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片想いの時間
カミングアウト7
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まさかの言葉だった。
それ、オレの台詞だし
拓也が言うとは微塵も思っていなかったから思わず声が出ない。
「あ…いや?」
「嫌なわけない!ない!オレも思ってたから!」
「なんだそれ…」
小さくだけどやっと拓也が申し訳なさそうに笑った。
どんな理由があろうと好きな人に求められるのは嬉しい。
「これでちょっとは恩返しが出来たかな…」
「なに?」
「球技大会の時の」
「まだ言ってんのかよそれ
アレはもう時効でおわりだよ」
拓也はホッとしてくれたのかもしれない。
口調は柔らかいけれど普段通りに話出して
体制をずりずり戻し座り直してくれたおかげで
繋いだ手が握りやすくなる。
でも、それは必然的にピッタリ拓也にくっつくから鼓動の早さがバレないか心配になる。
「花火やる前に戻らないとなぁ…」
「いいよ別に」
「やったことないんだろ?吟味してたじゃん」
「いいよ、
花火大会行ってくれるって言ってたし」
「……帰ったら手持ち花火やろ?」
「いいの?」
「アパート近くにベンチと水道しかない公園があんだよ。
皆そこでやってる。」
「拓也バイトは?
オレ帰ってからも二日休みもらってるけど」
「明後日まで休みだから大丈夫だし
居酒屋だから昼間寝ればいいよ」
「あ…えっと…」
「?なに?」
何?って…無意識?
話しながら拓也が繋いでオレの指を反対側の手で遊び始めていた。
指を撫でたり…摘まんだり…さすったり…
それはそれは優しくてなんだか愛撫みたいで気が気じゃなくなる。
「あっオレ手持ち花火…」
「……先がヒラヒラしてるんだよ
ヒラヒラしてる方に火着ければいいんだけど
いきなり花火出るから初めては怖いかもなぁ
最初は俺がやるから光は見てればいいよ」
しかもいつもより優しい…甘い口調になんだかゾクゾクする。
「どうした?あ…」
やっと気付いたかと思ったら違っていた。
お迎えだ。
拓也の目線がオレから外されたのに気付いてオレもそちらを向くと
奈緒が手を振りながらゆっくり歩いて来ていた。
「まだバレてないと思うから
お前はゆっくりおいで?光、ありがとうな?」
拓也の手がゆっくり離され立ち上がると
頭を軽く撫でられ行ってしまった。
行かないで!
思わず叫びそうになったのを慌てて手で押さえた。
「告白の話聞いたけど気まずいなら片付け終わる頃にまた来るよ?
肝試しもう少しで終わるけど、まだ間に合うし
ただ花火する時に火欲しいからライターだけ借りていい?」
「花火はもうすぐだろ?
花火だけ参加するから俺点火するよ
光に話聞いてもらってたから大丈夫
気使わせてごめんな?先に行って花火準備しといてやるよ」
ついて来ないオレに気付いた奈緒が
入れ替わるよう街灯下に来てくれたのにも関わらずオレは行ってしまう拓也をずっと見てた。
分からない、分からないけど今まで一番寂しく思った。
離れたくないって思った。
名残惜しい気持ちが駆け抜ける。
「光はどうする?肝試しまだ途中参加出来るよ?
