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第二十二話 売られた喧嘩は買いあげる
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「婚約相手に対して愛がないなら、いっそ結婚なんてやめた方がいいですわよ。これは貴方のために忠告してあげているの」
得意そうに衆人環視の中で大声で言うセリフではないだろうに。
この人、馬鹿なんじゃないだろうか。
頭、平気? とそちらの心配をしながら、その痩せた躰の上にのっている頭を心配そうに見てしまった。
「ええ、愛がないのは当たり前でしょう?」
政略結婚というのはそういうものでしょう? としれっと言ってやったが。
「それに、愛がないのは貴方とアレックスも同じでしょうし?」
「どういうこと?」
「テレーゼ様って、ヘンリー様とお付き合いされてますわよね?」
さりげなくそう言ってやったが、 狼狽でもするかと思えば、テレーゼは単に驚いただけのように目を丸くしている。
そして、なぜかにんまりと笑った。
堂々としているテレーゼと違い、自分の隣にいるヘンリーは見るからに動揺している。これが普通の反応だと思うのだけれど。
「ええ、そうね。とぉっても仲よくさせてもらっているわ」
周囲がざわざわ、としている。
きっと私が言っている内容が、どういうことなのだろうと話しているのだろう。
私の煽りが効いているのか、思わせぶりたっぷりにこちらを見つめてくるテレーゼ様。
なんでそんなに得意そうなのか、いまいち彼女の感性がわからない。
それでも私のいうことは変わらないのだけれどね。
「ヘンリー様は私とは単なる婚約者であって、別に恋人というわけではありませんから、嫉妬する気もないですし。貴族の婚約というものは、そういうものではないですか? 家同士の繋がりが優先されますしね」
私たちの気持ちが優先されるという夢を持っていた時期が私にもありましたけどね。今はそんな夢見る気持ちもなくなりました。
「テレーゼもリンダもいいかげんにしないか」
ヘンリー様が割って入ってくるが、叱られるのも、たしなめられるのも私ではなくテレーゼである。私が言われる筋合いはない。
そこに私たちを止めるのにふさわしい人が現れた。
「どうなさいました?」
「侯爵夫人!」
大声でやりあっている……いや、大声を出しているのはテレーゼだけなのだけれど、それを見かねたのかホスト側が入って来たようだ。
「本日はお招きいただきありがとうございます」
突然入ってきたサリダ侯爵夫人に礼を取る私と違い、親を見つけたひな鳥のように、テレーゼは甘えた声で彼女に訴える。
「侯爵夫人様ぁ、私、リンダ様にいじめられてるんです!」
誰がいじめるか。そう目を剥くが否定するのも面倒くさい。
そういえば、ここの家の侯爵は、テレーゼの名付け親でもあったはずだ。きっと家族ぐるみの付き合いなのだろう。テレーゼの母は娘に似ず社交的な人のようだから。
しかしテレーゼに言われたサリダ侯爵夫人は、ほほほ、と笑っているだけで、私に注意をしようともしない。
大体、いい歳をして、大人にいじめられたと言いつけるの?
