アラサーでクビになった魔王四天王ですが勇者に「結婚しよ」と告白され、溺愛されてるので今は幸せです

歩く、歩く。

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143話 魂の解放

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 今回のアルター化は、ハローの後悔によって発生した現象。アルターが暴れるのは、深い悲しみが根底にあるためだ。
 ならば、アルターの抱く悲しみを取り除いてやれば、アルター化を解除できるのではないか。それがハローの予想だった。

「お前の推理は、当たっていたな」
「相手が俺だったからだよ、俺の事は俺が一番理解してるからね。ナルガもありがとう、君が手助けしてくれたから、アルターを説得できたよ」
「こうした形でしか、ハローを助けられないからな。……もうアルターは、出てこないだろうか」
「うん、きっとね」

 ハローはリナルドを抱き上げた。

「リナルドを襲う奴は居なくなったよ、もう恐がらなくていい、自分を傷つけなくていいんだ」
「本当? 本当に、大丈夫?」
「勿論さ。俺の事を信じられない?」
「ううん、信じる、信じるよ」

 リナルドはハローを抱き返した。

「……リナルドが自分を傷つけてるのを見て、ずっと俺は、胸が苦しかった。大事な人が自分で自分を苦しめる姿を見て、とても辛い気持ちになったんだ。それで気づいたんだ、俺が俺を傷つけていたら、ナルガ達も悲しむんだって。リナルドが教えてくれなければ、俺はきっと、ナルガ達を不幸にしていたはずだ。アルターと対話して、昔の俺を受け入れられたのは、リナルドのおかげだ。改めてお礼を言うよ、俺の所に来てくれてありがとう」

「僕も……ありがとう。僕に生きてていいって、言ってくれて。僕、幸せになっていいんだよね。僕が幸せにならなくちゃ、お姉ちゃんも不幸に、なっちゃうんだものね」

 ハローは頷き、リナルドを肩車した。
 オクトは聖剣を握り、俯いた。

「シェリーさんを聖剣から解放する術は、今の所ありません。でも、もう少し調べてみます。アルターが解放されたのですから、他に方法があるかもしれませんから」
「お願いするよ。オクトにも助けられてばかりだね」

「いえいえいえ! むしろもっと頼っていただかないと!」
「僕も同意見だな。お前みたいな奴は一人にすると何しでかすか分からないからな、一人で抱えないで、僕らにも荷物を分けろよ。半分くらいなら、手伝ってやっていいからさ」

「エドウィン様は素直じゃないですね」
「昔からこんなだよ。さて、帰ろうか!」
「そうだな。気持ちの良い夜だ、無粋な話は終わりにしよう」

 ナルガは満月を見上げた。
 雲一つない、暗い夜空に、大きな月が明るく輝いていた。
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