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2部
137話 答えなど最初から決まっていて
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ハローはリナルドとナルガを馬に乗せ、平原を走った。
ほとぼりが冷めたのか、二人はハローの腕の中で落ち着いていた。ハローはリナルドを撫で、
「結論を言うけど、俺はリナルドを殺さない」
「なんで? だって僕が死ねばハローは助かるんだよ?」
「それじゃ何の解決にもならないさ。リナルドだって、死にたくないだろ。むしろ俺に、助けを求めに来たんじゃないのか?」
リナルドとナルガは息を呑んだ。
「オクトの話じゃ、ここからずっと離れた遺跡からやってきたみたいじゃないか。それも重い剣を持ってさ。本気で死にたい奴はそんな事をしない、剣から出た直後にアルターに殺してもらってるよ」
「それは……」
「俺はどうも聖剣に、君のお姉さんに好かれてるみたいでね。未だに魔力で繋がっているんだ。それって、リナルドとも繋がってたって事だろ。聖剣と魔剣はリンクしてるんだしな。剣に居る時も、俺の事が伝わってたんだ。剣から飛び出して、アルターに襲われたリナルドがはるばるラコ村へ来たのは、それが理由だ。リナルドは無意識に俺を知っていた、居場所も知っていた。俺達の出会いは偶然じゃない、リナルドはずっと前から俺が好きで、俺に会いたくてやって来たんだ」
ハローは馬を止め、二人を下ろした。
「剣に居る時の事もね、思い出したんだ。僕とお姉ちゃんは、最初は一緒にいたの。でも、沢山の戦争があって、その中で僕は敵の兵隊に奪われて、離れ離れになっちゃったんだ。色んな人の手に渡ったんだけど、僕を持った人って、皆酷い死に方をしたんだ。誰かに恨まれたり、事故に遭ったり……最後に僕を持ってたのは、小さな国の人達だったけど、その人達も皆、病気で死んじゃった。お母さんはずっと、僕が生まれてからお父さんが死んで、お家も無くなって、町も燃えたって、言ってた。僕が生まれなければ、皆不幸にならなかったって、言ってた。剣になってからも、僕に関わった人達は酷い目に遭った。僕はお母さんの言う通り、酷い奴なんだ。僕なんか、死んじゃえばよかったんだ」
「でもそれは、本心じゃないだろ。本当は、君だって生きたい、幸せになりたいって思っているはずだ。だから助けてもらいたくって、俺の所へ来た。そうだろ?」
リナルドは躊躇って、頷いた。
「リナルドの気持ちはわかるよ、お姉さんが聖剣に封じられていて、自分だけ幸せになる事に、罪悪感が出るのは当然だ。でも、だからって自分を傷つけて、苦しむ姿を見て、お姉さんは喜ぶのかい?」
「ハローの言う通りだ。シェリーはお前が大事だから、体を張って守り続けた。大事な人が自ら不幸に向かうなど、彼女が望むわけがない。リナルドにも幸せを受ける資格はある、リナルドが幸せになって初めて、姉も救われるのではないか」
二人はリナルドと目線を合わせ、頷き合った。
「前々から、準備を続けてたんだ。本当は怪物騒動が終わった後、サプライズにしようと思ってたんだけど、今言う方がリナルドにとっていいはずだ」
「何? 何なの?」
「リナルド、俺達の子供にならないか?」
リナルドは目を見開いた。驚きすぎて、言葉が出てこない。
「必ず大事にする、君を今まで手にした人達よりも何百倍も大事にする。君のお姉さん以上にリナルドを、愛してみせる。だから、俺達の息子になってくれ」
「……いいの? 僕、幸せになって、いいの?」
「いいに決まっている。母である、私が言うのだ」
ナルガに抱きしめられ、リナルドは打ち震えた。
『幸せになって、リナルド』
シェリーが、背を押してくれた気がした。
自分の幸せを願う人達が居てくれる。自然と涙が流れ、ナルガを抱き返した。
