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27話 共存など幻想にすぎない
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目の前であやかしがひとり、またひとりと倒れていく。
カムスサは拳を握り、倒れ伏したあやかしへ頭を下げた。
「これも大儀のためだ、許せ」
カムスサはあやかしを襲撃し、妖気を抜き取っていた。
復活させたヤマタノオロチは長きに渡る封印によって、力の大半を失っていた。完全な状態に戻すには、また大量の妖気が必要になる。
人間達を追い払うため、カムスサは再び日本各地を回り、あやかし狩りを続けていた。
「ヤマタノオロチが力を取り戻せば、仁王を取り戻すのも容易よ」
呟きながら、山奥の寺へと戻った。あやかしが去り、人が寄り付かない廃寺ならば、ヤマタノオロチを隠せる。
壊れた賽銭箱の後ろから、小さな白蛇が出てきた。8つの頭を持つこの蛇こそ、奈良時代に日本を震撼させたあやかしヤマタノオロチだ。
カムスサは集めた妖気を差し出し、ヤマタノオロチに食わせた。白蛇の妖気がぐんと上がったが、まだまだ足りないと言わんばかりにカムスサの手を噛んだ。
「待っていろ、また持ってくる」
全く、どれだけ妖気を食えば気が済むんだ。
カムスサはぼやきつつ、また街へ繰り出した。
街には、人ともに暮らすあやかしが大勢いる。人間達と共に笑い、悲しみ、生活を共にする彼らを眺め、カムスサは眉をひそめた。
……奴らは、人間が憎くないのか。
あやかし達は人の社会を、自然の延長とほざいている。コンクリートで固められた建造物、アスファルトで埋められた大地、申し訳程度に植えられた街路樹。これのどこが自然だと言うのだ。
自分達の住処を奪った者達に、どうしてこいつらは迎合できる。肩や腕を組み、杯を交わす事が出来る。あやかしへの敬意を失った者達に、なんで笑顔を向けられるのだ。
「あやかしの本懐、幸福は、大自然と共にあるだろう!」
カムスサの目に、ろくろ首が映った。人間の男の腕にしがみつき、売女のように媚びを振っている。
それが気に入らなくて、腹いせに妖気を奪った。
男は気絶したろくろ首を心から心配し、すぐに救急車を呼んだ。ろくろ首は殺していない、数ヶ月は衰弱するだろうが、また元の生活に戻れる。
「全ては、あやかしの明日のため……人間から、誉れを取り戻すため……」
カムスサは、男を見やった。ろくろ首が倒れ、悲しみに暮れている。しかしそれも奴の正体を知らないからだ。
もし意中の相手がろくろ首だと知れば、彼奴の心も離れていこう。人とあやかしは、相容れぬ者なのだ。
「……幻想だ、人とあやかしが共にあるなど……」
人間とあやかしが共存している社会を眺め、カムスサは去っていった。
人間は害だ、あやかしの敵だ。何度も自分に言い聞かせながら。
カムスサは拳を握り、倒れ伏したあやかしへ頭を下げた。
「これも大儀のためだ、許せ」
カムスサはあやかしを襲撃し、妖気を抜き取っていた。
復活させたヤマタノオロチは長きに渡る封印によって、力の大半を失っていた。完全な状態に戻すには、また大量の妖気が必要になる。
人間達を追い払うため、カムスサは再び日本各地を回り、あやかし狩りを続けていた。
「ヤマタノオロチが力を取り戻せば、仁王を取り戻すのも容易よ」
呟きながら、山奥の寺へと戻った。あやかしが去り、人が寄り付かない廃寺ならば、ヤマタノオロチを隠せる。
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カムスサは集めた妖気を差し出し、ヤマタノオロチに食わせた。白蛇の妖気がぐんと上がったが、まだまだ足りないと言わんばかりにカムスサの手を噛んだ。
「待っていろ、また持ってくる」
全く、どれだけ妖気を食えば気が済むんだ。
カムスサはぼやきつつ、また街へ繰り出した。
街には、人ともに暮らすあやかしが大勢いる。人間達と共に笑い、悲しみ、生活を共にする彼らを眺め、カムスサは眉をひそめた。
……奴らは、人間が憎くないのか。
あやかし達は人の社会を、自然の延長とほざいている。コンクリートで固められた建造物、アスファルトで埋められた大地、申し訳程度に植えられた街路樹。これのどこが自然だと言うのだ。
自分達の住処を奪った者達に、どうしてこいつらは迎合できる。肩や腕を組み、杯を交わす事が出来る。あやかしへの敬意を失った者達に、なんで笑顔を向けられるのだ。
「あやかしの本懐、幸福は、大自然と共にあるだろう!」
カムスサの目に、ろくろ首が映った。人間の男の腕にしがみつき、売女のように媚びを振っている。
それが気に入らなくて、腹いせに妖気を奪った。
男は気絶したろくろ首を心から心配し、すぐに救急車を呼んだ。ろくろ首は殺していない、数ヶ月は衰弱するだろうが、また元の生活に戻れる。
「全ては、あやかしの明日のため……人間から、誉れを取り戻すため……」
カムスサは、男を見やった。ろくろ首が倒れ、悲しみに暮れている。しかしそれも奴の正体を知らないからだ。
もし意中の相手がろくろ首だと知れば、彼奴の心も離れていこう。人とあやかしは、相容れぬ者なのだ。
「……幻想だ、人とあやかしが共にあるなど……」
人間とあやかしが共存している社会を眺め、カムスサは去っていった。
人間は害だ、あやかしの敵だ。何度も自分に言い聞かせながら。
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