アラサーでクビになった魔王四天王ですが勇者に「結婚しよ」と告白され、溺愛されてるので今は幸せです

歩く、歩く。

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3部

156話 僕だって強くならねばならないんだ

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 ミコが連れて来たのは、森の奥にある花畑だ。色とりどりの花が咲いていて、リナルドは目を奪われた。
 ハローとナルガはどんな花が好きだろう。リナルドは真剣に吟味し、花を摘んでいった。
 集めた花を束にしようとするも、紐が思うように結べない。ミコはと言うと、摘んだ花で冠を作っていた。でも上手くできないようで、しょぼくれているようだ。

「ミネバ姉~、やれる~?」
「どれどれ、貸してもらえますか」

 勇んで作り始めたミネバだが、意外と不器用で、いびつな冠しか作れない。落ち込む二人に、エドウィンがため息をついて手を伸ばした。

「よく見てろ」

 エドウィンはてきぱきと冠を量産し、二人に被せた。喜ぶ二人をしり目に、エドウィンはリナルドにも助け船を出した。
 茎を切り、丸く小さな花束にしていく。とても手際よくて、リナルドは感心してしまった。

「こういうのはまず、茎の長さを整えてからやるんだ。それと、このままだとプレゼントにするには少し味気ないからな」
 白い布で包み、ピンク色の大きな紐で根元を結んで、素敵なブーケが完成した。エドウィンの思わぬ特技にリナルドは驚いた。
「上手、だね」
「生まれつき器用なもんでね。ほら、教えたんだから作れよ。あいつらに贈るなら僕じゃなくて、リナルドが作らないと意味ないだろ」
「う、うん。やってみる」

 エドウィンから指示を受けながら、リナルドはブーケを作った。ちょっと歪んでしまったが、エドウィンは「形よりも気持ちだ」と慰めてくれた。
 文句を言いながらも協力的なエドウィンを見上げ、リナルドは目を瞬いた。

「なんだよ、なんか文句でもあるのか?」
「えと、お医者さんって本当は、優しい人?」
「優しくなんかないさ。損得勘定しか考えない狡い奴だよ」
「ふふ、嘘ばっかり。とっても優しい人ですよ。普段ぶっきらぼうなのは、単なる照れ隠しですから」
「おいミネバ、余計な事言うな。これやるから黙っててくれよ」

 エドウィンはミネバにブーケを投げ渡した。よく見ると、エドウィンの耳が赤くなっている。
 両親からもエドウィンは優しい奴だと教わった。言葉遣いが悪いせいで勘違いしてしまうが、エドウィンは人情味がある男だ。

「なんで優しいのに、恐い事を言うの? 皆から勘違いされちゃうよ?」
「いいんだよ、お前の親父が優しいのを担当してるから。あいつは優しすぎるから、隣に立つ奴は恐い位で丁度いいんだ」
「……お医者さんは、お父さんの事好き?」
「嫌いじゃあないさ。話ついでだ、ハローの昔話でもしてやろうか?」

 ハローの事を話す時、エドウィンはよく笑う。まるで自分の事を話すようで、とても楽しそうだ。

「長く話すのもあれだし、ぼちぼち帰るぞ」
「えー、もっとハロー兄のお話聞きたいー」
「馬鹿タレ、目的は果たしただろうが。それにミネバを長く連れまわしたくないんだよ」
「そんなに心配しなくても、大して影響ないですよ」
「医師としての責任があんの。それにこの辺だって魔物が出るから、居続けるのも危険なんだ……って、くそ。遅かったか」

 エドウィンは長銃を構えた。リナルドが身構えると、茂みから狼の魔物、ワーウルフが姿を現した。
 数は七頭。リナルドは息を呑み、ミコと抱き合った。

「怯えるんじゃないよ、こっちまで恐くなる。まぁ、出来る限りやってやるさ。隙を見て逃げろよ、お前ら」
「お医者さん……戦えるの?」
「専門外だ。それでもな、僕はやんなきゃならない。やるべき理由が出来たからな。いつまでも、ハローばっかに頼ってばかりじゃ、いけないんだ」
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