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3部
173話 父との冒険
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十日ほど経ち、ついに約束の日が来た。
早朝にリナルドと目を覚ましたハローは、持ち物をチェックした。
リナルドはわくわくしながらハローを見上げている。ハローはリナルドを馬に跨らせ、ナルガとアマトを抱きしめた。
「じゃ、行ってくるよ」
「気を付けてな。おっと、こいつを忘れるなよ」
ナルガからパンを受け取り、ハローは腰のカバンを叩いた。中には先日リナルドが作ってくれたジャムが入っている。
「昼が楽しみだ。んじゃ、出発するぞ」
「はーい!」
ハローは馬に乗ると、颯爽と駆り出した。
リナルドはドキドキしていた。馬はとても早くて、景色が目まぐるしく変わっていく。未知の世界へ向かっていくようで、心が躍る。まさしくこれは、冒険だ。
目が輝いている義息子を撫で、ハローはより馬を早く走らせた。
「リナルドは馬好きか?」
「うん!」
「じゃあ近いうちに乗馬を教えるよ。馬に乗るのって難しいんだぞ」
「そうなの? お父さん見てると簡単そうだけど」
「いやいや、馬を嘗めてはいけないよ。振り落とされたら頭打って痛い目を見るぞ」
ほえ~と驚く顔になるリナルド。いい反応を見せる義息子だ。
ハローは森に入り、道なき道を進んでいく。せせらぎが聞こえてくると、間もなくして川に到着した。
ここが中間地点だ。ハローはリナルドを下ろし、釣竿を出した。
「うーし、魚を釣って焼くぞー」
「僕、お魚好き」
「好き嫌いなくて偉いぞ。それに、お楽しみのおやつもあるしな」
ハローは早速釣竿を垂らした。そしたらすぐにびんと糸が引かれ、リナルドが大急ぎで引き揚げた。
大きなマスが釣れて、リナルドは大喜びだ。ハローが続けて糸を垂らすと、またすぐにマスが釣れる。普段中々釣れないのに、今日は入れ食いだ。
四尾釣れた所で当たりが出なくなり、ハローは火をおこした。リナルドが食べやすいよう、マスの内臓を取ってから焼き始める。
いい匂いが漂ってきて、リナルドはお腹を鳴らした。焼き上がったマスを渡すと、リナルドは勢いよくかぶりついた。
「美味しいっ!」
「よかったなぁ。もうひと串あるけど、食べられるかい?」
「食べたい!」
リナルドは二尾も食べ、「けぷ」と小さなげっぷを出した。お腹いっぱいになったか聞いてみると、リナルドは首を横に振った。
「まだお母さんのパン、食べてないもん」
「そうだったな。よーし、おやつの時間だ。リナルドお手製のこいつもあるしな」
ハローはパンとジャムを出した。パンを軽く焼いてから二つに割り、ジャムを塗りたくる。
二人一緒にパンを齧ると、サクッと軽い音がした。甘酸っぱいジャムがたっぷり入ったおやつに、二人で「うまーい!」と声を上げた。
「よく出来てるじゃないか、上手に作れたなぁリナルドー」
「僕、もっといろんなの作れるようになりたい」
「ははっ、やりたい事がいっぱいだな。あーでも、料理はナルガに教わった方がいいな。ナルガの料理は天下一品だからなぁ」
隙あらば嫁自慢をする旦那である。
腹ごしらえを済ませた所で、二人で川遊びに興じた。水を掛け合ったり、石を投げて水切りをしたり。と、急にリナルドが怯え始めた。
「お父さん、あれ……」
義息子が示す先を見ると、熊の姿が。唸り声を上げて威嚇しており、リナルドは恐がってハローの足にしがみついた。
ハローはリナルドを背にしながら、熊を見つめた。熊はじりじりと距離を詰め、今にも襲い掛かってきそうだった。
「失せろ」
ところが、ハローが一声かけた途端。熊は急に竦み上がった。
ハローがナイフに手を掛けると、熊はびくりと巨体を跳ね、逃げ出してしまった。リナルドはほっとし、ハローに抱き上げてもらった。
「どうもこの辺は縄張りみたいだ、場所を移そう。どうした?」
「お父さん、恰好よかった」
「まぁな! だってリナルドのお父さんだもの」
