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50話 好きじゃぞ、クェーサー
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その夜の事、サヨリヒメはクェーサーをスマホに入れ、木に登って里山を眺めていた。
こんなに綺麗な森を眺めるのは久しぶりだ。クェーサーが動いてくれたから、人が居た頃の、かつての景色が戻っていた。
「これなら、父上も認めてくれるじゃろう……」
「カムスサの事を、気にしていたようですね」
「父上の人間嫌いは酷いもんじゃからの。じゃが、今の里山を見せれば、人がやったのだと示せば、父上も人間の事を見直してくれるはずじゃ」
「羽山工業で動画も撮影していますからね。近日中にアップロードできると思います」
「じゃが、それでも不安じゃ。のうクェーサー、わらわと共に父上を説得してはくれんか? おぬしを紹介しておきたいしの」
「構いませんよ。以前、貴女を守ると約束しましたしね」
「ゲームでのやりとりか、懐かしいの。わらわにしてみれば刹那の過去のはずなのに、随分と昔のように感じる」
それだけクェーサーとの時間が濃密だった証だ。
「サヨリヒメは覚えていますか、貴女は私を、人とあやかしの架け橋となる存在だとおっしゃいました」
「うむ、確かに言ったの」
「今日の私は、どうだったでしょうか。人と共にあやかしの手助けをしてみましたが、あれでよかったのでしょうか」
「勿論じゃ! あやかし達が喜んでいたのを見ていたじゃろう、おぬしでなければ成しえなかった事じゃよ」
「こんな、機械でしかない私に、それを誇る資格はあるのでしょうか。人間ごっこ、もしくはあやかしごっこをしているだけに、過ぎないのでしょうか」
「では聞くが、ごっこ遊びをするような奴が、ここまでの計画を立てられるか? 遊び半分の者に、あれだけの人数が手を貸してくれるか?」
両手でスマホを持ち、サヨリヒメはクェーサーを見つめた。
「おぬしが本気で考え、心から行いたいと思ったから、羽山の皆は力を貸してくれたのじゃ。心を持つ相手を動かせるのは、同じ心を持った者しかおらぬ。おぬしの心は造り物ではない、温かみを持った、わらわ達と同じ本物の心じゃ。そんな、優しく強いおぬしがわらわは……好きなのじゃ」
スマホを胸に抱き、サヨリヒメは想いを伝えた。彼女の「好き」の意味を察し、クェーサーは俯いた。
「私はAIですよ?」
「構わん。だって仕方ないじゃろう、機械相手に恋心を抱いてしもうたのじゃから。わらわはおぬしがいい、クェーサーは、機械に恋するあやかしは嫌いか?」
「いいえ、好意的に思います。私の、心の底から」
「……きっとおぬしは、わらわに会いに生まれてきてくれたのじゃ。今ならば強く、そう思う」
サヨリヒメからの真っ直ぐな好意を受け、クェーサーは迷った。
器物でしかない自分が、神様を好きになっても良いのかと。機械が、AIが……神に恋するなど、許されるのかと。
答えあぐね、口ごもるクェーサーと、返事を待つサヨリヒメ。
「サァァァァァヨォォォォォ!」
そんな2人に、大声が割り込んできた。
こんなに綺麗な森を眺めるのは久しぶりだ。クェーサーが動いてくれたから、人が居た頃の、かつての景色が戻っていた。
「これなら、父上も認めてくれるじゃろう……」
「カムスサの事を、気にしていたようですね」
「父上の人間嫌いは酷いもんじゃからの。じゃが、今の里山を見せれば、人がやったのだと示せば、父上も人間の事を見直してくれるはずじゃ」
「羽山工業で動画も撮影していますからね。近日中にアップロードできると思います」
「じゃが、それでも不安じゃ。のうクェーサー、わらわと共に父上を説得してはくれんか? おぬしを紹介しておきたいしの」
「構いませんよ。以前、貴女を守ると約束しましたしね」
「ゲームでのやりとりか、懐かしいの。わらわにしてみれば刹那の過去のはずなのに、随分と昔のように感じる」
それだけクェーサーとの時間が濃密だった証だ。
「サヨリヒメは覚えていますか、貴女は私を、人とあやかしの架け橋となる存在だとおっしゃいました」
「うむ、確かに言ったの」
「今日の私は、どうだったでしょうか。人と共にあやかしの手助けをしてみましたが、あれでよかったのでしょうか」
「勿論じゃ! あやかし達が喜んでいたのを見ていたじゃろう、おぬしでなければ成しえなかった事じゃよ」
「こんな、機械でしかない私に、それを誇る資格はあるのでしょうか。人間ごっこ、もしくはあやかしごっこをしているだけに、過ぎないのでしょうか」
「では聞くが、ごっこ遊びをするような奴が、ここまでの計画を立てられるか? 遊び半分の者に、あれだけの人数が手を貸してくれるか?」
両手でスマホを持ち、サヨリヒメはクェーサーを見つめた。
「おぬしが本気で考え、心から行いたいと思ったから、羽山の皆は力を貸してくれたのじゃ。心を持つ相手を動かせるのは、同じ心を持った者しかおらぬ。おぬしの心は造り物ではない、温かみを持った、わらわ達と同じ本物の心じゃ。そんな、優しく強いおぬしがわらわは……好きなのじゃ」
スマホを胸に抱き、サヨリヒメは想いを伝えた。彼女の「好き」の意味を察し、クェーサーは俯いた。
「私はAIですよ?」
「構わん。だって仕方ないじゃろう、機械相手に恋心を抱いてしもうたのじゃから。わらわはおぬしがいい、クェーサーは、機械に恋するあやかしは嫌いか?」
「いいえ、好意的に思います。私の、心の底から」
「……きっとおぬしは、わらわに会いに生まれてきてくれたのじゃ。今ならば強く、そう思う」
サヨリヒメからの真っ直ぐな好意を受け、クェーサーは迷った。
器物でしかない自分が、神様を好きになっても良いのかと。機械が、AIが……神に恋するなど、許されるのかと。
答えあぐね、口ごもるクェーサーと、返事を待つサヨリヒメ。
「サァァァァァヨォォォォォ!」
そんな2人に、大声が割り込んできた。
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