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24話 クェーサーの伸びしろ
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河川敷に多くの人が詰めかけ、スマホを向けていた。
彼らの視線の先には、6メートルの鉄の巨人、クェーサーが走る姿が見られた。
「うっし、次はジャンプだ!」
『了解』
クェーサーは救の操作に合わせ、自身の動きをプログラムする。単純な垂直ジャンプから、走り幅跳び等、様々なジャンプを試していた。
クェーサーの駆動系がほぼほぼ完成したので、荒川付近にて稼働試験を行っているのだ。
「クェーサーは問題ないですね。きちんと状況に応じてプログラムを変えてます」
AIの状態も御堂が逐一モニタリングし、サポートしていた。
人間のような動きを見せるロボットに人々は歓喜の声を上げていた。クェーサーの姿はSNSで拡散され、テレビ局からの取材も受けて、全国に広まっていく。
「ふふ、このために羽山工業のロゴをクェーサーの胸部に付けたんだ。これは大きな宣伝になるぞ」
「専務、強かですね」
犬養は、見た目は優男だが策士である。
サヨリヒメは苦笑しつつ、クェーサーを見守った。
今度はバックパックを装備しての稼働実験だ。クェーサーはあらゆるバックパックを装備して、あらゆる任務に対応できる汎用機だ。
工具を背負えば悪路の応急処置が、消火剤を搭載すれば消防車が入らない場所の火事に、キャリアを背負えばあらゆる場所への物資の運搬が、更にはキャンプパックと言う、簡易的な医療設備や仮設住居を組み立てられるパックも存在している。
「二足歩行だからこそ出来る装備ですね」
「ああ、クェーサーが一台でも居れば、どんな状況も打破できるようになる。多くの人の命を救い出すための、大きな光になるはずだよ」
犬養の大きな志は、サヨリヒメの大好きな美点だ。
「よしクェーサー、一旦休憩だ。降りるぜ」
『了解』
稼働実験を中断し、救が戻ってきた。職員達が集まり、会議が始まる。
「どうかね救君」
「大分形にはなってると思うんすけど、動きが硬いっすね。こっちの操縦に対しほんの少しずれると言うか、ラグがあるんすよ。そのせいで次の動きにつなぐのが、ちょっと遅れるっす」
「あんたの反射神経が良すぎるからじゃないかい?」
「アメコミヒーローみたいでかっこいいっすね」
救は無邪気に笑った。
「クェーサーはどうだい? 自分の体でおかしな所はあるかな? ラグがあるなら、どこかしら問題が出ているはずだけど」
『電装系等に問題は見られません。可動部の異常なし、機体の状態は万全です』
「ふむ、僕が乗ってみよう」
犬養が搭乗し、救と同様の操作をしてみた。救よりも操縦技能が高く、スムーズに動かしているように見えるが、どこかぎこちなさがうかがえる。
一通り試した彼は、顎に手を当てた。
「いやぁ~、こんなに取材が来るとは思わなかったよぉ。ごめんね遅くなって」
「社長、丁度いい所に。クェーサーの課題が見えましたよ」
羽山も交えての会議にて、犬養が出した結論はシンプルだった。
「関節部の可動摩擦面への負荷が強いんだ。これをもっと抑えないと運動性能の低下は勿論、故障もしやすくなってしまうね」
「摩擦をもっと減らせって事かい? 中々難しい注文だね、出力を上げて無理やり早く動けるようにしちゃおうか」
「姐さんそいつは乱暴すぎるぜ、クェーサーが壊れちまう。ただでさえこいつ整備しにくいんだからさ」
「先輩の言う通りです。ただ、羽山の現在の技術力ではこれ以上となると……」
技術者たちは頭を悩ませ、クェーサーを見上げた。
AIのクェーサーにも、現状を打破する手立てが思い浮かばなかった。
彼らの視線の先には、6メートルの鉄の巨人、クェーサーが走る姿が見られた。
「うっし、次はジャンプだ!」
『了解』
クェーサーは救の操作に合わせ、自身の動きをプログラムする。単純な垂直ジャンプから、走り幅跳び等、様々なジャンプを試していた。
クェーサーの駆動系がほぼほぼ完成したので、荒川付近にて稼働試験を行っているのだ。
「クェーサーは問題ないですね。きちんと状況に応じてプログラムを変えてます」
AIの状態も御堂が逐一モニタリングし、サポートしていた。
人間のような動きを見せるロボットに人々は歓喜の声を上げていた。クェーサーの姿はSNSで拡散され、テレビ局からの取材も受けて、全国に広まっていく。
「ふふ、このために羽山工業のロゴをクェーサーの胸部に付けたんだ。これは大きな宣伝になるぞ」
「専務、強かですね」
犬養は、見た目は優男だが策士である。
サヨリヒメは苦笑しつつ、クェーサーを見守った。
今度はバックパックを装備しての稼働実験だ。クェーサーはあらゆるバックパックを装備して、あらゆる任務に対応できる汎用機だ。
工具を背負えば悪路の応急処置が、消火剤を搭載すれば消防車が入らない場所の火事に、キャリアを背負えばあらゆる場所への物資の運搬が、更にはキャンプパックと言う、簡易的な医療設備や仮設住居を組み立てられるパックも存在している。
「二足歩行だからこそ出来る装備ですね」
「ああ、クェーサーが一台でも居れば、どんな状況も打破できるようになる。多くの人の命を救い出すための、大きな光になるはずだよ」
犬養の大きな志は、サヨリヒメの大好きな美点だ。
「よしクェーサー、一旦休憩だ。降りるぜ」
『了解』
稼働実験を中断し、救が戻ってきた。職員達が集まり、会議が始まる。
「どうかね救君」
「大分形にはなってると思うんすけど、動きが硬いっすね。こっちの操縦に対しほんの少しずれると言うか、ラグがあるんすよ。そのせいで次の動きにつなぐのが、ちょっと遅れるっす」
「あんたの反射神経が良すぎるからじゃないかい?」
「アメコミヒーローみたいでかっこいいっすね」
救は無邪気に笑った。
「クェーサーはどうだい? 自分の体でおかしな所はあるかな? ラグがあるなら、どこかしら問題が出ているはずだけど」
『電装系等に問題は見られません。可動部の異常なし、機体の状態は万全です』
「ふむ、僕が乗ってみよう」
犬養が搭乗し、救と同様の操作をしてみた。救よりも操縦技能が高く、スムーズに動かしているように見えるが、どこかぎこちなさがうかがえる。
一通り試した彼は、顎に手を当てた。
「いやぁ~、こんなに取材が来るとは思わなかったよぉ。ごめんね遅くなって」
「社長、丁度いい所に。クェーサーの課題が見えましたよ」
羽山も交えての会議にて、犬養が出した結論はシンプルだった。
「関節部の可動摩擦面への負荷が強いんだ。これをもっと抑えないと運動性能の低下は勿論、故障もしやすくなってしまうね」
「摩擦をもっと減らせって事かい? 中々難しい注文だね、出力を上げて無理やり早く動けるようにしちゃおうか」
「姐さんそいつは乱暴すぎるぜ、クェーサーが壊れちまう。ただでさえこいつ整備しにくいんだからさ」
「先輩の言う通りです。ただ、羽山の現在の技術力ではこれ以上となると……」
技術者たちは頭を悩ませ、クェーサーを見上げた。
AIのクェーサーにも、現状を打破する手立てが思い浮かばなかった。
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