アラサーでクビになった魔王四天王ですが勇者に「結婚しよ」と告白され、溺愛されてるので今は幸せです

歩く、歩く。

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138話 一筋の希望

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 ラコ村に戻ったハローは、エドウィン達にリナルドの件を話した。
 女性二人は祝福するも、エドウィンの表情は渋い。ガリガリと後頭部を掻き、ため息を吐いた。

「リナルドを家族にするのはいい、けど肝心のアルターはどうすんだよ。あいつを倒す手段なんかないんだぞ」
「俺も、倒す方法は分からない。でも一つだけ、倒す以外の方法があると思うんだ」
「言ってみろ」
「アルターと対話してみる」

「……お前な、それで痛い目に遭ったのを忘れたのか? 甘い考えのせいで僕らはマックとミレイユを失ったんだぞ」
「相手が話の通じないケダモノなら、俺も手段は選ばない。けどアルターには、僅かだけど人間性が残ってるんだ」
「確かに、昨夜の攻防でアルターは、先代にナイフを返しました。とても大事そうに……理性のない怪物ならば、あり得ない行動です」
「エドもアルターと向き合ったなら、分かるんじゃないか。あいつに言葉が通じるって」

 エドウィンは否定できなかった。アルターの行動には一定の基準がある、「ハローとリナルド以外を傷つけない」。現にアルターは、エドウィン達への攻撃を避け、人里への被害も考慮している。エドウィンとも、ちゃんとした会話をした。
 どれだけ憎悪に沈んでも、アルターにはハローとしての理性がちゃんと存在しているのだ。

「それに、アルター化の解決方法は多分、他にある。正直、確証はないけれど……アルターが生まれた理由を考えれば、対話であいつを止められるかもしれないんだ」
「……根拠を教えろ」

 ハローの推測を聞き、エドウィンは顎に手を当てた。
 アルターが出現したのは、ハローの激しい負の感情だ。相手がハローと同じ知性を持っているなら、確かに対話で解決できる可能性はある。

「だから、アルターと対話してみる。剣でぶつかり合ったって終わりはしない、俺自身が過去の俺と向き合わなければ終わらないんだ」
「だがよ、その前段階としてあいつを大人しくさせなきゃダメだろ。アルターがお前と話す姿勢がないんだから」
「私も、戦闘は避けられないと思います。先代はどうするおつもりなのですか?」
「勿論、最初から戦わずに解決できると思ってないさ。最初はアルターと殴り合って、勝つ。キグナス島の悲劇は、もう起こさない。マックとミレイユに誓って、必ず」

 力強い返事だった。こうなるとハローは止められない、エドウィンはかぶりを振った。

「こうなっては、ハロー様を信じるしかないかと。腹をくくりましょう」
「……あー! ったくさぁ、お前と居ると本っ当、面倒な事ばっかり起こるよなぁ」
「はは、ごめんよ」
「今さら謝るな。こっちはとっくに泥船ハロー号から降りるタイミング失ってんだよ、だから最後まで付き合ってやる」

 エドウィンはハローの胸に拳を押し付けた。

「僕の分もしっかりあいつと話してこい」
「分かった、約束する」
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