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3部

169話 寂しがる兄

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「よく働くね、リナルド」

 ミコと日陰で小休止していたリナルドは、そう言われて口をもごつかせた。
 アマトにかかりっきりのナルガを見やり、すん、と鼻を鳴らす。ミコはしたり顔で顎を撫で、何度も頷いた。

「そうかそうかー、お兄ちゃんになったから頑張ってるんだねー」
「ん、うん……まぁ」
「あれ、違うの?」
「そういうのじゃなくて、その……方がお父さんとお母さん、喜ぶかなって」

 歯切れの悪い言い訳をして、リナルドは膝を抱えた。
 アマトが産まれてから、ハローとナルガは義妹にかかりっきりになっている。リナルドを抱きしめたり、甘えさせてくれるけど、時間は前より減っていた。

 二人が自分を愛してくれているのは理解している、けど……できればもっと、沢山抱きしめてほしい。
 日曜学校を頑張ったり、仕事を一生懸命すれば、二人は自分に構ってくれる。そしたら、捨てられずにすむかもしれない。

 リナルドは一度、親から捨てられた経験がある。二人がアマトを構う度、人売りに渡された時の記憶が蘇ってしまう。
 もっと僕にかまってほしい。二人には全然、甘え足りていないんだ。

「もしかして、寂しいの?」
「違うよ! 違うよ……ちがう……」
「寂しいんだ。よし! じゃあミコに甘えなさーい! いーっぱい抱きしめてあげよう」
「やめとく」
「なーんでよ!?」

 ミコにぽこぽこ肩を叩かれた。リナルドが甘えたいのはナルガとハローだ、お前ではない。
 でもそうか、リナルドはもっと甘えたいのか。
 ミコは考えた、ここはリナルドの姉(※違います)として、問題をかいけつすべき場面では? と。

 ならばアリスに言えばいい。もっとリナルドにかまってあげて、そう言えばアリスはきっとかいけつしてくれるはずだ。
 でもそれをリナルドには伝えない。恩着せがましいのは嫌われると、エドウィンが言っていたから。

 弟を助けるのが姉の役目、任せておいてね。
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