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2部
123話 リナルドの痕跡
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同時刻、オクトはとある任務で、未開拓の樹海に足を運んでいた。
仕事をしている間も、オクトの頭から手記の内容が離れない。読み進める程、錬金術師の狂った所業が明らかになったからだ。
その者は武具の制作のため、おぞましい人体実験を繰り返していた。
各地から身寄りのない子供達を集め、幾人もの犠牲者を出しながら、剣の制作に没頭していた。手記には生々しく、気の触れたような文字で、当時の様子が綴られていた。
しかし、剣の制作は一向に上手くいかず、失敗を繰り返していた。成功の兆しが見えず、何度も諦めかけていた。
「でも、妙案を発見したのですよね」
手記の最後に、嬉々とした言葉が綴られていた。残念ながら、手記はその言葉で〆られていて、具体的な内容は分からない。分かるのは、絶対にろくでもない方法だという事のみ。
怪物について調べなきゃいけないのに、私は何をしているのだろう。
禁書庫を探っても、怪物と剣についての資料は見つからなかった。啖呵を切ったと言うのに、ハローに合わせる顔がない。
……けど、やっぱり読めば読む程、聖剣の存在が際立ちます。
錬金術師が造ろうとしていた剣の特徴が、あまりにも聖剣と酷似しているのだ。所有者の全能力を向上させ、無尽蔵の魔力を付与し、一騎当千の力を授ける夢のような武器。
オクトが持つ聖剣は、まさにその力を持っていた。かつてハローがキグナス島で見せたように、ひとたび持てば数万もの軍勢をたった一人で押し返す能力を発揮する。
やはり手記に書かれているのは、聖剣の事なのだろうか。物思いにふけっていたら、急に姿勢が崩れた。
馬が足場を踏み外したのだ。オクトは宙で態勢を直して着地し、馬も救った。
茂みで斜面が隠れていたようだ。オクトは仲間に無事を伝え、周囲を確認した。
「え……?」
木々の奥に、石造りの建物が見えた。草木をかき分けて奥に向かうと、小さな神殿を構えた遺跡を発見した。
劣化具合を見るに数百年前の物のようで、人が住んでいた形跡もあった。神殿へ向かうと、剣を納める台座が置かれていた。
その傍らには、砕けた刀身が転がっている。
「この刃は……!」
破損の状態から、数ヶ月以内に壊れた物だ。リナルドが持っていた剣に、酷似している。
オクトは更に神殿を調査した。いくつかの書物を発見し、その中に……例の手記があった。
「これは、偶然なのでしょうか」
調べないと詳細は分からない、でもここに、リナルドと怪物の秘密が隠されている可能性は非常に高い。
手記と刃を回収したオクトは、大急ぎで都へ戻った。
仕事をしている間も、オクトの頭から手記の内容が離れない。読み進める程、錬金術師の狂った所業が明らかになったからだ。
その者は武具の制作のため、おぞましい人体実験を繰り返していた。
各地から身寄りのない子供達を集め、幾人もの犠牲者を出しながら、剣の制作に没頭していた。手記には生々しく、気の触れたような文字で、当時の様子が綴られていた。
しかし、剣の制作は一向に上手くいかず、失敗を繰り返していた。成功の兆しが見えず、何度も諦めかけていた。
「でも、妙案を発見したのですよね」
手記の最後に、嬉々とした言葉が綴られていた。残念ながら、手記はその言葉で〆られていて、具体的な内容は分からない。分かるのは、絶対にろくでもない方法だという事のみ。
怪物について調べなきゃいけないのに、私は何をしているのだろう。
禁書庫を探っても、怪物と剣についての資料は見つからなかった。啖呵を切ったと言うのに、ハローに合わせる顔がない。
……けど、やっぱり読めば読む程、聖剣の存在が際立ちます。
錬金術師が造ろうとしていた剣の特徴が、あまりにも聖剣と酷似しているのだ。所有者の全能力を向上させ、無尽蔵の魔力を付与し、一騎当千の力を授ける夢のような武器。
オクトが持つ聖剣は、まさにその力を持っていた。かつてハローがキグナス島で見せたように、ひとたび持てば数万もの軍勢をたった一人で押し返す能力を発揮する。
やはり手記に書かれているのは、聖剣の事なのだろうか。物思いにふけっていたら、急に姿勢が崩れた。
馬が足場を踏み外したのだ。オクトは宙で態勢を直して着地し、馬も救った。
茂みで斜面が隠れていたようだ。オクトは仲間に無事を伝え、周囲を確認した。
「え……?」
木々の奥に、石造りの建物が見えた。草木をかき分けて奥に向かうと、小さな神殿を構えた遺跡を発見した。
劣化具合を見るに数百年前の物のようで、人が住んでいた形跡もあった。神殿へ向かうと、剣を納める台座が置かれていた。
その傍らには、砕けた刀身が転がっている。
「この刃は……!」
破損の状態から、数ヶ月以内に壊れた物だ。リナルドが持っていた剣に、酷似している。
オクトは更に神殿を調査した。いくつかの書物を発見し、その中に……例の手記があった。
「これは、偶然なのでしょうか」
調べないと詳細は分からない、でもここに、リナルドと怪物の秘密が隠されている可能性は非常に高い。
手記と刃を回収したオクトは、大急ぎで都へ戻った。
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