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友人の時間
隠し事2
しおりを挟む俺の光に対しての違和感は直ぐ解消された。
でも理由は分かったけど分からなくて…
それは前触れもなく全てが突然で…
「何?光お前ケガしてんの?」
球技大会当日
グランド現地に集合して各自準備運動してる最中にグループの一人が光に声をかけた。
「えっなんで?」
「絆創膏がロンTから透けてる」
光の後ろで屈伸しながら友人が怪我をしてるであろう部分…光の腕を見つめていた。
絆創膏が透けて見えると言われている腕とは反対側に立っていた拓也は
友人に向けていた顔を
隣に立つ光の顔色を見るために前に戻した。
「マジ!そんな薄い生地なのかよコレ!」
「安いのだとヤバい透ける」
「いやいや、そこまで安くないし!」
「いくら?」
「2000円でお釣りきたかな?」
「安いやん!」
お前たかが服にいくら掛けてんだよ!とか
イラストのおかげで乳首は透けないですんだとか
怪我の話からケラケラ笑い話しになっていた。
結果なんで怪我?
上手く逸らしたなぁ…
と思いながら拓也はその会話には入らず黙って光を見ていた。
身長差で少し見下ろした光の顔はいつもより強張っていた気がした。
笑いながらも指摘された場所を隠す様に抑えている片方の手を下ろせないでいる気がした。
光…唇が震えてた…
明らかにおかしい…
俺の時みたく動揺したのか?
なんだ?たかが怪我だろ?
払いのけたのはその腕が痛んだから?
まぁ腕が理由だろうけどさぁ
気にしすぎか?
話を逸らしたと思ったの気のせいか?
「お~い!拓にぃ~!!」
はっと我にかえると光と目が合った。
顔を見ていたのがバレた…
「何ヒカをガン見してたの?」
さっきまで話をしてい友人が拓也の肩を組みながら笑う。
光もキモいといつもみたく笑った。
「いや?ただぼぉ~としてただけ」
おじさん!しっかり!!
と皆からツッコミを受けながら拓也達はゾロゾロと皆で整列場所へと並びに向かった。
肩を組んで来た友人を引っぺがすと先に行けと背中を押した。
そんな中、光は後ろでみんなについて行くようにゆっくり歩いて来る
そんな光に歩幅を合わす。
「…光…大丈夫か?」
談話をしながら前を歩く皆には聞こえないように
耳打ちをするかのように光だけに聞こえるようなささやき声で話しかけた。
「あ…うん…ありがとう…」
あ…やっぱり何かある…と分かった。
困ったような作られた愛想笑い。
傷を抑えている手が少し腕を摩っている。
「休んでるか?」
「痛くないから大丈夫…」
「ん…分かった…」
痛くないのに?
あぁ…そうか…
理由は分からないが分かった
「ちょっ!!拓也?!なんだよ!!」
拓也がおもむろに絆創膏がしてある腕を掴んだ。
あまりに唐突なことにビックリした光は瞬時に払い除けることは出来なかった。
「うるせ、ジッとしとれ」
焦る光とは違って淡々としている拓也は
光の腕を力ずくで前から自分の脇に挟み込み動かなくした。
そしてそのまま袖口に空いた手を掛ける。
「…袖を絆創膏位置まで捲れば透けないから…」
「………」
「この位置なら折ってても変じゃねぇよ」
それを聞いた光は抵抗しようとした力を抜いた。
袖を絆創膏位置まで折ってもらうのを光が黙って待ってるのに拓也は少し安堵した。
正解…だったみたいだ…
理由は分からない
でも光は怪我をしてることを知られたくない
見られたくないんだと分かった
ふざけ合って手を掴んだ時
身長からして掴まれた光の腕は持ち上げられる感じになるから
俺の目線だと袖口から見える…
だから光は手を払いのけたのかもしれない
でも何故そんなに知られるのが嫌なのか…
「拓也……」
「なに?」
「ごめんね…?ありがとう…」
いつもとは違う幼くなったような口調と
嬉しそうな
でもどこか寂しそうな笑顔の君に
あ~…やっぱり
聞いちゃダメだめだよなぁ
と悟った。
少しドキッとした…
「お兄ちゃんが避けてやるって言っただろ」
と笑ってワザと乱暴に頭を撫でてやった。
「ちょっ!髪!!」
「髪の毛セットし直してあげてんのー」
上からの攻撃になすがままの光の頭は原型が無くなるほどボサボサになっていく
けれど光は鬱陶しがることも怒りもしないで
あはははといつも見る笑い方に戻った。
光の安堵が手に取るように分かる。
デカいからって調子乗んなよなぁと言ってみたり
頭抑えつけんなよなんて言いながら
頭を撫でてくる俺の手にじゃれ付く光
いつもより反対に安心したせいで少しハシャギ始めた気もした。
「拓也?やっぱり拓也は優しいね?ありがとう」
違う…
あの顔見たら
いたたまれなくて思わず誤魔化して頭を撫でただけだ。
安堵したのは光より俺かもしれない。
ストレートに気持ちを言ってくる光に
ちょいちょい恥ずかしく思う日もあったが今日は違った。
「いいよ。気付けて良かった。」
そう、それそれ…
気付けて分かってあげれて良かった…それだけ…
乱暴に撫でていた頭を手直ししてやると
また誤魔化して今度はなるべく慰めるように撫でた。
それでも俺は球技中も光が気になって時々目で追いかけていた。
その度に光と目が合って笑ってくる。
「もう大丈夫だって心配かけてごめん」
水分補給時
気にかけてることに気づいてた光はポソッと言ってきた。
既に無意識です。とはさすがにそこまで素直に言えなかった。
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