ハローは快活に笑い、リナルドを馬に乗せた。
ちょっと長居しすぎた。リナルドにはもう一ヵ所、連れて行ってあげたい場所があるんだ。
早朝にリナルドと目を覚ましたハローは、持ち物をチェックした。
リナルドはわくわくしながらハローを見上げている。ハローはリナルドを馬に跨らせ、ナルガとアマトを抱きしめた。
「じゃ、行ってくるよ」
「気を付けてな。おっと、こいつを忘れるなよ」
ナルガからパンを受け取り、ハローは腰のカバンを叩いた。中には先日リナルドが作ってくれたジャムが入っている。
「昼が楽しみだ。んじゃ、出発するぞ」
「はーい!」
ハローは馬に乗ると、颯爽と駆り出した。
リナルドはドキドキしていた。馬はとても早くて、景色が目まぐるしく変わっていく。未知の世界へ向かっていくようで、心が躍る。まさしくこれは、冒険だ。
目が輝いている義息子を撫で、ハローはより馬を早く走らせた。
「リナルドは馬好きか?」
「うん!」
「じゃあ近いうちに乗馬を教えるよ。馬に乗るのって難しいんだぞ」
「そうなの? お父さん見てると簡単そうだけど」
「いやいや、馬を嘗めてはいけないよ。振り落とされたら頭打って痛い目を見るぞ」
ほえ~と驚く顔になるリナルド。いい反応を見せる義息子だ。
ハローは森に入り、道なき道を進んでいく。せせらぎが聞こえてくると、間もなくして川に到着した。
ここが中間地点だ。ハローはリナルドを下ろし、釣竿を出した。
「うーし、魚を釣って焼くぞー」
「僕、お魚好き」
「好き嫌いなくて偉いぞ。それに、お楽しみのおやつもあるしな」
ハローは早速釣竿を垂らした。そしたらすぐにびんと糸が引かれ、リナルドが大急ぎで引き揚げた。
大きなマスが釣れて、リナルドは大喜びだ。ハローが続けて糸を垂らすと、またすぐにマスが釣れる。普段中々釣れないのに、今日は入れ食いだ。
四尾釣れた所で当たりが出なくなり、ハローは火をおこした。リナルドが食べやすいよう、マスの内臓を取ってから焼き始める。
いい匂いが漂ってきて、リナルドはお腹を鳴らした。焼き上がったマスを渡すと、リナルドは勢いよくかぶりついた。
「美味しいっ!」
「よかったなぁ。もうひと串あるけど、食べられるかい?」
「食べたい!」
リナルドは二尾も食べ、「けぷ」と小さなげっぷを出した。お腹いっぱいになったか聞いてみると、リナルドは首を横に振った。
「まだお母さんのパン、食べてないもん」
「そうだったな。よーし、おやつの時間だ。リナルドお手製のこいつもあるしな」
ハローはパンとジャムを出した。パンを軽く焼いてから二つに割り、ジャムを塗りたくる。
二人一緒にパンを齧ると、サクッと軽い音がした。甘酸っぱいジャムがたっぷり入ったおやつに、二人で「うまーい!」と声を上げた。
「よく出来てるじゃないか、上手に作れたなぁリナルドー」
「僕、もっといろんなの作れるようになりたい」
「ははっ、やりたい事がいっぱいだな。あーでも、料理はナルガに教わった方がいいな。ナルガの料理は天下一品だからなぁ」
隙あらば嫁自慢をする旦那である。
腹ごしらえを済ませた所で、二人で川遊びに興じた。水を掛け合ったり、石を投げて水切りをしたり。と、急にリナルドが怯え始めた。
「お父さん、あれ……」
義息子が示す先を見ると、熊の姿が。唸り声を上げて威嚇しており、リナルドは恐がってハローの足にしがみついた。
ハローはリナルドを背にしながら、熊を見つめた。熊はじりじりと距離を詰め、今にも襲い掛かってきそうだった。
「失せろ」
ところが、ハローが一声かけた途端。熊は急に竦み上がった。
ハローがナイフに手を掛けると、熊はびくりと巨体を跳ね、逃げ出してしまった。リナルドはほっとし、ハローに抱き上げてもらった。
「どうもこの辺は縄張りみたいだ、場所を移そう。どうした?」
「お父さん、恰好よかった」
「まぁな! だってリナルドのお父さんだもの」
ハローは快活に笑い、リナルドを馬に乗せた。
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