28 / 57
28話 恋AI脳
しおりを挟む
『救は、恋をした事がありますか』
コクピットを整備している救に、クェーサーは尋ねた。
外で作業していた御堂にも聞こえたようで、彼女も耳を傍立てている。
「急にどうしたよ?」
『私は今、「恋」とは何なのかを調べています。羽山や白瀬、犬養らは恋をした相手と結婚しました。人は「恋」したら結婚する生き物です。では独身の救は「恋」をした事がないのかと思い』
「別に恋したからって結婚しなきゃならないわけじゃないからな。俺も女と付き合ったことくらいあるって」
「えっ」
御堂はショックを受けたような顔になった。御堂は彼氏いない歴=年齢である。
『では今も付き合っている女性が居るのですか』
「今はフリーだよ。とっくに別れてる」
「よしっ」
御堂はガッツポーズを見せた。
『「恋」とは特別な相手に、永遠に抱き続けるものではないのですね。なぜ別れてしまったのですか』
「お節介焼きすぎたって言うべきかな。2人と付き合った事があるんだけど、相手を喜ばそうと色々やってたら、「重すぎる」って言われちまってさ。距離感ミスったのが敗因だな」
「分かってない女たちだ、それが先輩の良さだろうに」
御堂は憤った。
『御堂とはどうなのですか。彼女の世話を焼いているようですが』
「御堂なぁ、生活力ゼロだからほっとくと死にそうだし、つい手を出しちまうんだよな」
「だって、私がしっかりしたら先輩来なくなるし……けど呆れられるのもちょっとな……」
物凄く真剣な顔で悩む御堂であった。
「んで、お前はどうなんだ?」
『どうとは』
「そんな質問するって事は、クェーサーも誰かに恋したんだろ」
「なんだって」
御堂がコクピットまでよじ登ってきた。
「本当なのかいクェーサー、君が恋をしたなんて」
『否定はしません。以前は、無いと思っていましたが、自身の分析を進める内、私が恋しているのだと、結論付けるしかありませんでした』
「なんてことだ! 私の造ったAIは人に恋が出来るのか! 流石はこの天才が作っただけの事はある!」
「漫画とかだとよくあるけど、まさか現実に起こるとはなぁ。時代は進むもんだなぁ」
しみじみと年寄臭い事を言う29歳である。
でもって、サヨリヒメはオフィスから、クェーサーらの会話に耳を傾けていた。神様イヤーは地獄耳、ここからでも3人の会話が聞こえてくる。
「それでそれで、誰なんだい。私達の知っている人なのかい?」
「やめとけよ、首を突っ込んでいい話じゃない」
『御堂は私の記憶領域にアクセスできます、私の秘密はすぐに暴かれてしまいます』
「おいおい私がそこまでして君の意中の人を探るわけないだろう」
「もしやったら明日から弁当無しだからな」
「絶対やりませんはい」
サヨリヒメはほっとした。
「でも、その人がどんな性格なのかくらいは聞いてもいいだろう?」
『はい。私もお話ししたいです』
「自慢したかったのかよ、隅に置けないロボットだ」
『なぜでしょうか、あの人の事を、とにかく話したくて仕方ないのです』
サヨリヒメはドキドキした。クェーサーもまた、サヨリヒメに対し好意を抱いている証だ。
『非常に美しい方です、見た目もですが……恐らく、心も』
「君、美醜が分かるようになったのかい?」
『学びました。あのような方と知り合えて、光栄に思います』
サヨリヒメはむずかゆくなり、足を擦り合わせた。麻山に「どしたの?」と声を掛けられてびくりとしている。
『あの方は私に、多くの感情を教えてくれました。こうして救や御堂と、人のように話せるのは、あの方のおかげです。私の心を作ってくれた事、非常に感謝しています』
「随分とおもっ苦しいな」
『救に言われたくはありません』
「ふむ、私からも感謝したいものだよ。私のクェーサーをここまで成長させてくれたのだから。社内の人間か、それとも外なのか。生みの親として礼を言いたいな」
サヨリヒメは頭を抱えて足をばたつかせ、余計に麻山を心配させていた。
「んで、クェーサーはどの辺が好きになったんだ」
『きっかけは、共に遊んでいる内でしょう。あの方がはしゃぎ、私の手を取る姿を見ている内に、次第に惹かれていたのだと、思います』
サヨリヒメは「んきゃー」と奇妙な声を上げた。とうとう麻山に腕を引かれ、会社の外へ連れていかれてしまった。
「手を取る? 君、オンラインゲームにでも入ったのかい?」
「そうだよな、AIのお前じゃ、皆と手を繋げないしなぁ」
救の一言に、クェーサーはぴくりとした。
熱を持たない手を見て、握りしめる。サヨリヒメの手も、ここからでは、触れる事すら出来ない……。
「あ、悪い、変な事言っちまった」
