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20話 血の雨を、鬼と踊る
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十メートルを超える巨人が、ベルゼンに迫っていた。ギガントオーク。数は四十以上……一晩で四つの街を更地にできる大戦力だ。
すでに目視できる距離まで迫っており、冒険者達に緊張が走る。ミスティとロイドも冷や汗をたらし、ギガントオークにおののいていた。
しかし、なぜギガントオークがこんな所に。彼奴等は私のいた国の、奥深くにしか生息していなかったはず。ベルゼンへ来るには距離が離れすぎているぞ。
「なんだあのオーク達、見た事がない鎧を装備してる……」
「何?」
私もシュウと共に目を凝らしてみる。彼奴等の装備している鎧、あれは魔王軍で採用しているリフレクの鎧ではないか!
特殊な製法で魔法を反射する能力を付与した厄介な防具だ、あれでは私の魔法も通らぬ……何しろ私自身が、私の魔法に耐えられるよう設計したのだから。
部下を守るために配慮した結果、自分に跳ね返ってくるとは。皮肉な物だな。
「奴らの出どころも分かった、奴らはギゼフィルの所有するギガントオーク隊だ」
「魔王四天王の一人! もしかして、気付かれた?」
「それはない。私の居場所が気付かれれば、サガ達が直接襲ってくるだろう。恐らく国境付近で彼奴等を使った作戦を行ったはいいが、制御不能になって放棄したのだろうな」
サガめ、厄介な奴らを。ギガントオークは肉弾戦に無類の強さを発揮するが、魔法攻撃には極端に弱い。しかしリフレクの鎧をつけている以上、彼奴等の土俵で戦わねばならぬ。
「長らく冒険者をやってるけど、ここまでの相手をするのは初めてね……」
「だからと言って、退くつもりはない。俺達の街を守るため、全力を持って撃退するぞ!」
『おおっ!』
ゴールドランク二人の号令に冒険者達が雄たけびを上げる。素晴らしい団結力だ、賞賛に値する。
だが、気合いで勝てる相手ではない。彼奴等がどれだけ厄介か、私自身がわかっている。
これは私の元身内が引き起こした事態だ。私自身が責任を取るべきだろう。
いきり立つ冒険者達の前に結界を張り、前に出られないようにする。シュウは私の意図を悟ったか、結界を叩いた。
「エルザ、一人で戦うつもりじゃ……」
「当然だろう、これは私の業だ、私が片づけねばならぬ問題だ。それにこの程度の人数では、奴らを相手に勝ち目はない」
「エルザ! ダメだ、一人で全部背負っちゃ!」
「問題ない、奴らごとき私だけで片付けられるさ」
元魔王として、誰も犠牲を出しはしない。冒険者エルザ、いざ参る!
右拳に魔力を込め、彼奴等のど真ん中へ飛び込む。思い知らせてやろう、魔王の本気の一撃を。
全力で右拳を大地に叩きこみ、衝撃波を生み出した。これは魔法ではない、我が腕力のみで生み出したただの衝撃波、奴らの耐性を無視して叩き込める一撃だ。
オークどもが全員吹き飛ばされ、鎧に亀裂が走る。私は倒れた一匹の脚をつかんだ。お前には武器になってもらうぞ?
ヌンチャクの要領でオークを振り回し、なぎ倒していく。リフレクの鎧はそれその物の強度も優れているのでね、こうすれば有効打を与えられるのさ。
「おっと、くたばったか。では次だ」
武器がダメになったら、次のオークをつかみ取る。何しろ代わりの武器はいくらでもあるんだ、選り取り見取りってやつだな。
魔法ばかりではなく、肉弾戦も得意なんだよ、私はな。たかだかギガントオーク如き、蹂躙してくれるわ!
シュウを絶対守る。彼は私が手にした、最後の希望なのだ。
大事な人を、失ってなるものか!
『うがあっ!』
オークが捨て身のタックルをかましてきた。そいつを受け止めて頭を砕くが、事切れる間際、オークが私の腕に何かを掛けてきた。
そしたら、急に魔力が引き出せなくなり、体が動かなくなる。驚き腕を見ると……魔封じの枷が掛けられていた。
こんな物を隠していたのか!? これでは……戦えぬ!
