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54話 進撃のクェーサー
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ヤマタノオロチは山のように大きくなっていた。その怪物に向かって、鋼鉄の巨人が猛然と走っていく。
クェーサーは真っ直ぐ、最短距離をパルクールで駆け抜けていた。二足歩行だからこそ、道なき道を駆けられる。丘を越え、段差を跳び、道路を走っていく。
と、ヤマタノオロチがクェーサーに気付いた。8つの頭から土塊を吐き出し、進撃を阻んでくる。
ヤマタノオロチからの迎撃を、救は超反応で回避した。体操選手のようなアクロバットを駆使し、掠りもせずに突き進む。
救の本気の操縦は凄まじく、クェーサーの反応速度を超越していた。御堂が手伝っていなければ、途中で壊れていたかもしれない。
御堂はタブレット端末をクェーサーに繋げ、彼をアシストしていた。激しく揺れる中、クェーサーと同等の演算能力を発揮して、救に追従していた。
『ワイヤーパック射程圏内!』
「ぶっ放せ!」
ヤマタノオロチの胴にワイヤーを打ち込み、巻き取る力を利用して大ジャンプ。ヤマタノオロチの頭が襲ってくるが、これらにワイヤーを射出して、ターザンのような驚異的な空中機動を見せつけた。
「サヨリヒメの居所は分かるか!」
「今探してる! クェーサーのカメラから、サーモグラフを通してサーチ……見つけた! 真ん中の頭だ!」
『ターゲッティングします!』
画面にサヨリヒメの居る頭が強調表示された。救は長い息を吐き、集中力を高めていく。
「覚悟はできたなクェーサー……!」
『ええ、勿論……勝負だ災害め!』
クェーサーは意を決して、ヤマタノオロチに飛び込んだ。
迫りくる7つの頭を、ワイヤーアクションによる曲芸飛行でかいくぐっていく。身をよじり、振り子のように大きく揺れ、手足を広げて滑空し、蛇の背を駆け抜けた。
サヨリヒメまで、あと少し……と言う所で、ヤマタノオロチがワイヤーパックを掠めた。
バックパックがもぎ取られ、クェーサーは胴にしがみついた。これでは、空を移動できない。サヨリヒメの所まで、もう少しの所なのに。
「くそ、あとちょっとだってのに!」
『いえ、手はあります。危険ですが』
「今さらリスクの上乗せしても変わりゃしねぇ、言ってみな」
『私のリミッターを外してください』
「そうか、クェーサーの出力は80%に抑えてある。負荷を無視すれば、出力を120%まで出せるから、極短時間だけ超パワーを発揮できるよ。でも……」
『自壊リスクを伴います、ですが耐えてみせます! サヨリヒメを救うため、やらねばならぬ時なのです! 頼む救、御堂! 貴方達の命を……私に預けてくれ!』
「んなもん最初からするに決まってんだろ、やっちまえ!」
ありがとう、2人とも……!
リミッターが外れると、クェーサーの全身が青白く輝き、電流が迸った。限界を超える出力に機体が悲鳴を上げ、鋼が軋むような音が鳴り響く。
ヤマタノオロチを足場に、クェーサーは走る、跳ぶ! 走る!!! 一歩踏み出す度にコックピットから火花が散り、装甲が剥がれ落ちた!
『あと、一息っ!』
最後の跳躍をした瞬間、目の前に蛇の頭が立ちふさがった。
左拳を固め、クェーサーは思い切り振り被った。
『どけぇぇぇぇっ!』
渾身の一撃が蛇の頭を打ち砕いたが、反動でクェーサーの腕も砕け散った。
うっすらと、蛇の顔に嘲笑が浮かんだ気がした。
『この程度で、勝ったつもりか? 左腕など……いくらでもくれてやる』
『例えこの身が砕けても、心までは砕けない。貴様のような災害ごときに、人とあやかしが与えた心を壊すなど、出来るはずがないのだよ』
『彼女は私に沢山の宝物をくれた。だから、今度は私の番だ……彼女を再び、愛する人々の下へ連れ戻す! 人とあやかしの、希望の光となるために!!!』
硬く握り込まれた右拳が、ヤマタノオロチの瞳に映し出される。
人とあやかしが繋ぎ、紡いだ心を持つAIの、
『サヨリヒメを返せ! ヤマタノオロチ!!!』
鋼鉄の拳が、太古の怪物を貫いた。
頭蓋の奥に、小さな塊があった。それを掴んで引き抜くと、赤いガラス玉のような物に、サヨリヒメが収まっていた。
『……大丈夫、生きています……!』
クェーサーは大事に、サヨリヒメを抱きしめた。
サヨリヒメを救出すると同時に、ヤマタノオロチの体が崩れ出した。核であるサヨリヒメが奪われて、力を制御できなくなり、自壊を始めたのだ。
クェーサーは急いで脱出しようとしたが、突然体が動かなくなる。リミッター解除の反動が来てしまったのだ。
救は御堂を抱きしめ、衝撃に備えた。
『動け、動けっ……! 動けっ!』
