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15話 山神の暴走

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「や、止めてください……助けて、誰か!」

 命乞いに耳を貸さず、カムスサは九尾の狐に襲い掛かった。
 首を締めあげ、妖気を奪い取る。九尾はぐったりとし、倒れてしまう。

「案ずるな、命までは奪わん」

 同胞であるあやかしならば、多少の手心は加えよう。今カムスサには、力が必要なのだ。
 彼は各地を飛び回り、「あやかし狩り」をしていた。
 人間達を仁王市から追い払うための力が必要なのだ。そのためにはあやかし達から妖気を蓄えなければならない。
 仁王市は自分の縄張りだ、そこから人間を追い払い、あやかしだけの領域を作る。それがカムスサの目的だった。
 計画にはまだ妖気が足りない。もっと、もっと多くのあやかしから、力を貰わねば。

「何をするんだ! うわぁっ!」
「何て事を……いやああっ!」
「苦しい……僕らが、何をしたと……!?」
「あやかしでありながら、人間に与しているからだ」

 現代のあやかし達は誇りを失っている、のうのうと人間達に手を擦り、まるで奴隷のように付き従っている。そんなのはあやかしではない。
 自分がしているのは、あやかしの誇りを取り戻すための戦いだ。そのためには、多少の犠牲など厭わない。

 ……我が娘、サヨリヒメならば賛同するはずだ。

 周囲のあやかしにカムスサの計画を話したが、誰からも協力は得られなかった。人間を追い払う意味がないと、一蹴されてしまった。

 誰もやらないと言うのならば、自分がやらねばならぬ。正しいあやかしの世を取り戻すために、このカムスサが血に染まらねばならない。
 人間はこの世から、排除しなければならない存在なのだ。

「次へ行かねば、力を蓄えねば!」

 カムスサの思想は、暴走の一途をたどっていた。
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