オークに囲まれ、袋叩きにあう。防ぐ事が出来ず、私は滅多打ちにされた。凄まじい膂力に全身が悲鳴を上げる。
オークが私を掴み、握りつぶそうと力を入れる。内臓が飛び出しそうな激痛が走った。
さらには、頭にかじりつこうとする奴がいる。まずい、このままでは食い殺される……!
嫌だ、死にたくない……シュウとまだ、生きていたい!
動け、体よ動け……動いてくれぇぇぇっ!
◇◇◇
「エルザ! くそ、邪魔だこの結界!」
「ウィザードは早く結界を解除して! じゃないとあの子が殺される!」
ロイドとミスティが結界を叩くけど、魔王の障壁はびくともしない。ウィザード達が総出で解除しようにも、エルザの結界が強大すぎて歯が立たなかった。
エルザが食われる……なのになんで僕は、ここでぼーっと見ているんだ。
彼女を失いたくない、僕にとって彼女は、大事な人なんだ。なら、ためらっている場合じゃないだろう!
「奮い立て、シュウ・ライザー……! お前には彼女を救うだけの力があるんだろう……! なら、恐れるな……!」
彼女を救えるなら、僕は孤独になったってかまわない。例え居場所がなくなったとしても、彼女が助かるなら、それでいい!
己可愛さに彼女を見捨てるならば、僕を見捨てた方がはるかにましだ!
「「アポート」!」
エルザが貸してくれた魔法は、結界をすり抜けられる。結界の外に出た僕は、彼女に向って走り出した。
今だけ探索者の身を捨てて、封印を解く。僕の力をふるうために、お前の力を貸してくれ。
「来い! てんてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!」
左手を掲げて呼びかけるなり、ベルゼンから轟音が響く。大気を燃やすほどの速度で、妖刀が飛んできたんだ。
天帝を握り、一気にエルザの下へ。オークを前にした僕は体を駆け上がり、彼女を握る敵へ居合斬りを放った。
腕が斬り落とされ、彼女を握る力が緩む。エルザを救出し、僕は距離を取った。
「大丈夫? 怪我は!?」
「問題ない……シュウ、今のは……」
「そうか……ごめん、エルザ。ここで、さよならだ」
エルザが無事ならよかった。それだけで、僕は満足だ。
僕が戦う姿を見れば、ベルゼンの人たちは皆、僕を恐れてしまうだろう。だから、これは決別の戦いだ。
僕の孤独と引き換えにエルザを守れるのなら、僕は……本望だ。
「やあああああああああっ!」
ギガントオークへ走り、先頭の一匹を切り刻む。足を切り裂いて転倒させ、首を切り落として斬殺する。血の雨が降る中、続けざまにオークの体を走って、また首を斬り飛ばした。
僕に向けて、オークが棍棒を振り上げた。ジャンプして上空に避け、無防備な姿を見せると、オークはチャンスと言わんばかりに攻撃してくる。
瞬間、アポートで地上に瞬間移動した。
「ふっ!」
隙だらけの三体を胴から真っ二つにし、一体を蹴り飛ばした。巨体の上半身が直撃し、数体のオークがひるんだ。
さらに畳みかけるべく、僕は走り出す。緩急をつけて分け身を見せるなり、オーク達が動揺した。
おじいさんから教わった技術、分け身。特殊な歩法で残像を出す技術だ。
オーク達は分け身を必死に攻撃するけど、本物の僕に当てる事はできない。オークの体に乗って分け身を残すと、見事に同士討ちをしてくれた。
どうにか分け身を全滅させ、ギガントオークは雄たけびを上げ、僕を捕まえようと躍起になる。けど無駄だよ、僕は少し先の未来が見えるんだ。
筋肉のきしむ音、風が動く感触、呼吸の声、それらを感じる事で、数秒先の行動を見る事が出来るのさ。
天帝を鞘に戻し、集中する。オークの未来を見切り、居合斬りで数体のオークを輪切りに刻む。再び鞘に納め、分け身とアポートを駆使しながら、縦横無尽にオーク達の間を駆け回った。
僕が修めたのは、居合斬りを基礎とした、神速の抜刀術。鞘に納める動作がルーティンとなり、スムーズに次の動作へつなげる事ができる。
天帝は素晴らしい刀だ。僕の要求に応え、まるでバターでも切り裂くようにオークを切断していく。リフレクの鎧も、まるで意味を成していなかった。
『ぐ、ぐるるぅ……!』
オーク達が怯え始めた。知性のないモンスターでも気付いたようだ、僕には勝てないのだと。本能が逃走を選び、背を向けて走り出した。
逃がすわけ、ないでしょう?
