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2部
96話 怨敵よ、歓迎するぞ
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ようやくラコ村が見えてきた。オクトは小手をかざし、目を輝かせた。
もうすぐハローと会える。でも行く前に、教会へ寄らなければ。
休暇中は教会で部屋を借りる予定である。ラコ村は勿論、周辺に宿などないから、不便なものだ。
馬を走らせ教会へ向かうと、司祭が出迎えてくれた。
「ご来訪を心よりお待ちしていました、勇者様」
「ありがとうございます、早速荷解きをしたいのですが」
「かしこまりました。ミネバ、ご案内を」
「はい。ご案内しますね」
ミネバはオクトの荷物を部屋へ運び、ほぅとため息を吐いた。
やはりオクトは綺麗な人だ。同性でも見惚れてしまうほどの美貌に、つい目を奪われてしまう。よくハローはナルガへの想いを貫けたものだ。
オクトは荷物を整理し、ラコ村へ持っていく土産を揃えると、ミネバに折箱を渡した。
「紅茶の茶葉です、教会の皆さんとどうぞ」
「まぁ、いつもすみません」
「それでは、ラコ村へ向かうので」
「ご一緒しますね」
道すがら、ミネバからラコ村の近況を聞いた。ハロー達は変わらず元気に過ごしているようで、オクトはほっとした。
「エドウィン氏と交際を。それはまた、苦労しそうですね」
「覚悟しています。惚れた弱味ですね」
「気持ちはわかります。あまり交際を薦められる男ではありませんが……まぁ、お幸せに」
ナルガの一件により、オクトはエドウィンに苦手感情を抱いてしまっている。ハローの大事な人だから手を出さないが、彼が居なかったら間違いなく潰している。
それより、ナルガか。
ハローに会うのは楽しみだが、奴が気がかりだ。魔王の一件を掘り返したり、言いがかりをつけてきたら、どう返すべきか。
普段なら首を跳ねてやるところだが、ハローの手前丁寧に受け止めなければならない。いちいち相手にするのも面倒だな。
そう思いながら、ラコ村へ到着した。入口にはハローとナルガが立っており、
「来たか、待っていたぞ」
オクトを一番に迎えてくれたのは、他でもないナルガだった。ナルガが手を差し出してきたので、反射的に握手を交わしてしまう。
彼女からは敵意を感じない。朗らかな笑顔をたたえていて、オクトを歓迎していた。
「息災のようでなによりだ、長旅で疲れただろう」
「それほどではありません。……意外ですね」
「過去を掘り返すと思っていたか? 生憎、そこまで子供ではない。約束通り、農婦アリスとしてもてなさせてもらうぞ」
「ほぅ……?」
なんだか、ナルガの雰囲気が変わったような気がする。敵対していた時に比べると、柔らかくなった印象だ。
「ともあれオクト、ラコ村へようこそ。ゆっくりしてくれよ」
ハローもにこやかにオクトと握手を交わした。肉刺だらけのハローの手を握ったオクトは、胸を高鳴らせた。
もうすぐハローと会える。でも行く前に、教会へ寄らなければ。
休暇中は教会で部屋を借りる予定である。ラコ村は勿論、周辺に宿などないから、不便なものだ。
馬を走らせ教会へ向かうと、司祭が出迎えてくれた。
「ご来訪を心よりお待ちしていました、勇者様」
「ありがとうございます、早速荷解きをしたいのですが」
「かしこまりました。ミネバ、ご案内を」
「はい。ご案内しますね」
ミネバはオクトの荷物を部屋へ運び、ほぅとため息を吐いた。
やはりオクトは綺麗な人だ。同性でも見惚れてしまうほどの美貌に、つい目を奪われてしまう。よくハローはナルガへの想いを貫けたものだ。
オクトは荷物を整理し、ラコ村へ持っていく土産を揃えると、ミネバに折箱を渡した。
「紅茶の茶葉です、教会の皆さんとどうぞ」
「まぁ、いつもすみません」
「それでは、ラコ村へ向かうので」
「ご一緒しますね」
道すがら、ミネバからラコ村の近況を聞いた。ハロー達は変わらず元気に過ごしているようで、オクトはほっとした。
「エドウィン氏と交際を。それはまた、苦労しそうですね」
「覚悟しています。惚れた弱味ですね」
「気持ちはわかります。あまり交際を薦められる男ではありませんが……まぁ、お幸せに」
ナルガの一件により、オクトはエドウィンに苦手感情を抱いてしまっている。ハローの大事な人だから手を出さないが、彼が居なかったら間違いなく潰している。
それより、ナルガか。
ハローに会うのは楽しみだが、奴が気がかりだ。魔王の一件を掘り返したり、言いがかりをつけてきたら、どう返すべきか。
普段なら首を跳ねてやるところだが、ハローの手前丁寧に受け止めなければならない。いちいち相手にするのも面倒だな。
そう思いながら、ラコ村へ到着した。入口にはハローとナルガが立っており、
「来たか、待っていたぞ」
オクトを一番に迎えてくれたのは、他でもないナルガだった。ナルガが手を差し出してきたので、反射的に握手を交わしてしまう。
彼女からは敵意を感じない。朗らかな笑顔をたたえていて、オクトを歓迎していた。
「息災のようでなによりだ、長旅で疲れただろう」
「それほどではありません。……意外ですね」
「過去を掘り返すと思っていたか? 生憎、そこまで子供ではない。約束通り、農婦アリスとしてもてなさせてもらうぞ」
「ほぅ……?」
なんだか、ナルガの雰囲気が変わったような気がする。敵対していた時に比べると、柔らかくなった印象だ。
「ともあれオクト、ラコ村へようこそ。ゆっくりしてくれよ」
ハローもにこやかにオクトと握手を交わした。肉刺だらけのハローの手を握ったオクトは、胸を高鳴らせた。
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