クェーサーは必死に体を動かそうとするも、言う事を聞いてくれない。
そのままクェーサー達は、ヤマタノオロチの崩壊に巻き込まれていった。
クェーサーは真っ直ぐ、最短距離をパルクールで駆け抜けていた。二足歩行だからこそ、道なき道を駆けられる。丘を越え、段差を跳び、道路を走っていく。
と、ヤマタノオロチがクェーサーに気付いた。8つの頭から土塊を吐き出し、進撃を阻んでくる。
ヤマタノオロチからの迎撃を、救は超反応で回避した。体操選手のようなアクロバットを駆使し、掠りもせずに突き進む。
救の本気の操縦は凄まじく、クェーサーの反応速度を超越していた。御堂が手伝っていなければ、途中で壊れていたかもしれない。
御堂はタブレット端末をクェーサーに繋げ、彼をアシストしていた。激しく揺れる中、クェーサーと同等の演算能力を発揮して、救に追従していた。
『ワイヤーパック射程圏内!』
「ぶっ放せ!」
ヤマタノオロチの胴にワイヤーを打ち込み、巻き取る力を利用して大ジャンプ。ヤマタノオロチの頭が襲ってくるが、これらにワイヤーを射出して、ターザンのような驚異的な空中機動を見せつけた。
「サヨリヒメの居所は分かるか!」
「今探してる! クェーサーのカメラから、サーモグラフを通してサーチ……見つけた! 真ん中の頭だ!」
『ターゲッティングします!』
画面にサヨリヒメの居る頭が強調表示された。救は長い息を吐き、集中力を高めていく。
「覚悟はできたなクェーサー……!」
『ええ、勿論……勝負だ災害め!』
クェーサーは意を決して、ヤマタノオロチに飛び込んだ。
迫りくる7つの頭を、ワイヤーアクションによる曲芸飛行でかいくぐっていく。身をよじり、振り子のように大きく揺れ、手足を広げて滑空し、蛇の背を駆け抜けた。
サヨリヒメまで、あと少し……と言う所で、ヤマタノオロチがワイヤーパックを掠めた。
バックパックがもぎ取られ、クェーサーは胴にしがみついた。これでは、空を移動できない。サヨリヒメの所まで、もう少しの所なのに。
「くそ、あとちょっとだってのに!」
『いえ、手はあります。危険ですが』
「今さらリスクの上乗せしても変わりゃしねぇ、言ってみな」
『私のリミッターを外してください』
「そうか、クェーサーの出力は80%に抑えてある。負荷を無視すれば、出力を120%まで出せるから、極短時間だけ超パワーを発揮できるよ。でも……」
『自壊リスクを伴います、ですが耐えてみせます! サヨリヒメを救うため、やらねばならぬ時なのです! 頼む救、御堂! 貴方達の命を……私に預けてくれ!』
「んなもん最初からするに決まってんだろ、やっちまえ!」
ありがとう、2人とも……!
リミッターが外れると、クェーサーの全身が青白く輝き、電流が迸った。限界を超える出力に機体が悲鳴を上げ、鋼が軋むような音が鳴り響く。
ヤマタノオロチを足場に、クェーサーは走る、跳ぶ! 走る!!! 一歩踏み出す度にコックピットから火花が散り、装甲が剥がれ落ちた!
『あと、一息っ!』
最後の跳躍をした瞬間、目の前に蛇の頭が立ちふさがった。
左拳を固め、クェーサーは思い切り振り被った。
『どけぇぇぇぇっ!』
渾身の一撃が蛇の頭を打ち砕いたが、反動でクェーサーの腕も砕け散った。
うっすらと、蛇の顔に嘲笑が浮かんだ気がした。
『この程度で、勝ったつもりか? 左腕など……いくらでもくれてやる』
『例えこの身が砕けても、心までは砕けない。貴様のような災害ごときに、人とあやかしが与えた心を壊すなど、出来るはずがないのだよ』
『彼女は私に沢山の宝物をくれた。だから、今度は私の番だ……彼女を再び、愛する人々の下へ連れ戻す! 人とあやかしの、希望の光となるために!!!』
硬く握り込まれた右拳が、ヤマタノオロチの瞳に映し出される。
人とあやかしが繋ぎ、紡いだ心を持つAIの、
『サヨリヒメを返せ! ヤマタノオロチ!!!』
鋼鉄の拳が、太古の怪物を貫いた。
頭蓋の奥に、小さな塊があった。それを掴んで引き抜くと、赤いガラス玉のような物に、サヨリヒメが収まっていた。
『……大丈夫、生きています……!』
クェーサーは大事に、サヨリヒメを抱きしめた。
サヨリヒメを救出すると同時に、ヤマタノオロチの体が崩れ出した。核であるサヨリヒメが奪われて、力を制御できなくなり、自壊を始めたのだ。
クェーサーは急いで脱出しようとしたが、突然体が動かなくなる。リミッター解除の反動が来てしまったのだ。
救は御堂を抱きしめ、衝撃に備えた。
『動け、動けっ……! 動けっ!』
クェーサーは必死に体を動かそうとするも、言う事を聞いてくれない。
そのままクェーサー達は、ヤマタノオロチの崩壊に巻き込まれていった。
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