君たちを野放しにすれば、より多くの犠牲が出てしまう。何より君たちはエルザを、殺そうとした。
断じて、許すわけにはいかない!
「ついてこれる、天帝?」
黄金の柄が少し熱くなる。そうか、なら遠慮はいらない。
残党を全員切り刻み、一匹残らずせん滅する。血の雨が降り注ぐ中、僕は一人刀を振るい続けた。
やがてオークが全滅し、後に残ったのは赤く染まった大地と、血にまみれた僕ただ一人。
天帝を鞘に納め、ベルゼンに振り返る。
皆、変わり果てた僕を呆然と眺めている。中にはあまりに凄惨な光景に、嘔吐している人もいる。
エルザも、唖然としていた。鬼のような僕の姿を前にして、恐怖を抱いているようだった。
「……やってしまったな」
分かっていたことだ、僕のこの力が、誰にも受け入れられない物なのだと。
でも悔いはない。エルザを守れたのなら、孤独になるのは恐くない。
「さよなら、エルザ。どうか、元気で」
天帝を置き、僕は走り去った。体についた血も構わず、逃げ出した。
すでに目視できる距離まで迫っており、冒険者達に緊張が走る。ミスティとロイドも冷や汗をたらし、ギガントオークにおののいていた。
しかし、なぜギガントオークがこんな所に。彼奴等は私のいた国の、奥深くにしか生息していなかったはず。ベルゼンへ来るには距離が離れすぎているぞ。
「なんだあのオーク達、見た事がない鎧を装備してる……」
「何?」
私もシュウと共に目を凝らしてみる。彼奴等の装備している鎧、あれは魔王軍で採用しているリフレクの鎧ではないか!
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部下を守るために配慮した結果、自分に跳ね返ってくるとは。皮肉な物だな。
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「それはない。私の居場所が気付かれれば、サガ達が直接襲ってくるだろう。恐らく国境付近で彼奴等を使った作戦を行ったはいいが、制御不能になって放棄したのだろうな」
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「長らく冒険者をやってるけど、ここまでの相手をするのは初めてね……」
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武器がダメになったら、次のオークをつかみ取る。何しろ代わりの武器はいくらでもあるんだ、選り取り見取りってやつだな。
魔法ばかりではなく、肉弾戦も得意なんだよ、私はな。たかだかギガントオーク如き、蹂躙してくれるわ!
シュウを絶対守る。彼は私が手にした、最後の希望なのだ。
大事な人を、失ってなるものか!
『うがあっ!』
オークが捨て身のタックルをかましてきた。そいつを受け止めて頭を砕くが、事切れる間際、オークが私の腕に何かを掛けてきた。
そしたら、急に魔力が引き出せなくなり、体が動かなくなる。驚き腕を見ると……魔封じの枷が掛けられていた。
こんな物を隠していたのか!? これでは……戦えぬ!
オークに囲まれ、袋叩きにあう。防ぐ事が出来ず、私は滅多打ちにされた。凄まじい膂力に全身が悲鳴を上げる。
オークが私を掴み、握りつぶそうと力を入れる。内臓が飛び出しそうな激痛が走った。
さらには、頭にかじりつこうとする奴がいる。まずい、このままでは食い殺される……!
嫌だ、死にたくない……シュウとまだ、生きていたい!
動け、体よ動け……動いてくれぇぇぇっ!
◇◇◇
「エルザ! くそ、邪魔だこの結界!」
「ウィザードは早く結界を解除して! じゃないとあの子が殺される!」
ロイドとミスティが結界を叩くけど、魔王の障壁はびくともしない。ウィザード達が総出で解除しようにも、エルザの結界が強大すぎて歯が立たなかった。
エルザが食われる……なのになんで僕は、ここでぼーっと見ているんだ。
彼女を失いたくない、僕にとって彼女は、大事な人なんだ。なら、ためらっている場合じゃないだろう!
「奮い立て、シュウ・ライザー……! お前には彼女を救うだけの力があるんだろう……! なら、恐れるな……!」
彼女を救えるなら、僕は孤独になったってかまわない。例え居場所がなくなったとしても、彼女が助かるなら、それでいい!
