アラサーでクビになった魔王四天王ですが勇者に「結婚しよ」と告白され、溺愛されてるので今は幸せです

２部

８６話 井戸端会議

　この所、ナルガは機嫌が良かった。
　一度ハローと致した安心感からか、自分でも笑顔が増えた気がする。前よりもハローが好きになった自覚もあった。
　と言うより、ハローと肌を重ねる度、日増しに彼を愛しく思うようになっていた。

「近頃ナルガ様の雰囲気が変わったのは、そうした理由からですか」
「安心感と言うべきか。これで誰にも奴を取られない、そんな確信を得られたからな」

　慈善訪問に来たミネバに、ナルガはそう話した。
　ミネバは熱心にナルガの話を聞き、その度に「いいなぁ」とこぼしている。ナルガは胸中を察し、

「シスターが恋をした場合、立場はどうなるんだ？」
「私達は神に仕える身、いわば神と婚姻した者ですので、恋愛は禁忌とされています。なので他の誰かと婚姻を契るとなりますと、教会を辞めねばならないでしょうね」
「そうか。そうなれば、ミネバはラコ村の住民となるわけだな」
「なれればいいんですけど、エドウィン様のお気持ちがどうなのか」

「奴は責任感のある男だ、これまで共犯者としてきた女を、途中で捨てるような真似はするまい。仮にしたら私直々に折檻してやるがな」
「ふふ、お手柔らかにお願いしますね」

　ミネバは勤勉な娘で、ラコ村の農作業を手伝ったりもしている。村人達からの評判は上々だ。エドウィンに嫁げば、歓迎してくれるはずだ。

「ハローとエドウィンは、次の村へ向かった頃だろうか」
「一年に一度の健康診断ですからね、エドウィン様が一番忙しい時期です」
「文句を言いつつも、毎回丁寧に診ているからな。こちらとしても信頼できる」
「ですよね。……実は、エドウィン様と知り合ってから、看護の勉強もしていまして。時々教えていただいているんです」
「なんだ、準備がいいじゃないか」

　ミネバがラコ村の住民になる日も近そうだ。それにしても、自分がこうまで穏やかな生活に馴染めるなんて。過去のナルガが見たら驚きそうだ。

「剣を置く生活に、こうまで充足を感じるとはな」
「争いはない方がいいです。いがみ合うなんて、辛いだけですから」
「その通りだな。さて、今日は何を用意してやろうか。腹を空かせて帰ってくるだろうからな」
「私も、エドウィン様に夕餉を出せるようになりたいですね」
「そう遠くはなかろう」

　ナルガは微笑み、空を見上げた。
　ハロー、とっとと戻って来い。当然無事にな。