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20話 盤外戦術のオンパレード

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 アルテミスとの決闘が間近に迫っていた。
 創造神様が指定した異世界にて、私は最高戦力の転生者を連れて奴を待っていた。
 奴のチート行為に関してはルールで徹底して潰してある、地力での勝負に持ち込めば、こっちが圧倒的に有利な条件だ。
 転生者真柴は私が連れて来た中でも最高傑作の男、与えた能力も装備も、アルテミスなんかとは比べ物にならない。
 好き勝手暴れ回るのもここまでだ、奴を無様に打ち負かして、その素顔を晒してやる。

「女神様、本当にこの世界にやばい奴が来るんですか?」
「勿論です。そ奴を討伐しないと、この世界が危ないのです。どうか力を貸してください」

 転生者は適当におだてておけば思い通りに動いてくれる、都合のいい駒だ。今後もこいつで精々稼がせてもらうとしよう。
 にしても遅いな……あと一分で開始だと言うのに、まだアルテミスは姿を見せない。今になって怖気づいたか?
 なんて思った瞬間、突然ゲートが開き、

「さぁ、デュエル開始だぁ!」

 大型バイクに乗り、アルテミスが出現した!

「って何バイクを持ち込んでるんですか!? ルール違反だルール違反! 世界観を守れぇ!」
「これは装備だよ、僕らの武器さ! 一体どのルールに抵触してるってのかなぁ!」

 確かにどのルールにも抵触してない、ジャッジの創造神様が無反応なのがいい証拠だ。
 でもここは中世ファンタジー世界だぞ、思い切り世界観ぶち破るもん使ってんじゃねぇ!

「な、なんだあいつ!? あれがやばい奴なんですか!?」
「見ての通りやばい奴です! さぁさっさと討伐を」
「エスペランサ!」

 私は気づいた、後部座席に奴のパートナーが乗っているのを。
 魔王エスペランサは煙玉で煙幕を張り、視界を制限した。あまりの煙たさに我々はせき込んだ。
 なんか粉っぽい……あれ、これもしかして、小麦粉?

「着火!」

 アルテミスの声の後、エスペランサが魔法で小麦粉に火をつけた。
 直後に起こる大爆発! 流石の真柴も耐えきれずにもんどりうって倒れてしまう。粉塵爆発によってとんでもない先制攻撃を受けてしまった。

「こ、こんにゃろ……!」

 奴らはバイクで遥か彼方へ去っている。くっそ、不意打ちなんて卑怯な! ルール通り戦え!

「創造神様! あれはいいんですか、ルール違反なのでは!?」
『別にルールは破っていないだろう。事前に装備を整えてはいけないと定められていないし、戦況を一方的にするようなアイテムを使っているわけではない。何より、「異世界の中で戦え」と定めているわけだから、どこへ行こうと君達の勝手だ。私から咎める事は何もないよ』

 くそ、ジャッジが向こうよりで話にならない!

「急いで追いかけるのですよ! 何としても奴をぶっ殺すのです!」
「え、えええ!?」

 転生者を引き連れ、私は追いかけた。おのれアルテミス、次は何をしでかすつもりだ!
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