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76話 落着
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後始末を付けた後、ハロー達は各々馬に乗り、帰路についていた。ハローは腕の中にナルガを抱えている。宝物を包むように、大切に。ナルガもハローにもたれていた。
ナルガが復活した理由を聞き、エドウィン達はとても驚いていた。
「女神のコイン。聖書で読んだ事があります。確か、とある一族が代々受け継いで所持していると」
「僕も伝承でしか聞いた事がないけど、魔王の一族が持ってたなんてな」
「今わの際に、父上と会ったよ。死してもなお、私をお守りくださった。これほどまでに、嬉しい事はない……」
ナルガは一筋の雫をこぼした。ウルチの凶行を防いだのは、奇跡ではない。魔王が娘に残した、深い親の愛情だった。
「オクトもありがとう、忙しいのに、ここまで駆けつけてくれるなんて」
「先代の危機とあらば当然です。処刑したはずのウルチが生きていたのならば、充分な理由となりますし」
「オクト様のおかげで、ラコ村は無事です。死者はおらず、野盗も全滅しました」
「つまり、ウルチの計画は全部パァ。僕らの勝ちってわけさ。ったく、やーっとあのクソ野郎から解放されたな」
エドウィンは肩を竦めた。
ハローとナルガは見つめ合い、身を寄せ合った。
大切な人の温もりが、傍にある。心が狂った者に奪われそうになったけど、ちゃんとまた、触れ合えた。それがとても、嬉しかった。
一瞬の死別が、二人の関係をより親密な物にしていた。
「おいこら、見せつけんなよ。こっちまで照れるだろ」
「いいだろ別に。ウルチのせいで、また無くしたかと思ったんだ」
「ま、そうだな。噛み締めても、罰は当たらないか」
「……そう、ですね」
オクトは辛そうに微笑んだ。エドウィンとミネバが寄り添い、肩を叩いた。
気が付けば、ラコ村が見えてきた。家は燃え尽きているが、また建てればいい。人間、生きている方が勝者なのだ。
「帰るぞハロー、私達の家にな」
「そうだね、帰ろう! それでまた、ナルガのご飯が食べたいや!」
皆で笑いながら、ラコ村へ戻っていく。
ハローとナルガの顔には、過去の地獄の面影が、消え去っていた。
ナルガが復活した理由を聞き、エドウィン達はとても驚いていた。
「女神のコイン。聖書で読んだ事があります。確か、とある一族が代々受け継いで所持していると」
「僕も伝承でしか聞いた事がないけど、魔王の一族が持ってたなんてな」
「今わの際に、父上と会ったよ。死してもなお、私をお守りくださった。これほどまでに、嬉しい事はない……」
ナルガは一筋の雫をこぼした。ウルチの凶行を防いだのは、奇跡ではない。魔王が娘に残した、深い親の愛情だった。
「オクトもありがとう、忙しいのに、ここまで駆けつけてくれるなんて」
「先代の危機とあらば当然です。処刑したはずのウルチが生きていたのならば、充分な理由となりますし」
「オクト様のおかげで、ラコ村は無事です。死者はおらず、野盗も全滅しました」
「つまり、ウルチの計画は全部パァ。僕らの勝ちってわけさ。ったく、やーっとあのクソ野郎から解放されたな」
エドウィンは肩を竦めた。
ハローとナルガは見つめ合い、身を寄せ合った。
大切な人の温もりが、傍にある。心が狂った者に奪われそうになったけど、ちゃんとまた、触れ合えた。それがとても、嬉しかった。
一瞬の死別が、二人の関係をより親密な物にしていた。
「おいこら、見せつけんなよ。こっちまで照れるだろ」
「いいだろ別に。ウルチのせいで、また無くしたかと思ったんだ」
「ま、そうだな。噛み締めても、罰は当たらないか」
「……そう、ですね」
オクトは辛そうに微笑んだ。エドウィンとミネバが寄り添い、肩を叩いた。
気が付けば、ラコ村が見えてきた。家は燃え尽きているが、また建てればいい。人間、生きている方が勝者なのだ。
「帰るぞハロー、私達の家にな」
「そうだね、帰ろう! それでまた、ナルガのご飯が食べたいや!」
皆で笑いながら、ラコ村へ戻っていく。
ハローとナルガの顔には、過去の地獄の面影が、消え去っていた。
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