「今日から俺達が、新しい両親だ。今後とも、よろしくな」
「……うん……うん……!」
初めて受ける両親の温もりは、リナルドにじんと伝わった。
ほとぼりが冷めたのか、二人はハローの腕の中で落ち着いていた。ハローはリナルドを撫で、
「結論を言うけど、俺はリナルドを殺さない」
「なんで? だって僕が死ねばハローは助かるんだよ?」
「それじゃ何の解決にもならないさ。リナルドだって、死にたくないだろ。むしろ俺に、助けを求めに来たんじゃないのか?」
リナルドとナルガは息を呑んだ。
「オクトの話じゃ、ここからずっと離れた遺跡からやってきたみたいじゃないか。それも重い剣を持ってさ。本気で死にたい奴はそんな事をしない、剣から出た直後にアルターに殺してもらってるよ」
「それは……」
「俺はどうも聖剣に、君のお姉さんに好かれてるみたいでね。未だに魔力で繋がっているんだ。それって、リナルドとも繋がってたって事だろ。聖剣と魔剣はリンクしてるんだしな。剣に居る時も、俺の事が伝わってたんだ。剣から飛び出して、アルターに襲われたリナルドがはるばるラコ村へ来たのは、それが理由だ。リナルドは無意識に俺を知っていた、居場所も知っていた。俺達の出会いは偶然じゃない、リナルドはずっと前から俺が好きで、俺に会いたくてやって来たんだ」
ハローは馬を止め、二人を下ろした。
「剣に居る時の事もね、思い出したんだ。僕とお姉ちゃんは、最初は一緒にいたの。でも、沢山の戦争があって、その中で僕は敵の兵隊に奪われて、離れ離れになっちゃったんだ。色んな人の手に渡ったんだけど、僕を持った人って、皆酷い死に方をしたんだ。誰かに恨まれたり、事故に遭ったり……最後に僕を持ってたのは、小さな国の人達だったけど、その人達も皆、病気で死んじゃった。お母さんはずっと、僕が生まれてからお父さんが死んで、お家も無くなって、町も燃えたって、言ってた。僕が生まれなければ、皆不幸にならなかったって、言ってた。剣になってからも、僕に関わった人達は酷い目に遭った。僕はお母さんの言う通り、酷い奴なんだ。僕なんか、死んじゃえばよかったんだ」
「でもそれは、本心じゃないだろ。本当は、君だって生きたい、幸せになりたいって思っているはずだ。だから助けてもらいたくって、俺の所へ来た。そうだろ?」
リナルドは躊躇って、頷いた。
「リナルドの気持ちはわかるよ、お姉さんが聖剣に封じられていて、自分だけ幸せになる事に、罪悪感が出るのは当然だ。でも、だからって自分を傷つけて、苦しむ姿を見て、お姉さんは喜ぶのかい?」
「ハローの言う通りだ。シェリーはお前が大事だから、体を張って守り続けた。大事な人が自ら不幸に向かうなど、彼女が望むわけがない。リナルドにも幸せを受ける資格はある、リナルドが幸せになって初めて、姉も救われるのではないか」
二人はリナルドと目線を合わせ、頷き合った。
「前々から、準備を続けてたんだ。本当は怪物騒動が終わった後、サプライズにしようと思ってたんだけど、今言う方がリナルドにとっていいはずだ」
「何? 何なの?」
「リナルド、俺達の子供にならないか?」
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「……いいの? 僕、幸せになって、いいの?」
「いいに決まっている。母である、私が言うのだ」
ナルガに抱きしめられ、リナルドは打ち震えた。
『幸せになって、リナルド』
シェリーが、背を押してくれた気がした。
自分の幸せを願う人達が居てくれる。自然と涙が流れ、ナルガを抱き返した。
「今日から俺達が、新しい両親だ。今後とも、よろしくな」
「……うん……うん……!」
初めて受ける両親の温もりは、リナルドにじんと伝わった。
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