97 / 207
2部
97話 水面下の争い
しおりを挟む
村長や村人達への挨拶を済ませ、オクトはハローの家に向かった。
持ってきた土産は随分と喜んでくれたから、少しほっとした。田舎者が喜びそうな物なんて、未だによくわからないから。
「いつもありがとね、大荷物だし大変だろ?」
「いえ全然! それより、エドウィン氏は? 姿が見えませんでしたが」
「なんか急に姿をくらましてさ。どこ行ったのやら」
シンギでの一件があるから、気を遣って距離を置いたようだ。オクトとしてもエドウィンの顔は見たくなかったから助かった。
エドウィンよりもハローだ。やはり先代はいつ見ても凛々しい顔立ちをされている。
ハローと話そうと、オクトは必死に話題を探ろうとした。でもいざ話そうとすると、緊張も相まって声が出てこない。
先代と同じ空気を吸えている瞬間が尊すぎて、頭がぼやけてしまう。顔を赤らめ、オクトは手をもじもじとすり合わせた。
「昼餉は用意してある、遠慮せず食べろ」
夢心地のオクトを、ナルガの声が邪魔をした。
心の中では舌打ちしつつ、顔には出さずに頷いた。元四天王の作った料理か、あまり期待はできないな。
そう思っていたのも束の間、昼食は非常に美味しかった。
ハローから聞いたのか、オクトの好物が用意されていたのだ。特に食後のプティングなんかは絶品で、これ以上の品は食べた事がない。
「料理上手、なのですね」
「多少出来るだけだ。お抱えの料理人には負けるんじゃないか?」
「いえ……正直、彼らより上かもしれません」
悔しいが認めざるを得ない。ハローは誇らしげに微笑み、どこか自慢げだ。
ハローの姿にオクトはむっとしつつも、ナルガが本当に自分を歓迎してくれているのを感じていた。
シンギで語った話は嘘ではないようだ。そこは、素直に受け取らなければならない。
「こっちにはどれくらい居られるんだい?」
「四日間は時間を取っています。その間、村の人達と交流しようかと」
本音を言えばハローと四六時中居たいのだが、点数を稼ぐためにも村人達に愛想を振りまいておく必要がある。
ハローへの好感度は何があろうと死守せねば。ただ、それにはナルガとも仲良くする必要があるのだけど。
「片付け、手伝いますよ」
「構わん、客に仕事はさせられん」
「ご馳走になったのですから、せめてこのくらいはやらせてください」
「そうか、すまんな」
ナルガを手伝いながら、オクトはライバル心を燃やした。
出鼻は挫かれたけど、勝負はまだまだこれからだ。
持ってきた土産は随分と喜んでくれたから、少しほっとした。田舎者が喜びそうな物なんて、未だによくわからないから。
「いつもありがとね、大荷物だし大変だろ?」
「いえ全然! それより、エドウィン氏は? 姿が見えませんでしたが」
「なんか急に姿をくらましてさ。どこ行ったのやら」
シンギでの一件があるから、気を遣って距離を置いたようだ。オクトとしてもエドウィンの顔は見たくなかったから助かった。
エドウィンよりもハローだ。やはり先代はいつ見ても凛々しい顔立ちをされている。
ハローと話そうと、オクトは必死に話題を探ろうとした。でもいざ話そうとすると、緊張も相まって声が出てこない。
先代と同じ空気を吸えている瞬間が尊すぎて、頭がぼやけてしまう。顔を赤らめ、オクトは手をもじもじとすり合わせた。
「昼餉は用意してある、遠慮せず食べろ」
夢心地のオクトを、ナルガの声が邪魔をした。
心の中では舌打ちしつつ、顔には出さずに頷いた。元四天王の作った料理か、あまり期待はできないな。
そう思っていたのも束の間、昼食は非常に美味しかった。
ハローから聞いたのか、オクトの好物が用意されていたのだ。特に食後のプティングなんかは絶品で、これ以上の品は食べた事がない。
「料理上手、なのですね」
「多少出来るだけだ。お抱えの料理人には負けるんじゃないか?」
「いえ……正直、彼らより上かもしれません」
悔しいが認めざるを得ない。ハローは誇らしげに微笑み、どこか自慢げだ。
ハローの姿にオクトはむっとしつつも、ナルガが本当に自分を歓迎してくれているのを感じていた。
シンギで語った話は嘘ではないようだ。そこは、素直に受け取らなければならない。
「こっちにはどれくらい居られるんだい?」
「四日間は時間を取っています。その間、村の人達と交流しようかと」
本音を言えばハローと四六時中居たいのだが、点数を稼ぐためにも村人達に愛想を振りまいておく必要がある。
ハローへの好感度は何があろうと死守せねば。ただ、それにはナルガとも仲良くする必要があるのだけど。
「片付け、手伝いますよ」
「構わん、客に仕事はさせられん」
「ご馳走になったのですから、せめてこのくらいはやらせてください」
「そうか、すまんな」
ナルガを手伝いながら、オクトはライバル心を燃やした。
出鼻は挫かれたけど、勝負はまだまだこれからだ。
1
お気に入りに追加
131
あなたにおすすめの小説
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話
カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
チートなんてない。
日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。
自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。
魔法?生活魔法しか使えませんけど。
物作り?こんな田舎で何ができるんだ。
狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。
そんな僕も15歳。成人の年になる。
何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。
になればいいと思っています。
皆様の感想。いただけたら嬉しいです。
面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。
よろしくお願いします!
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。
続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【書籍化決定】ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる