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32話 M&A締結
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程なくして羽山が出社し、続々と社員がやってきた。
彼らはあやかしを見るなり一様に驚き、サヨリヒメ達は正座をして彼らに頭を下げていた。
「この度は、迷惑をかけて誠にすまんかった」
「いえいえいえ! こちらこそ普段お世話になってると言いますか……だ、誰かコーヒーをお出ししてあげて!」
「僕がやります社長! でもあやかしってコーヒー飲むんですか?」
「あ、あたしジャスミン茶の冷たいので」
「雪女ってハイカラなもん飲むんだねぇ……私も手伝うよ」
白瀬と麻山の持ってきたジャスミン茶で一息つき、サヨリヒメは事の顛末を話した。
「あやかし達でクェーサーの強化を?」
「うむ、関節部の改良を、皆に頼んでな。どうじゃ救」
「す、すげー! 前より遥かに反応が良くなってる、3倍の速度で動くぞこいつ!」
「凄いな、現行技術の応用でここまでの物が。これは僕達も考えつかなかったよ」
「こちとら、中島飛行機時代からのベテランよ。ひょっこには負けんの」
感心する犬養に、だいだらぼっちが胸を張った。
「羽山工業の皆ぁ、驚かせてごめんねぇ。今は妖気が無くて、姿を消せなかったんだぁ」
「でも、よく俺達を受け入れられるね。普通鬼なんて、恐くて皆逃げてくのに」
「そりゃ私の顔の方が恐いからね、鬼なんて可愛い物さ」
羽山はにっこりするも、その笑顔は鬼が悲鳴を上げるほど恐かった。
「しかし驚いたな、姫野さんが人間に変装した神様なんて……しかも、私達をこの会社に導いていたとは」
「う……皆の人生を弄んだようで、すまんの……じゃが申し訳をさせてくれ、わらわは」
「いいよいいよそんな。むしろ私は感謝してるし。ヒメ様が羽山に誘ってくれなかったら、クソみたいな人生で腐ってただろうし、旦那にも会えなかったんだ」
「僕もきっとニートのままだったから、サヨリヒメに会えてよかったよ」
「しらせ……あさやまぁ……!」
サヨリヒメは涙目になり、2人を抱きしめた。
「私も、ずっと見守ってくれて頂いて、お礼を言わせてください。羽山工業が今日まで発展できたのは、サヨリヒメのおかげです」
「貴女さえ良ければ、これからも羽山の力になっていただけませんか? 社長も僕も、力添えを望んでいます」
「はやま、いぬかい……かたじけない、本当にかたじけないのぉ……」
「つーかクェーサー、水臭いじゃねぇか。最初から知ってたのに、なんで姫野があやかしだって教えなかったんだ?」
「伝えて信じますか?」
「無理だな、悪い」
「でもそうなると、クェーサーは神様に育てられていたって事になるよね? サヨリヒメはクェーサーが生まれた時から接していたようだし」
「サヨリヒメは、多くの事を教えてくれました。私にとって、大事な人です」
サヨリヒメは赤らみ、顔をそむけた。
羽山はあやかし達にも微笑み(当然恐がられた)、
「あやかしの皆さんも、もしよろしければ私達にご協力いただけませんか? クェーサーの完成には、皆さんのお力添えも必要です。報酬も弾みますよ」
「へぇ、いいのかい?」
「羽山の職員は、あやかしへの順応が早いの」
「ふふ、常識にとらわれないのが僕らの社風ですので。しかし気になりますね。サヨリヒメ達を襲った蛇ですか」
「そいつもあやかしなのかい?」
「分からぬ、じゃが神たるわらわの妖気を奪い取ったのじゃ、相当な怪物であるのは間違いないじゃろうな」
「悩んだって、現物が居なきゃしょうがねぇだろ。今はやれることをやるだけさ」
「そうですね、先輩。クェーサー、どうかしたのかい?」
「いえ……何も」
サヨリヒメが倒れている時、クェーサーは何も出来なかった。スマホに閉じ込められ、彼女に手を差し伸べる事すらも。
それがとてつもなく、「悔し」かった。
彼らはあやかしを見るなり一様に驚き、サヨリヒメ達は正座をして彼らに頭を下げていた。
「この度は、迷惑をかけて誠にすまんかった」
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「あ、あたしジャスミン茶の冷たいので」
「雪女ってハイカラなもん飲むんだねぇ……私も手伝うよ」
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「あやかし達でクェーサーの強化を?」
「うむ、関節部の改良を、皆に頼んでな。どうじゃ救」
「す、すげー! 前より遥かに反応が良くなってる、3倍の速度で動くぞこいつ!」
「凄いな、現行技術の応用でここまでの物が。これは僕達も考えつかなかったよ」
「こちとら、中島飛行機時代からのベテランよ。ひょっこには負けんの」
感心する犬養に、だいだらぼっちが胸を張った。
「羽山工業の皆ぁ、驚かせてごめんねぇ。今は妖気が無くて、姿を消せなかったんだぁ」
「でも、よく俺達を受け入れられるね。普通鬼なんて、恐くて皆逃げてくのに」
「そりゃ私の顔の方が恐いからね、鬼なんて可愛い物さ」
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「しかし驚いたな、姫野さんが人間に変装した神様なんて……しかも、私達をこの会社に導いていたとは」
「う……皆の人生を弄んだようで、すまんの……じゃが申し訳をさせてくれ、わらわは」
「いいよいいよそんな。むしろ私は感謝してるし。ヒメ様が羽山に誘ってくれなかったら、クソみたいな人生で腐ってただろうし、旦那にも会えなかったんだ」
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「しらせ……あさやまぁ……!」
サヨリヒメは涙目になり、2人を抱きしめた。
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「いえ……何も」
サヨリヒメが倒れている時、クェーサーは何も出来なかった。スマホに閉じ込められ、彼女に手を差し伸べる事すらも。
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