが信じられなくなった。 【お詫び】読んで頂いて本当に有難うございます。短編予定だったのですが5万字を越えて長くなってしまいました。申し訳ありません長編に変更させて頂きました。2025/02/21

処理中です...