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片想いの時間
変わっていく日3
しおりを挟むいつか話す。
と安易に言ってしまった。
そのいつかを今にしてしまいそうでグッと我慢した。
そのいつかは絶対に来ないようにしなくてはいけない。
それと同時に自分の状況を確認してしまう
今日は帰りたくないと今までで一番思った。
お化け屋敷を出ると室内よりは多少明るい夜になっていた。
「最後にパレード見て帰ろうか?」
「うん!」
最後…あー嫌だなぁ…
「最後かぁ…嫌だな…」
「名残惜しいもんだよココにくると」
拓也の返答に自分の心の声がポロッと出てしまったことに気づいて恥ずかしくなる。
いつの間にか拓也と密着するように歩いて行く。
混雑していて必然とそうなってしまう
不思議に思っているとパレードを見る人がさっきまで歩けていた場所に座っていてその後ろでは立っている人も群れみたいにいる。
「ここの通りでやるの?」
「そうだよ、端で見よう
邪魔にならないし通路の邪魔にならない」
暗さもあって何処から立ち見の人か歩行者の列かオレには分からないほどだった。
人混みを縫うように前を歩く拓也の背中を追うのはなかなか大変だ。
しかも悲しいことに拓也とオレの足のコンパスが違うせいで早歩きをされると小走りで追うしかない。
「待った!待った!置いてってる!」
「あぁっわりぃ!」
気づいた拓也が振り返り手を差し伸べてきた。
おもむろに…自然に…
いやいや、握れるわけないだろ
いや前のオレなら何も考えないで手を握っただろうけど…
さっきだって
いちゃこらしようか?なんて言ってきて
意識したら、それすら鼓動が早くなった。
今だって自分が意識してるせいで周りに見られたらどうすんだよとも思う。
「詰まるから立ち止まるな
はぐれるよりマシだろ?早く人混み抜けるよ?」
痺れを切らした拓也がオレの手首を握って引っ張る。
「ごっごめん!」
自分の手首を掴む手を見つめる。
ゴツゴツしていて大きくて腕なんかも太い…
男の人の手だ…
オレもこうなりたい…
頼りない軟弱なこの身体が嫌になる
結局は庇われてフォローされて…
自分が嫌いだ
なんでだろ…
終わりが近づいてるせいでナーバスになっていく
「あっちは木が邪魔で微妙かもしれないから
ちょっと遠いけどここなら花火も見れる」
ちょっとだけ…ちょっとだけ…
掴んでいる手が緩だ隙に拓也の手のひらに手を滑り込ませて添えるみたいに触れてみた。
あくまでも自然に…
拓也が手を離すまで無意識にしちゃったみたいにに…
俺の気持ちと裏腹に流れていた曲は消えて放送が流れる。
パレード開始の合図。
いちゃこらする…って言ってたらしてくれた?
ダメもとで言ってみたら良かった。
誤魔化しはいくらでも出来たのに
身体が斜め後ろに引っ張られて傾く。
慌てて片足を後ろに下げて態勢を整えたけれど
肩が拓也の腕に当たって止まる。
拓也がオレの手を握ったまま後ろに手を組んだせいだと分かった。
「た…たく…」
「ほら来た!行っちまうからしっかり見ろよ!」
パレードはビックリするくらい明るくて
今までで一番綺麗で幻想的で目が離せなかった。
惚れ惚れする…
でも、オレの頭は違う方を考えている。
えっ?
えっ?いいの?
バレたんだよな?
「手に触れてきたのお前だろ?
何ビックリしてんだよ」
やっぱりバレたのか…
「光は俺が好きだもんな?」
「いや…好きだけどさ」
今のオレにはキツイ冗談…
パレードを見ている拓也は楽しそうに笑っている
その顔にオレはパレードなんかよりも魅入っていた。
ココでは一番の見所のはずなのに勿体無いとは思わなかった。
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