子供じゃあるまいし。自分のことは自分でなんとかしなさいよ。
それにサリダ侯爵夫人は私に意見をできない立場なのだ。
我が家の方が身分は下だが、我が伯爵家とサリダ侯爵家が取引をしている事業での収益は馬鹿にならないレベルのものだから。
そんな人が取引先の子女と問題を起こしたいと思うはずがない。
父の権威を嵩にきているように思われるのは癪_にさわるが、面倒ごとを私のせいにされなくてよかったとは思う。
「私がテレーゼ様をいじめる? 私、テレーゼ様とお話したこと、今までありませんでしたわよね」
「私のアレックスと幼馴染であることを鼻にかけて、事ある毎に嫌味を言ってるじゃないですか」
……。
さりげなくアレックスを所有格で呼んだことにカチンときた。
そちらがそのつもりなら、この喧嘩、買ってやろうじゃないの。
このパーティーの主催者がここにいて、私たちを積極的に止めようとしないなら、この際、言いたいことを言ってやろう。
「アレックスと幼馴染なことって威張れることですの?」
「ほら、聞いたでしょ! 私の婚約者のことをなれなれしく名前で呼んでます!」
「貴方の頭の中では、私がアレックスを呼ぶことだけで、嫌味に変換されているんですか?」
私たちは幼馴染だし。そんな今さらなことをどうして文句を言われているのだろう。
私とアレックスの仲を知ってるお嬢様方は当惑して、私たちを遠巻きに見つめている。
「幼馴染ですもの、呼び捨てで呼ぶのは当たり前でしょう? 私、ロナードのことも名前で呼び捨ててますけれど?」
「あの方は別でしょ。もうお相手が決まっているのですから」
「相手が決まっているというのなら、アレックスも同じでは? ああ、ご自身によほど自信がないんですのね~」
棒読みで嫌味ったらしく言ってやる。
大人っぽい感じにイメチェンしていてよかった。こういう嫌味たらしい言葉が似合うこと似合うこと。
「私とアレックスは幼馴染ですし、社交界に顔を出すようになってからもそれまでも、二人きりで会うこともしてませんし、節度ある付き合いしかしておりません。テレーゼ様とヘンリー様と大違いでね」
「私たちの関係なんて、そんなの貴方に関係ないじゃない」
それとなく突っついてみれば、つん、と鼻を上に向けてテレーゼは威張る。
いや、否定しなくていいのだろうか。
私より上位に立とうとして周囲が見えてないのだろうか、この人は。
「そんなわけにはいかないでしょう? 貴族の子女として。それに私は一応、ヘンリー様の婚約者ですし。それに、テレーゼ様はアレックスの婚約者でしょう?」
これは息を飲んで私たちのやり取りを見守っている周囲に状況説明だ。私と彼女がどういう関係なのか知らない人もいるだろうから。
「どうして、そんな方が他人の婚約者といちゃいちゃべたべたと仲良くなさっているのでしょう? テレーゼ様はアレックスと婚約破棄したいのですか?」
もしテレーゼもアレックスとの婚約解消したくて、あえて不貞行為をしているというのなら、それに協力すべきだ。その方が私の望みに近いのだから。
しかし、彼女は何をバカなことを、と鼻で嗤ってきた。
「イチャイチャだなんて。単にヘンリー様と仲がいいだけよ。それにアレックス様が私と婚約破棄なんて認めるわけないでしょ」
「どうしてそんなことを思うのです?」
「アレックス様は私を愛しているからよ」
どこから来る自信なのだろう。
おかしい。
アレックスはテレーゼに愛想をつかされる行動をとっているはずだったのに、どうしてテレーゼはアレックスから愛されているという自信に満ち溢れているのだろうか。
あきれ返って絶句した私に、どうだ、とばかりにテレーゼがバカにしきった目で見てくる。
しかし。
「俺は他の男といちゃいちゃするような尻軽はごめんだ」
それまでどこでやりとりを見ていたのだろうか。成り行きを黙って見ていたアレックスが口を挟んだ。
