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153話 悩みの種

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 ナルガが目を覚ますと、薪割の音が聞こえてきた。ハローの日課だ。
 外に出れば、カコーンと小気味よい音と共に、ハローが薪を真っ二つにした。額の汗を拭い、ハローはナルガに手を振った。

「おはよう。気分はどう?」
「まずまずだ。少し肌寒くなってきたな」
「もうじき収穫祭だからね、それが終われば本格的に寒くなるよ」
「二回目の収穫祭か、気づけばここへ来てもう結構な時間が過ぎたのだな」

 魔王軍の敗北が遠い日のようで、ナルガは目を閉じた。
 心に余裕が出来たからか、時折考える事がある。逃がした部下達は今、何をしているのだろうか。
 エドウィンを通して残党の情報を追ってみたが、討伐数からして、まだ生き残りが居るはずだ。
 彼らもまた、新たな人生を歩めていればいいのだが。

「私は、運が良かったからな」
「どうしたの?」
「いや、かつての仲間を思い返していた。私はハローと出会い、こうして第二の生を進んでいる。彼らも同じように、生きているのだろうか。特に一人、かなり心配な奴が居るからな」
「誰だい?」

「ガンバと言う男だ。四天王時代、私の副官を務めていた。覚えていないか?」
「彼か。うん覚えてる、獣人の、犬耳が可愛い人だったね。何度か話したけど、真っ直ぐな印象だったな」
「ああ、根は悪い奴ではないのだが、少々過激と言うか、血気盛んな所があってな……」

「残党を集めて、この国に攻め込むかもしれない、ってわけか。でも現実には難しいだろうね。魔王軍の残党だけでは、とても戦力が足りない。特にオクトが居る、彼女とまともにぶつかって、勝てるわけがない」
「私を慕ってくれていたからな、変に暴走して、血迷った真似をしなければいいが……奴は個人的に、気にしていた男だからな」

「えっ? それって……えっとその、異性として見てた、とか? もしくは、付き合ってた、とか?」

 不安そうなハローに、ナルガは肩を竦めた。

「あくまで副官として好感を抱いていただけだ、私がガンバにそうした意識を持った事はないし、交際していた事もない。だから泣きそうな顔をするな」
「泣きそうなんて、そんな顔してた?」
「ああ、みっともないくらいにな。心配せずとも、私が恋愛感情を持つ男はお前以外に存在しない」
「そ、そう? 面と向かって言われると嬉しい反面、ちょっと恥ずかしいな」

 ハローは照れ照れと頭を掻いた。ナルガはハローの肩を叩き、

「子供が寝静まった後ならば、お前も甘えてきて構わん。なんなら二児目を儲けるのもやぶさかではないぞ」
「ちょ、ちょっと気が早すぎない? 俺の体が持つかな」

 そんな会話をしている内に、リナルドがもぞもぞと動き出した。
 さて、朝ごはんを作らねばならないな。
 ナルガは鼻歌交りに、準備に取り掛かった。
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