ひか…」
「奈緒…オレ…」
口を塞いでた手を取ると小さくなっていく拓也から目を背けて目を擦った。
どっかしらで拠り所にしていた奈緒の言葉を思い出した。
「たくが…好きだ…」
言ってしまったとは思わない。
行ってしまったのが本当に寂しくなってしまった。
好きすぎて泣けるなんて思ってもみなかった。
誰かに聞いて欲しかった。
拓也に告白なんてしないでくれたらよかったのにと逆恨みもいいところだ
「うん…」
「うっ…うーっっ…」
「辛いよね、好きなのに友人でいなきゃいけないのは」
否定をしないですんなり受け入れてくれた奈緒は気付いたんだろうなぁとどこかで気付いた。
なのにあんな態度とった自分に今はこんな優しくしてくれて…
もうなんの涙か訳が分からなくなる。
もっと繋いでいたかった。
そうだ、ちょっと恋人でいたんだ。
「同性だから凄く辛いよね…話てくれてありがとう光」
よく見かけてた手を繋いだまま座って喋ってるカップル。
それだけで嬉しそうで幸せそうで羨ましい
会話はきっとたわいない会話なんだろうなぁって…
オレの中で恋人になってた時間だったんだ。
それ、オレの台詞だし
拓也が言うとは微塵も思っていなかったから思わず声が出ない。
「あ…いや?」
「嫌なわけない!ない!オレも思ってたから!」
「なんだそれ…」
小さくだけどやっと拓也が申し訳なさそうに笑った。
どんな理由があろうと好きな人に求められるのは嬉しい。
「これでちょっとは恩返しが出来たかな…」
「なに?」
「球技大会の時の」
「まだ言ってんのかよそれ
アレはもう時効でおわりだよ」
拓也はホッとしてくれたのかもしれない。
口調は柔らかいけれど普段通りに話出して
体制をずりずり戻し座り直してくれたおかげで
繋いだ手が握りやすくなる。
でも、それは必然的にピッタリ拓也にくっつくから鼓動の早さがバレないか心配になる。
「花火やる前に戻らないとなぁ…」
「いいよ別に」
「やったことないんだろ?吟味してたじゃん」
「いいよ、
花火大会行ってくれるって言ってたし」
「……帰ったら手持ち花火やろ?」
「いいの?」
「アパート近くにベンチと水道しかない公園があんだよ。
皆そこでやってる。」
「拓也バイトは?
オレ帰ってからも二日休みもらってるけど」
「明後日まで休みだから大丈夫だし
居酒屋だから昼間寝ればいいよ」
「あ…えっと…」
「?なに?」
何?って…無意識?
話しながら拓也が繋いでオレの指を反対側の手で遊び始めていた。
指を撫でたり…摘まんだり…さすったり…
それはそれは優しくてなんだか愛撫みたいで気が気じゃなくなる。
「あっオレ手持ち花火…」
「……先がヒラヒラしてるんだよ
ヒラヒラしてる方に火着ければいいんだけど
いきなり花火出るから初めては怖いかもなぁ
最初は俺がやるから光は見てればいいよ」
しかもいつもより優しい…甘い口調になんだかゾクゾクする。
「どうした?あ…」
やっと気付いたかと思ったら違っていた。
お迎えだ。
拓也の目線がオレから外されたのに気付いてオレもそちらを向くと
奈緒が手を振りながらゆっくり歩いて来ていた。
「まだバレてないと思うから
お前はゆっくりおいで?光、ありがとうな?」
拓也の手がゆっくり離され立ち上がると
頭を軽く撫でられ行ってしまった。
行かないで!
思わず叫びそうになったのを慌てて手で押さえた。
「告白の話聞いたけど気まずいなら片付け終わる頃にまた来るよ?
肝試しもう少しで終わるけど、まだ間に合うし
ただ花火する時に火欲しいからライターだけ借りていい?」
「花火はもうすぐだろ?
花火だけ参加するから俺点火するよ
光に話聞いてもらってたから大丈夫
気使わせてごめんな?先に行って花火準備しといてやるよ」
ついて来ないオレに気付いた奈緒が
入れ替わるよう街灯下に来てくれたのにも関わらずオレは行ってしまう拓也をずっと見てた。
分からない、分からないけど今まで一番寂しく思った。
離れたくないって思った。
名残惜しい気持ちが駆け抜ける。
「光はどうする?肝試しまだ途中参加出来るよ?
ひか…」
「奈緒…オレ…」
口を塞いでた手を取ると小さくなっていく拓也から目を背けて目を擦った。
どっかしらで拠り所にしていた奈緒の言葉を思い出した。
「たくが…好きだ…」
言ってしまったとは思わない。
行ってしまったのが本当に寂しくなってしまった。
好きすぎて泣けるなんて思ってもみなかった。
誰かに聞いて欲しかった。
拓也に告白なんてしないでくれたらよかったのにと逆恨みもいいところだ
「うん…」
「うっ…うーっっ…」
「辛いよね、好きなのに友人でいなきゃいけないのは」
否定をしないですんなり受け入れてくれた奈緒は気付いたんだろうなぁとどこかで気付いた。
なのにあんな態度とった自分に今はこんな優しくしてくれて…
もうなんの涙か訳が分からなくなる。
もっと繋いでいたかった。
そうだ、ちょっと恋人でいたんだ。
「同性だから凄く辛いよね…話てくれてありがとう光」
よく見かけてた手を繋いだまま座って喋ってるカップル。
それだけで嬉しそうで幸せそうで羨ましい
会話はきっとたわいない会話なんだろうなぁって…
オレの中で恋人になってた時間だったんだ。
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