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74話 起こるべくして起こった奇跡
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心臓を突かれ、ナルガは崩れ落ちた。
ハローの瞳に、愛しい人の亡骸が倒れる。またしても、大事な人を奪われた。ハローは涙を流し、咆哮を上げた。
怒りを言葉にならぬ声に乗せ、ナルガを殺したクソ野郎へ猛進する。ウルチは剣を捨てると、大笑いで長刀を構え迎え撃った。
理性を失い、ケダモノと化したハローには、ウルチなど相手にもならない。剣を壊しながら長刀を粉砕し、拳の一発で鎧を砕き、人外の強さを見せている。
……引き換えに、人の心を失いながら。
折れた剣を振るい、ナイフを突き立てる度、ハローの心は砕けていく。最愛のナルガを失った彼の心は崩れ、二度と戻らぬほどに壊れていく。
「くかかっ! そうだ、堕ちるがいいハロー! 我が血肉を贄に、貴様を再びキグナス島の地獄へ堕としてやる! 我を刻む度に蘇るだろう! アトラス兵を殺した感触が! 地獄の記憶が! このウルチの命を貪り、永久の闇へと下るがいい!」
ウルチを殺せば、ハローは絶望のまま生きる事を強いられる。どこにも向けられぬ憎しみを抱え込み、ナルガを救えなかった己を責め、失意に苦しみながら地獄を彷徨い続けるだろう。
それこそが、ウルチの最終目標。ハローに未来永劫続く呪いを植え付け、生き地獄に突き落とそうとしていた。
ハローはウルチを押し倒し、ナイフを振り上げた。マックの命を奪った刃で、ウルチを殺そうとしている。そこに最大の罠が仕掛けられているとも知らずに。
「さぁとくと首を獲れ。我の命、貴様にくれてやる! 我が死を持って、計画は完遂する!」
我の完全勝利だ! 勝ち逃げを確信し、ウルチは狂った笑みを浮かべた。
ハローは言われるがまま、ナイフを振り下ろそうとした。
「やめろ!」
不意に、何者かがハローに飛びつき、彼をウルチから引き離す。暴れ狂うハローの手からナイフを払い、彼女は彼の顔を掴んだ。
「私を見ろ! ハロー、私だ、ナルガだ! 死んでない、ちゃんと生きてる! 体温も、足もちゃんとある! ウルチを見るな、私を見ろ! ハロー!」
ハローへ必死に呼びかける女を見て、ウルチは仰天した。
殺したはずのナルガが、蘇っていたから。
ハローの瞳に、愛しい人の亡骸が倒れる。またしても、大事な人を奪われた。ハローは涙を流し、咆哮を上げた。
怒りを言葉にならぬ声に乗せ、ナルガを殺したクソ野郎へ猛進する。ウルチは剣を捨てると、大笑いで長刀を構え迎え撃った。
理性を失い、ケダモノと化したハローには、ウルチなど相手にもならない。剣を壊しながら長刀を粉砕し、拳の一発で鎧を砕き、人外の強さを見せている。
……引き換えに、人の心を失いながら。
折れた剣を振るい、ナイフを突き立てる度、ハローの心は砕けていく。最愛のナルガを失った彼の心は崩れ、二度と戻らぬほどに壊れていく。
「くかかっ! そうだ、堕ちるがいいハロー! 我が血肉を贄に、貴様を再びキグナス島の地獄へ堕としてやる! 我を刻む度に蘇るだろう! アトラス兵を殺した感触が! 地獄の記憶が! このウルチの命を貪り、永久の闇へと下るがいい!」
ウルチを殺せば、ハローは絶望のまま生きる事を強いられる。どこにも向けられぬ憎しみを抱え込み、ナルガを救えなかった己を責め、失意に苦しみながら地獄を彷徨い続けるだろう。
それこそが、ウルチの最終目標。ハローに未来永劫続く呪いを植え付け、生き地獄に突き落とそうとしていた。
ハローはウルチを押し倒し、ナイフを振り上げた。マックの命を奪った刃で、ウルチを殺そうとしている。そこに最大の罠が仕掛けられているとも知らずに。
「さぁとくと首を獲れ。我の命、貴様にくれてやる! 我が死を持って、計画は完遂する!」
我の完全勝利だ! 勝ち逃げを確信し、ウルチは狂った笑みを浮かべた。
ハローは言われるがまま、ナイフを振り下ろそうとした。
「やめろ!」
不意に、何者かがハローに飛びつき、彼をウルチから引き離す。暴れ狂うハローの手からナイフを払い、彼女は彼の顔を掴んだ。
「私を見ろ! ハロー、私だ、ナルガだ! 死んでない、ちゃんと生きてる! 体温も、足もちゃんとある! ウルチを見るな、私を見ろ! ハロー!」
ハローへ必死に呼びかける女を見て、ウルチは仰天した。
殺したはずのナルガが、蘇っていたから。
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