『いえ、問題ありません。私はAIですから、傷つくことはありません』
嘘だった。本当は、救の一言が強く突き刺さっていた。
救を傷つけまいと、嘘を吐き、自身の傷を隠す。まるで人間のような心の機微だが、それがかえってクェーサーに、見えない罅を付けていた。
コクピットを整備している救に、クェーサーは尋ねた。
外で作業していた御堂にも聞こえたようで、彼女も耳を傍立てている。
「急にどうしたよ?」
『私は今、「恋」とは何なのかを調べています。羽山や白瀬、犬養らは恋をした相手と結婚しました。人は「恋」したら結婚する生き物です。では独身の救は「恋」をした事がないのかと思い』
「別に恋したからって結婚しなきゃならないわけじゃないからな。俺も女と付き合ったことくらいあるって」
「えっ」
御堂はショックを受けたような顔になった。御堂は彼氏いない歴=年齢である。
『では今も付き合っている女性が居るのですか』
「今はフリーだよ。とっくに別れてる」
「よしっ」
御堂はガッツポーズを見せた。
『「恋」とは特別な相手に、永遠に抱き続けるものではないのですね。なぜ別れてしまったのですか』
「お節介焼きすぎたって言うべきかな。2人と付き合った事があるんだけど、相手を喜ばそうと色々やってたら、「重すぎる」って言われちまってさ。距離感ミスったのが敗因だな」
「分かってない女たちだ、それが先輩の良さだろうに」
御堂は憤った。
『御堂とはどうなのですか。彼女の世話を焼いているようですが』
「御堂なぁ、生活力ゼロだからほっとくと死にそうだし、つい手を出しちまうんだよな」
「だって、私がしっかりしたら先輩来なくなるし……けど呆れられるのもちょっとな……」
物凄く真剣な顔で悩む御堂であった。
「んで、お前はどうなんだ?」
『どうとは』
「そんな質問するって事は、クェーサーも誰かに恋したんだろ」
「なんだって」
御堂がコクピットまでよじ登ってきた。
「本当なのかいクェーサー、君が恋をしたなんて」
『否定はしません。以前は、無いと思っていましたが、自身の分析を進める内、私が恋しているのだと、結論付けるしかありませんでした』
「なんてことだ! 私の造ったAIは人に恋が出来るのか! 流石はこの天才が作っただけの事はある!」
「漫画とかだとよくあるけど、まさか現実に起こるとはなぁ。時代は進むもんだなぁ」
しみじみと年寄臭い事を言う29歳である。
でもって、サヨリヒメはオフィスから、クェーサーらの会話に耳を傾けていた。神様イヤーは地獄耳、ここからでも3人の会話が聞こえてくる。
「それでそれで、誰なんだい。私達の知っている人なのかい?」
「やめとけよ、首を突っ込んでいい話じゃない」
『御堂は私の記憶領域にアクセスできます、私の秘密はすぐに暴かれてしまいます』
「おいおい私がそこまでして君の意中の人を探るわけないだろう」
「もしやったら明日から弁当無しだからな」
「絶対やりませんはい」
サヨリヒメはほっとした。
「でも、その人がどんな性格なのかくらいは聞いてもいいだろう?」
『はい。私もお話ししたいです』
「自慢したかったのかよ、隅に置けないロボットだ」
『なぜでしょうか、あの人の事を、とにかく話したくて仕方ないのです』
サヨリヒメはドキドキした。クェーサーもまた、サヨリヒメに対し好意を抱いている証だ。
『非常に美しい方です、見た目もですが……恐らく、心も』
「君、美醜が分かるようになったのかい?」
『学びました。あのような方と知り合えて、光栄に思います』
サヨリヒメはむずかゆくなり、足を擦り合わせた。麻山に「どしたの?」と声を掛けられてびくりとしている。
『あの方は私に、多くの感情を教えてくれました。こうして救や御堂と、人のように話せるのは、あの方のおかげです。私の心を作ってくれた事、非常に感謝しています』
「随分とおもっ苦しいな」
『救に言われたくはありません』
「ふむ、私からも感謝したいものだよ。私のクェーサーをここまで成長させてくれたのだから。社内の人間か、それとも外なのか。生みの親として礼を言いたいな」
サヨリヒメは頭を抱えて足をばたつかせ、余計に麻山を心配させていた。
「んで、クェーサーはどの辺が好きになったんだ」
『きっかけは、共に遊んでいる内でしょう。あの方がはしゃぎ、私の手を取る姿を見ている内に、次第に惹かれていたのだと、思います』
サヨリヒメは「んきゃー」と奇妙な声を上げた。とうとう麻山に腕を引かれ、会社の外へ連れていかれてしまった。
「手を取る? 君、オンラインゲームにでも入ったのかい?」
「そうだよな、AIのお前じゃ、皆と手を繋げないしなぁ」