その言葉を聞いて、テレーゼが意外なものを聞いたような顔をする。それこそ、鳩が豆鉄砲を食ったというのに近いような表情だ。
この状況でもこの後に及んで、アレックスが自分の味方をしてくれると全面的に信じていたようだ。
「え、どうして?」
「なんで『どうして』なんて言えるんだ? 俺には君がそう思えるのが理解できない」
心底不快そうにテレーゼを睨み、彼女に一定以上近づこうとしないアレックスは、私と彼女の間に入ってくる。その背で私を守るかのように。
「君の素行だけでなく、この場で問題を起こしたことをも両家に伝え、婚約解消の手続きを行う。文句はないな? テレーゼ」
「どうして!? 私が問題を起こしたんじゃないわ。リンダ様が私に嫌がらせをしてきたのに」
「リンダは俺が君と婚約していることすら、こないだまで知らなかったぞ? どうやって嫌がらせするんだ?」
軽蔑しきったような冷えた声。アレックスの表情が見えなかったけれど、その声だけでもこちらの肝も凍りそうだった。
得意そうに衆人環視の中で大声で言うセリフではないだろうに。
この人、馬鹿なんじゃないだろうか。
頭、平気? とそちらの心配をしながら、その痩せた躰の上にのっている頭を心配そうに見てしまった。
「ええ、愛がないのは当たり前でしょう?」
政略結婚というのはそういうものでしょう? としれっと言ってやったが。
「それに、愛がないのは貴方とアレックスも同じでしょうし?」
「どういうこと?」
「テレーゼ様って、ヘンリー様とお付き合いされてますわよね?」
さりげなくそう言ってやったが、 狼狽でもするかと思えば、テレーゼは単に驚いただけのように目を丸くしている。
そして、なぜかにんまりと笑った。
堂々としているテレーゼと違い、自分の隣にいるヘンリーは見るからに動揺している。これが普通の反応だと思うのだけれど。
「ええ、そうね。とぉっても仲よくさせてもらっているわ」
周囲がざわざわ、としている。
きっと私が言っている内容が、どういうことなのだろうと話しているのだろう。
私の煽りが効いているのか、思わせぶりたっぷりにこちらを見つめてくるテレーゼ様。
なんでそんなに得意そうなのか、いまいち彼女の感性がわからない。
それでも私のいうことは変わらないのだけれどね。
「ヘンリー様は私とは単なる婚約者であって、別に恋人というわけではありませんから、嫉妬する気もないですし。貴族の婚約というものは、そういうものではないですか? 家同士の繋がりが優先されますしね」
私たちの気持ちが優先されるという夢を持っていた時期が私にもありましたけどね。今はそんな夢見る気持ちもなくなりました。
「テレーゼもリンダもいいかげんにしないか」
ヘンリー様が割って入ってくるが、叱られるのも、たしなめられるのも私ではなくテレーゼである。私が言われる筋合いはない。
そこに私たちを止めるのにふさわしい人が現れた。
「どうなさいました?」
「侯爵夫人!」
大声でやりあっている……いや、大声を出しているのはテレーゼだけなのだけれど、それを見かねたのかホスト側が入って来たようだ。
「本日はお招きいただきありがとうございます」
突然入ってきたサリダ侯爵夫人に礼を取る私と違い、親を見つけたひな鳥のように、テレーゼは甘えた声で彼女に訴える。
「侯爵夫人様ぁ、私、リンダ様にいじめられてるんです!」
誰がいじめるか。そう目を剥くが否定するのも面倒くさい。
そういえば、ここの家の侯爵は、テレーゼの名付け親でもあったはずだ。きっと家族ぐるみの付き合いなのだろう。テレーゼの母は娘に似ず社交的な人のようだから。
しかしテレーゼに言われたサリダ侯爵夫人は、ほほほ、と笑っているだけで、私に注意をしようともしない。
大体、いい歳をして、大人にいじめられたと言いつけるの?
子供じゃあるまいし。自分のことは自分でなんとかしなさいよ。
それにサリダ侯爵夫人は私に意見をできない立場なのだ。
我が家の方が身分は下だが、我が伯爵家とサリダ侯爵家が取引をしている事業での収益は馬鹿にならないレベルのものだから。
そんな人が取引先の子女と問題を起こしたいと思うはずがない。
父の権威を嵩にきているように思われるのは癪_にさわるが、面倒ごとを私のせいにされなくてよかったとは思う。
「私がテレーゼ様をいじめる? 私、テレーゼ様とお話したこと、今までありませんでしたわよね」
「私のアレックスと幼馴染であることを鼻にかけて、事ある毎に嫌味を言ってるじゃないですか」
……。
さりげなくアレックスを所有格で呼んだことにカチンときた。
そちらがそのつもりなら、この喧嘩、買ってやろうじゃないの。
このパーティーの主催者がここにいて、私たちを積極的に止めようとしないなら、この際、言いたいことを言ってやろう。
「アレックスと幼馴染なことって威張れることですの?」
「ほら、聞いたでしょ! 私の婚約者のことをなれなれしく名前で呼んでます!」
「貴方の頭の中では、私がアレックスを呼ぶことだけで、嫌味に変換されているんですか?」
私たちは幼馴染だし。そんな今さらなことをどうして文句を言われているのだろう。
私とアレックスの仲を知ってるお嬢様方は当惑して、私たちを遠巻きに見つめている。
「幼馴染ですもの、呼び捨てで呼ぶのは当たり前でしょう? 私、ロナードのことも名前で呼び捨ててますけれど?」
「あの方は別でしょ。もうお相手が決まっているのですから」
「相手が決まっているというのなら、アレックスも同じでは? ああ、ご自身によほど自信がないんですのね~」
棒読みで嫌味ったらしく言ってやる。
大人っぽい感じにイメチェンしていてよかった。こういう嫌味たらしい言葉が似合うこと似合うこと。
「私とアレックスは幼馴染ですし、社交界に顔を出すようになってからもそれまでも、二人きりで会うこともしてませんし、節度ある付き合いしかしておりません。テレーゼ様とヘンリー様と大違いでね」
「私たちの関係なんて、そんなの貴方に関係ないじゃない」
それとなく突っついてみれば、つん、と鼻を上に向けてテレーゼは威張る。
いや、否定しなくていいのだろうか。
私より上位に立とうとして周囲が見えてないのだろうか、この人は。
「そんなわけにはいかないでしょう? 貴族の子女として。それに私は一応、ヘンリー様の婚約者ですし。それに、テレーゼ様はアレックスの婚約者でしょう?」
これは息を飲んで私たちのやり取りを見守っている周囲に状況説明だ。私と彼女がどういう関係なのか知らない人もいるだろうから。
「どうして、そんな方が他人の婚約者といちゃいちゃべたべたと仲良くなさっているのでしょう? テレーゼ様はアレックスと婚約破棄したいのですか?」
もしテレーゼもアレックスとの婚約解消したくて、あえて不貞行為をしているというのなら、それに協力すべきだ。その方が私の望みに近いのだから。
しかし、彼女は何をバカなことを、と鼻で嗤ってきた。
「イチャイチャだなんて。単にヘンリー様と仲がいいだけよ。それにアレックス様が私と婚約破棄なんて認めるわけないでしょ」
「どうしてそんなことを思うのです?」
「アレックス様は私を愛しているからよ」
どこから来る自信なのだろう。
おかしい。
アレックスはテレーゼに愛想をつかされる行動をとっているはずだったのに、どうしてテレーゼはアレックスから愛されているという自信に満ち溢れているのだろうか。
あきれ返って絶句した私に、どうだ、とばかりにテレーゼがバカにしきった目で見てくる。
しかし。
「俺は他の男といちゃいちゃするような尻軽はごめんだ」
それまでどこでやりとりを見ていたのだろうか。成り行きを黙って見ていたアレックスが口を挟んだ。
その言葉を聞いて、テレーゼが意外なものを聞いたような顔をする。それこそ、鳩が豆鉄砲を食ったというのに近いような表情だ。
この状況でもこの後に及んで、アレックスが自分の味方をしてくれると全面的に信じていたようだ。
「え、どうして?」
「なんで『どうして』なんて言えるんだ? 俺には君がそう思えるのが理解できない」
心底不快そうにテレーゼを睨み、彼女に一定以上近づこうとしないアレックスは、私と彼女の間に入ってくる。その背で私を守るかのように。
「君の素行だけでなく、この場で問題を起こしたことをも両家に伝え、婚約解消の手続きを行う。文句はないな? テレーゼ」
「どうして!? 私が問題を起こしたんじゃないわ。リンダ様が私に嫌がらせをしてきたのに」
「リンダは俺が君と婚約していることすら、こないだまで知らなかったぞ? どうやって嫌がらせするんだ?」
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