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2部

98話 エドウィンの憂鬱

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「こちらにいらしたのですね」

 ミネバは丘の上で黄昏ていたエドウィンを見つけ、隣に座った。
 彼の手に触れ、ハローの家に目をやると、

「遠目に様子を見ましたが、楽しそうに過ごされていましたよ」
「はん、別に心配なんざしてないよ。単に休憩してただけだし。あの鬼嫁にこき使われたからな、んなもんするもんか」
「あらまぁ」

「ま、思ったより穏やかに過ごしているようで、何よりさ。先に言っておく、オクトが居る間、僕はなるべく外出を控えるから。用があったら診療所に来てくれ」
「ナルガ様の一件でしたら、もうオクト様は許されてるかと思いますが」
「どうかな。あいつかなり根に持つからな、僕とは顔合わせたくないんじゃない」

 性悪同士で通じ合うのか、エドウィンはオクトの胸中を言い当てていた。
 エドウィンとしても、オクトを嵌めてしまった手前合わせる顔がない。滞在中は居留守を使うつもりでいた。

「オクト様とはいつ頃からお付き合いをされているのですか?」
「ハローが勇者になってすぐだな。なんというか、いつの間にか顔を出すようになってたと言うか……そもそもどうやって知り合ったんだか、覚えてないんだよ」

「公爵家のご令嬢ですよ? なのにきっかけを覚えていないんですか?」
「若い頃は今以上に人嫌いだったからなぁ、他人に全っっっ然興味なかったんだ」
「そんな力強く言う事ではないかと」
「確かに、振り返ってみると……ガキだったなぁ、それも超が付く悪ガキだ」

 もし当時の自分と会ったらぶん殴っている自信があった。

「オクトは昔からハローに懐いててな、十一歳の頃からあいつに求婚してんだよ。まぁハローは子供の遊びと思って流してたけど、オクトは今でも変わんないんだよな」
「ずっとハロー様を愛されているのですね」
「勇者ってのはどうも一途な奴が任されるらしい。だからかなぁ、なんか不安なんだよな」

 ハローが結婚したと聞いて、オクトが素直に認めるとは思えない。特にナルガは恋敵として、一方的に敵視していた相手だ。
 ハローの手前、表立った事はしないとは思うが……腹に一物抱えているのは確実だ。

「あいつには上手く隠してるけど、オクトって相当面倒くさい女なんだよな……」

 頼むからしりぬぐいをするような事は起こさないでくれ。切に願うエドウィンだった。
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