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2部
82話 躊躇いの夫
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冬の冷たさが抜け、段々と暖かさが広がってきた。ハローら木こりは森のある一角を整備していた。
雑草や灌木、落ちた枝葉を取り除く地拵えだ。もうじきラコ村では、大きなイベントを控えている。そのための準備だ。
ハローは斧と鉈を使い分け、地面を掃除していく。土は次第に柔らかく、ふかふかになっていった。
「うん、いい具合だな」
ハローは土に触れ、頷いた。これなら今年もいい木材が採れるだろう。
ナルガも頑張っているし、俺も頑張らないとな。
一通り作業を終えた所で、木こり達は一息つくことに。ハローは水筒を手にし、水を飲み下した。
「そういやよ、女房とはどうなったんだ」
ふとそんな会話が聞こえてきた。耳を傾けると、どうやら夫婦関係の話をしているようだ。
「どうにか許してくれたよ。しっかしよぉ、ちょっと家の手伝いさぼったくらいであんなに怒る事ぁないだろ?」
「普段から大事にしないから、不満が溜まってたんだろ。自業自得だ」
「かーっ! だったらお前だって、この間嫁の文句こぼしてたじゃねぇか。口煩いのなんだの」
「あれはまぁ、向こうが悪い」
妻に対する不満を言いあっているようだ。そしたら木こり達が集まり、話が広がり始める。
なんとなく嫌な予感がして、ハローは逃げようとした。
「ハローんところはどうなんだ? 丁度夏で一年だよな」
でも遅かった。同僚に捕まってしまい、ハローも妻の愚痴大会に参加させられてしまった。
「結婚生活が楽しいのもせいぜい最初の三ヶ月だ、ぼちぼち嫁に対する不満も溜まってくる頃じゃないか?」
「見てくれはいいもんだが、きつそうだしなぁハローの嫁は。一緒に居る時も素っ気ないし、ちゃんとやれてんのか?」
「夫婦仲はいいと思うけど。むしろ俺がナル……アリスに愛想尽かされないかが心配だよ。だって彼女って、料理上手だし、可愛いし、働き者だし、可愛いし、強いし、可愛いし。毎日ドキドキしながら暮らしてるよ」
何しろ、十年以上も片想いし続けた相手だ。ハローにしてみれば毎日の会話は、ナルガを口説いているような感覚である。
「ピュアだよな、ハローは。そのくせして、武器持つと恐ろしく強いってのがなぁ」
「そこらの冒険者以上に頼りになるよな。俺にも腕前を分けてもらいたいもんだ」
ラコ村の人々は、ハローが勇者だったと知らない。辺境ともなると情報が中々行き渡らず、たまに来る行商人を通してようやく一ヶ月前のニュースが届く程度だ。
おかげで変な色眼鏡がかからず、ハローにとっては暮らしやすい環境だ。
「んで、夜の方はどうなんだよ」
「夜? うちは早めに寝るようにしてるけど」
「違う違う。男と女、屋根の下で二人きり、ときたら当然やるだろ?」
「うちのカミさんも昼はきついけど夜になると可愛くてな、昨日だっていい声で鳴いてくれて危うく子供に気付かれるところ」
「まだしてないからっ!」
猥談にハローは赤らんだ。無論ハローとて男である、ナルガと行為に及ぶのは望むところ、なのだが……。
「いざその時になると、物凄く緊張しちゃってさ……手を出せないんだよ」
「子供かお前は……」
男達から呆れられ、ハローは「たはは」と苦笑いするしかなかった。
……まぁ、それだけじゃないんだけども。
雑草や灌木、落ちた枝葉を取り除く地拵えだ。もうじきラコ村では、大きなイベントを控えている。そのための準備だ。
ハローは斧と鉈を使い分け、地面を掃除していく。土は次第に柔らかく、ふかふかになっていった。
「うん、いい具合だな」
ハローは土に触れ、頷いた。これなら今年もいい木材が採れるだろう。
ナルガも頑張っているし、俺も頑張らないとな。
一通り作業を終えた所で、木こり達は一息つくことに。ハローは水筒を手にし、水を飲み下した。
「そういやよ、女房とはどうなったんだ」
ふとそんな会話が聞こえてきた。耳を傾けると、どうやら夫婦関係の話をしているようだ。
「どうにか許してくれたよ。しっかしよぉ、ちょっと家の手伝いさぼったくらいであんなに怒る事ぁないだろ?」
「普段から大事にしないから、不満が溜まってたんだろ。自業自得だ」
「かーっ! だったらお前だって、この間嫁の文句こぼしてたじゃねぇか。口煩いのなんだの」
「あれはまぁ、向こうが悪い」
妻に対する不満を言いあっているようだ。そしたら木こり達が集まり、話が広がり始める。
なんとなく嫌な予感がして、ハローは逃げようとした。
「ハローんところはどうなんだ? 丁度夏で一年だよな」
でも遅かった。同僚に捕まってしまい、ハローも妻の愚痴大会に参加させられてしまった。
「結婚生活が楽しいのもせいぜい最初の三ヶ月だ、ぼちぼち嫁に対する不満も溜まってくる頃じゃないか?」
「見てくれはいいもんだが、きつそうだしなぁハローの嫁は。一緒に居る時も素っ気ないし、ちゃんとやれてんのか?」
「夫婦仲はいいと思うけど。むしろ俺がナル……アリスに愛想尽かされないかが心配だよ。だって彼女って、料理上手だし、可愛いし、働き者だし、可愛いし、強いし、可愛いし。毎日ドキドキしながら暮らしてるよ」
何しろ、十年以上も片想いし続けた相手だ。ハローにしてみれば毎日の会話は、ナルガを口説いているような感覚である。
「ピュアだよな、ハローは。そのくせして、武器持つと恐ろしく強いってのがなぁ」
「そこらの冒険者以上に頼りになるよな。俺にも腕前を分けてもらいたいもんだ」
ラコ村の人々は、ハローが勇者だったと知らない。辺境ともなると情報が中々行き渡らず、たまに来る行商人を通してようやく一ヶ月前のニュースが届く程度だ。
おかげで変な色眼鏡がかからず、ハローにとっては暮らしやすい環境だ。
「んで、夜の方はどうなんだよ」
「夜? うちは早めに寝るようにしてるけど」
「違う違う。男と女、屋根の下で二人きり、ときたら当然やるだろ?」
「うちのカミさんも昼はきついけど夜になると可愛くてな、昨日だっていい声で鳴いてくれて危うく子供に気付かれるところ」
「まだしてないからっ!」
猥談にハローは赤らんだ。無論ハローとて男である、ナルガと行為に及ぶのは望むところ、なのだが……。
「いざその時になると、物凄く緊張しちゃってさ……手を出せないんだよ」
「子供かお前は……」
男達から呆れられ、ハローは「たはは」と苦笑いするしかなかった。
……まぁ、それだけじゃないんだけども。
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