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3部
186話 末恐ろしい子供達
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午後、ハローは早めに帰路に着いた。
今日は月に一度の入浴日で、ハロー達は午後のグループだ。家に戻ると、同じく午後入浴のミコがお邪魔していた。
「ハロー兄お帰り、それと上がってまーす」
「いらっしゃい。ただいまー皆」
「おかえり父様!」
アマトが飛びついてくれた。目尻を下げるハローだが、ナルガが来てくれない。いつもならおかえりのハグをしてくれるのに。
「あれ、どうしたの?」
「すまんハロー、ミコの手前、今日の迎えは勘弁してくれ……」
なぜかナルガは照れている。ハローは理由が分からず、首を傾げるばかり。
「何があったの?」
「聞かないであげて。アマト、朝の事は秘密だぞ」
「はーい! 兄様との約束だから守ります!」
リナルドも教えてくれなくて、なんか疎外感。寂しさを覚える父親だった。
「まぁまぁ、気にしてたらはげるよハロー兄。お風呂行こうよ」
「そうだね、そうしよっか」
気を取り直して、家族皆+1で風呂屋へ向かった。リナルドとミコのじゃれあいを見守っていると、道中でワーウルフの集団に出くわした。
すぐさまハローとナルガが戦闘態勢に入るが、リナルドとミコが木刀を手に走り出す。三年前、エドウィンの背中で怯えていた二人は、ワーウルフを事もなく打ち倒した。
年端も行かぬ子供とは思えない腕前だ。勇者と四天王の凄腕に師事を受けた二人は、並の大人よりも強くなっていた。
「はーい私の方が二頭多く倒したから私の勝ちぃ」
「リーダーは僕が倒しただろ! だから得点としては僕の勝ちだい!」
しかも言い争いをする余裕まであると来た。愛弟子の成長に目を細める夫婦である。
「末恐ろしい連中だな、ハローが引退してもラコ村は安泰だ」
「エド。そっちも午後だったか」
「そうなんです。こんにちはアマトちゃん」
「こんにちはミネバ叔母様! バン君とガイ君もこんにちわっ」
『こんにちわっ』
同い年で、家同士の交流もあるからか、両家の子供達は仲が良い。アマトはヴァンの発音がまだ上手く出来ず、舌足らずな呼び方になっていた。
「子供達の姿を見てると、なごみますね」
「心安らぐ光景だ。良き関係が長く続けばよいな」
「だね。けど嫁にはやらないよ、欲しければ俺を倒してからにしろ」
「同じく僕を倒してからにしろ」
「何年先の話してんだ、てかなんでリナルドまで便乗してんだよ」
目が本気、殺意満々の馬鹿二人である。
「それはそれとして、ガイとヴァンが大きくなったら、二人に稽古でも付けてもらうか。元勇者と元四天王が揃ってるなんて、贅沢極まりないしな」
「という事なので、よろしくお願いしますね」
『おねがいしまーす!』
双子からも頼まれ、マンチェスター夫婦は苦笑した。
「俺達、道場主じゃないんだけど、まぁいっか」
「村の防衛力が上がるのは悪い事ではないからな。その代わり、厳しく指導するぞ」
「音を上げない程度にしごいてやってくれ、なだめるの面倒だからな」
エドウィンは双子を抱え上げた。母のミネバより、子供に懐かれている父親である。
今日は月に一度の入浴日で、ハロー達は午後のグループだ。家に戻ると、同じく午後入浴のミコがお邪魔していた。
「ハロー兄お帰り、それと上がってまーす」
「いらっしゃい。ただいまー皆」
「おかえり父様!」
アマトが飛びついてくれた。目尻を下げるハローだが、ナルガが来てくれない。いつもならおかえりのハグをしてくれるのに。
「あれ、どうしたの?」
「すまんハロー、ミコの手前、今日の迎えは勘弁してくれ……」
なぜかナルガは照れている。ハローは理由が分からず、首を傾げるばかり。
「何があったの?」
「聞かないであげて。アマト、朝の事は秘密だぞ」
「はーい! 兄様との約束だから守ります!」
リナルドも教えてくれなくて、なんか疎外感。寂しさを覚える父親だった。
「まぁまぁ、気にしてたらはげるよハロー兄。お風呂行こうよ」
「そうだね、そうしよっか」
気を取り直して、家族皆+1で風呂屋へ向かった。リナルドとミコのじゃれあいを見守っていると、道中でワーウルフの集団に出くわした。
すぐさまハローとナルガが戦闘態勢に入るが、リナルドとミコが木刀を手に走り出す。三年前、エドウィンの背中で怯えていた二人は、ワーウルフを事もなく打ち倒した。
年端も行かぬ子供とは思えない腕前だ。勇者と四天王の凄腕に師事を受けた二人は、並の大人よりも強くなっていた。
「はーい私の方が二頭多く倒したから私の勝ちぃ」
「リーダーは僕が倒しただろ! だから得点としては僕の勝ちだい!」
しかも言い争いをする余裕まであると来た。愛弟子の成長に目を細める夫婦である。
「末恐ろしい連中だな、ハローが引退してもラコ村は安泰だ」
「エド。そっちも午後だったか」
「そうなんです。こんにちはアマトちゃん」
「こんにちはミネバ叔母様! バン君とガイ君もこんにちわっ」
『こんにちわっ』
同い年で、家同士の交流もあるからか、両家の子供達は仲が良い。アマトはヴァンの発音がまだ上手く出来ず、舌足らずな呼び方になっていた。
「子供達の姿を見てると、なごみますね」
「心安らぐ光景だ。良き関係が長く続けばよいな」
「だね。けど嫁にはやらないよ、欲しければ俺を倒してからにしろ」
「同じく僕を倒してからにしろ」
「何年先の話してんだ、てかなんでリナルドまで便乗してんだよ」
目が本気、殺意満々の馬鹿二人である。
「それはそれとして、ガイとヴァンが大きくなったら、二人に稽古でも付けてもらうか。元勇者と元四天王が揃ってるなんて、贅沢極まりないしな」
「という事なので、よろしくお願いしますね」
『おねがいしまーす!』
双子からも頼まれ、マンチェスター夫婦は苦笑した。
「俺達、道場主じゃないんだけど、まぁいっか」
「村の防衛力が上がるのは悪い事ではないからな。その代わり、厳しく指導するぞ」
「音を上げない程度にしごいてやってくれ、なだめるの面倒だからな」
エドウィンは双子を抱え上げた。母のミネバより、子供に懐かれている父親である。
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