己可愛さに彼女を見捨てるならば、僕を見捨てた方がはるかにましだ!
「「アポート」!」
エルザが貸してくれた魔法は、結界をすり抜けられる。結界の外に出た僕は、彼女に向って走り出した。
今だけ探索者の身を捨てて、封印を解く。僕の力をふるうために、お前の力を貸してくれ。
「来い! てんてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!」
左手を掲げて呼びかけるなり、ベルゼンから轟音が響く。大気を燃やすほどの速度で、妖刀が飛んできたんだ。
天帝を握り、一気にエルザの下へ。オークを前にした僕は体を駆け上がり、彼女を握る敵へ居合斬りを放った。
腕が斬り落とされ、彼女を握る力が緩む。エルザを救出し、僕は距離を取った。
「大丈夫? 怪我は!?」
「問題ない……シュウ、今のは……」
「そうか……ごめん、エルザ。ここで、さよならだ」
エルザが無事ならよかった。それだけで、僕は満足だ。
僕が戦う姿を見れば、ベルゼンの人たちは皆、僕を恐れてしまうだろう。だから、これは決別の戦いだ。
僕の孤独と引き換えにエルザを守れるのなら、僕は……本望だ。
「やあああああああああっ!」
ギガントオークへ走り、先頭の一匹を切り刻む。足を切り裂いて転倒させ、首を切り落として斬殺する。血の雨が降る中、続けざまにオークの体を走って、また首を斬り飛ばした。
僕に向けて、オークが棍棒を振り上げた。ジャンプして上空に避け、無防備な姿を見せると、オークはチャンスと言わんばかりに攻撃してくる。
瞬間、アポートで地上に瞬間移動した。
「ふっ!」
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さらに畳みかけるべく、僕は走り出す。緩急をつけて分け身を見せるなり、オーク達が動揺した。
おじいさんから教わった技術、分け身。特殊な歩法で残像を出す技術だ。
オーク達は分け身を必死に攻撃するけど、本物の僕に当てる事はできない。オークの体に乗って分け身を残すと、見事に同士討ちをしてくれた。
どうにか分け身を全滅させ、ギガントオークは雄たけびを上げ、僕を捕まえようと躍起になる。けど無駄だよ、僕は少し先の未来が見えるんだ。
筋肉のきしむ音、風が動く感触、呼吸の声、それらを感じる事で、数秒先の行動を見る事が出来るのさ。
天帝を鞘に戻し、集中する。オークの未来を見切り、居合斬りで数体のオークを輪切りに刻む。再び鞘に納め、分け身とアポートを駆使しながら、縦横無尽にオーク達の間を駆け回った。
僕が修めたのは、居合斬りを基礎とした、神速の抜刀術。鞘に納める動作がルーティンとなり、スムーズに次の動作へつなげる事ができる。
天帝は素晴らしい刀だ。僕の要求に応え、まるでバターでも切り裂くようにオークを切断していく。リフレクの鎧も、まるで意味を成していなかった。
『ぐ、ぐるるぅ……!』
オーク達が怯え始めた。知性のないモンスターでも気付いたようだ、僕には勝てないのだと。本能が逃走を選び、背を向けて走り出した。
逃がすわけ、ないでしょう?
君たちを野放しにすれば、より多くの犠牲が出てしまう。何より君たちはエルザを、殺そうとした。
断じて、許すわけにはいかない!
「ついてこれる、天帝?」
黄金の柄が少し熱くなる。そうか、なら遠慮はいらない。
残党を全員切り刻み、一匹残らずせん滅する。血の雨が降り注ぐ中、僕は一人刀を振るい続けた。
やがてオークが全滅し、後に残ったのは赤く染まった大地と、血にまみれた僕ただ一人。
天帝を鞘に納め、ベルゼンに振り返る。
皆、変わり果てた僕を呆然と眺めている。中にはあまりに凄惨な光景に、嘔吐している人もいる。
エルザも、唖然としていた。鬼のような僕の姿を前にして、恐怖を抱いているようだった。
「……やってしまったな」
分かっていたことだ、僕のこの力が、誰にも受け入れられない物なのだと。
でも悔いはない。エルザを守れたのなら、孤独になるのは恐くない。
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