救の一言に、クェーサーはぴくりとした。
熱を持たない手を見て、握りしめる。サヨリヒメの手も、ここからでは、触れる事すら出来ない……。
「あ、悪い、変な事言っちまった」
『いえ、問題ありません。私はAIですから、傷つくことはありません』
嘘だった。本当は、救の一言が強く突き刺さっていた。
救を傷つけまいと、嘘を吐き、自身の傷を隠す。まるで人間のような心の機微だが、それがかえってクェーサーに、見えない罅を付けていた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
大阪の小料理屋「とりかい」には豆腐小僧が棲みついている
山いい奈
キャラ文芸
男尊女卑な板長の料亭に勤める亜沙。数年下積みを長くがんばっていたが、ようやくお父さんが経営する小料理屋「とりかい」に入ることが許された。
そんなとき、亜沙は神社で豆腐小僧と出会う。
この豆腐小僧、亜沙のお父さんに恩があり、ずっと探していたというのだ。
亜沙たちは豆腐小僧を「ふうと」と名付け、「とりかい」で使うお豆腐を作ってもらうことになった。
そして亜沙とふうとが「とりかい」に入ると、あやかし絡みのトラブルが巻き起こるのだった。
後宮物語〜身代わり宮女は皇帝に溺愛されます⁉︎〜
菰野るり
キャラ文芸
寵愛なんていりません!身代わり宮女は3食昼寝付きで勉強がしたい。
私は北峰で商家を営む白(パイ)家の長女雲泪(ユンルイ)
白(パイ)家第一夫人だった母は私が小さい頃に亡くなり、家では第二夫人の娘である璃華(リーファ)だけが可愛がられている。
妹の後宮入りの用意する為に、両親は金持ちの薬屋へ第五夫人の縁談を準備した。爺さんに嫁ぐ為に生まれてきたんじゃない!逃げ出そうとする私が出会ったのは、後宮入りする予定の御令嬢が逃亡してしまい責任をとって首を吊る直前の宦官だった。
利害が一致したので、わたくし銀蓮(インリェン)として後宮入りをいたします。
雲泪(ユンレイ)の物語は完結しました。続きのお話は、堯舜(ヤオシュン)の物語として別に連載を始めます。近日中に始めますので、是非、お気に入りに登録いただき読みにきてください。お願いします。
神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました
青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。
それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。
熊野古道 神様の幻茶屋~伏拝王子が贈る寄辺桜茶~
ミラ
キャラ文芸
社会人二年目の由真はクレーマーに耐え切れず会社を逃げ出した。
「困った時は熊野へ行け」という姉の導きの元、熊野古道を歩く由真は知らぬ間に「神様茶屋」に招かれていた。
茶屋の主人、伏拝王子は寄る辺ない人間や八百万の神を涙させる特別な茶を淹れるという。
彼が茶を振舞うと、由真に異変が──
優しい神様が集う聖地、熊野の茶物語。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
ワケあり異類婚御夫婦様、憩いの住まいはこちらでございます。
蒼真まこ
キャラ文芸
異類婚夫婦の入居を歓迎する『みなも荘』。姿かたちは違えども、そこには確かに愛がある─。
幼い頃に両親を亡くした秋山楓は、孤独感を抱えながら必死に生きてきた。幼い頃の記憶を頼りに懐かしい湖へ向かうと、銀色の髪をした不思議な男性と出会う。それは楓にとって生涯の伴侶となる男性だった。しかし彼はただの人ではなく……。
困難を乗り越えて夫婦となったふたりは、『ワケあり異類婚夫婦』の住む、みなも荘を管理していくことになる。 様々な異類婚夫婦たちが紡ぐ、ほっこり日常、夫婦愛、家族の物語。
第一章は物語の始まり。楓と信の出会いと再会。 シリアスな部分も含みます。 第二章より様々な異類婚夫婦たちが登場します。 場面によっては、シリアスで切ない展開も含みます。 よろしくお願い致します。
☆旧題『いるいこん! ~あやかし長屋夫婦ものがたり~』
を改稿改題した作品となります。
放置したままとなっておりましたので、タイトルや表紙などを変更させていただきました。
話の流れなどが少し変わっていますが、設定などに大きな変更はありませんのでよろしくお願い致します。
☆すてきな表紙絵はhake様に描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる