捨てられた魔王(♀)を保護しました~元魔王様はショタ狂い~

歩く、歩く。

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13話 自業自得の馬鹿者達

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「勇者様ぁ、俺の武器が壊れちまいましたぁ……」

 ダンジョン探索中、ラクトが情けなく言いながら、刃が欠けた斧を見せてきた。
 俺の聖剣は絶対壊れない武具だから問題ないが、他の連中の武器はそうはいかない。だというのに、普段から手入れをしないからこうなるんだよ。
 とはいえ、俺の防具もだいぶガタが来ている。このままではあと数回攻撃を受ければ壊れてしまうだろう。

「私の杖ももう限界が近いですわ……勇者様、街に戻りましょう。鍛冶屋に持っていかないと、壊れてしまいます」
「街に戻っても、武具を直す金がないだろう」

 この所の失態続きにより、俺達勇者パーティは深刻な財政難に陥っていた。
 請け負う仕事は悉く失敗に終わってしまい、ろくな収入が得られなくなっているんだ。
 仕方がないから、換金アイテムを求めてダンジョンに潜っているんだが……思うように探索が進まない。補給がろくにできていないから、回復薬も底をつきかけている。これ以上の探索は正直、不可能だ。
 それもこれも、全部リッドのせいだ。

「お前がろくに武具を直せないからだろう、この役立たず!」
「あっしが悪いんですかぁ!? 第一あんたらの武器使いが荒いんすよ、物理が効かないモンスターに強引に殴りかかったり、魔法をとにかくぶっぱしたり! あんな使い方したらすぐに武器が壊れちまいやすよ! いくら直したってあれじゃ修復が間に合うわけないでしょうが!」

 くそったれ、また文句ばかり。前の雑魚に比べてあまりにも使えなさすぎる。
 「鍛冶」スキルを持っているくせに、熟練度が低すぎて耐久値をろくに回復できやしない。しかも修復に無駄に素材を消費するせいで、すぐに資材が尽きてしまう。
 ハイコストローリターンだ。ここまでごくつぶしだったとは思わなかったよ。

「第一なんでそんな体たらくでパーティに入ってきた! あれだけ何でもできると売り込んでおいて、何にもできやしないじゃないか!」
「あんた達が無茶な要求ばかりするからっすよ! こんだけ人使いが荒いとは思ってなかったっす! 勇者パーティだから優秀な人らばかりで楽できるかと思ったのに、蓋を開ければろくでなしばかり! あんただって口先ばかりで何にもできないじゃないっすか!」
「なんだとこの野郎!」

 激昂し、リッドを殴り飛ばした。言うに事欠いて、何を言い出すんだこいつは。

「けどリッドの言いたい事も分かるぜ。あんた最近ひでぇぞ」
「判断ミスばかりして、私達を危険にさらしてばかり! それでも貴方勇者ですの!」
「お前らまで、俺に口答えするのか!」

 ダンジョン内だというのに、パーティ内で仲間割れ。こんな事をしていれば、当然ダンジョン内に声が響き、モンスターを呼び寄せる。

「ぎゃあ! モンスターの群れが押し寄せてくる!」
「このままでは全滅ですわ、どうするんですの!?」
「くそ、退却だ退却! 死にたくなければ全力で逃げろ!」

 命からがらダンジョンから脱出し、収穫を確認するが……これじゃ、宿代にもなりやしない。なんでこんな事になっちまったんだ。
 あいつを殺してから全部が台無しになった、全部あいつのせいだ! くそが!

  ◇◇◇

「何? 財政難だと?」

 財政大臣からの報告を聞き、俺は驚いた。

「この所の軍拡により、軍事費がかさみまして……勇者追撃の予算も……その……」
「ならば増税して財源確保すればいいだろう。適当な名目をつけて金を巻き上げろ」
「この所の増税ラッシュに民は疲弊しています、これ以上の負担をかけては……」
「魔王の命令に歯向かうのか?」
「い、いえ……失礼します」

 大臣が去っていく。民は魔王の所有物だ、奴らから取るだけ取ればいいだけの事。なぜそれができない。
 どいつもこいつも生ぬるい奴らだ。全部魔王の言う通りにしていれば上手く行くというのに、なぜそうしない。

「おい、そこに居るんだろう。覗いていないで出てこい」
「あら、勘が鋭い方ですわね」

 物陰に隠れていたハーピィのマリアが出てきた。つい先日、勇者追撃の任務から帰ってきたばかり。結局失敗して戻ってきたくせに、へらへらして。危機感はないのか。
 だが四天王を処罰しては軍の士気にかかわる。失敗に対し大した処罰を与えられないのが口惜しい所だ。

「中々しぶとい方々でしたよ。随分落ちぶれていたようですけど、腐っても勇者ですね。この私の追撃をかわすとは、流石です」
「相手を褒めてどうする、四天王なら仕事をしろ仕事を!」
「あら、今は三人しかいませんよ? 後任の四天王はまだなのでしょうかね」
「今選考中だ」
「あらあら、魔王様は随分慎重な人選をされるのですね」

 マリアの皮肉に青筋が立つ。こいつらは的確に俺の逆鱗に触れてくる、そんなに俺を怒らせて楽しいか。
 覚えていろよ、折を見て貴様に重い処罰をくれてやる。この俺に歯向かったこと、必ず後悔してくれる。

「次の指令を出すまで待機していろ! 俺をイラつかせるな!」
「かしこまりましたわ、魔王様」

 マリアは恭しく首を垂れるが、敬意が全く感じられない。
 ちっ……このままでは魔王の立場も危ういな。早急に勇者を殺し、我が功績を作らねば。
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