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64話 誘導策
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「あの馬鹿はこの辺りに居るんだよな!?」
「そのはずだ!」
ナルガはエドウィンと共に馬を駆っていた。騒ぎを聞きつけたエドウィンに事情を話し、共に現場へ向かっていた。
二人がハローの下へ駆け付ける頃には、事が終わっていた。ハローは折れた剣を握りしめ、立ち尽くしている。
ナルガが肩を揺らすと、ようやくハローは我に返った。
「平気か?」
「うん……俺はね。エドも、来てくれたんだ」
「ナルガから聞いてる。こいつら、ナルガを狙ってきたんだって?」
「明確に私を名指ししていた。私の正体を知っていると、叫んでな」
ナルガは口元に手を当てた。
「オクトが約束を破ったのか?」
「それはない、あいつにメリットが無いからな。ただの出まかせか、人違いじゃないか?」
「だが、人の口に戸は立てられぬ。シンギでの話が誰かの耳に入っていれば、可能性としてあり得るだろう」
「……まぁ、確かにな」
疑おうとすれば、いくらでも心当たりが上がってくる。エドウィンも否定しきれなかった。
「思いたくはないが……近頃の野盗騒ぎは、私を狙っての事ではないのか?」
「そんな馬鹿な! ありえないよ、絶対に!」
「ならばなぜこんな田舎の集落に敵が集中する? 「魔王四天王の居所が分かったから、首を狙いに来た」。この上ない程の理由となるだろう」
「ナルガの手配は取り下げられてるんだよ、そんな今さら捕まえたって、なんの益もないだろう!」
「落ち着け馬鹿、声がでかいんだよ」
エドウィンはハローの胸を叩いた。
「情報を整理してみろ、そもそもの発言が不自然すぎるだろ。本当にナルガの正体を知ってたら、直接「魔王四天王ナルガ」って呼ぶはずだ。言い方があまりに回りくどいっての」
「確かに……」
「ナルガの正体が割れたと仮定しても、なんで襲ってくるのが王国兵や冒険者じゃないんだ? 普通は野盗よかそっちが真っ先に来るだろ。それにナルガは「勇者が既に討伐した」って事実が広まってるんだ。その意味が分からない程、お前はバカじゃないだろ」
「確かに……勇者は絶大な権力を持ってる。王国兵や冒険者は勿論、野盗どもが騒いだ所で、オクトが一言「偽物だ」って言えば全部覆せてしまう」
「加えてオクトは公爵家の娘、二重の意味で発言力は凄まじいんだ。オクトの発言をひっくり返そうにも、ナルガの正体を実証する証拠は何も無い。この国のどこにも被害が出ていないんだから。ここに居るのは無害な農婦、アリスでしかないんだ」
「つまり、私の正体に気付いたとしても、手を出せないわけか」
エドウィンの推理は筋が通っていて、ナルガも納得できた。
敵だった頃から思っていたが、エドウィンは頼もしい奴だ。物事を俯瞰して見れるから、自分達の状況を正しく理解できる。
ではなぜ、連中はナルガの正体について言及したのか。「その発言を受けて最も嫌がるのは誰か」、「ナルガを奪われて苦しむのは誰か」。ここに注目すれば、おのずと狙いが透けてくる。
「なぁエド、それだと相手の狙いって、まさか……」
「ああ、そのまさかだ。真の狙いはナルガじゃない」
ナルガも同じ答えだった。敵が真に狙っているのは……。
「ハロー、お前だよ」
「そのはずだ!」
ナルガはエドウィンと共に馬を駆っていた。騒ぎを聞きつけたエドウィンに事情を話し、共に現場へ向かっていた。
二人がハローの下へ駆け付ける頃には、事が終わっていた。ハローは折れた剣を握りしめ、立ち尽くしている。
ナルガが肩を揺らすと、ようやくハローは我に返った。
「平気か?」
「うん……俺はね。エドも、来てくれたんだ」
「ナルガから聞いてる。こいつら、ナルガを狙ってきたんだって?」
「明確に私を名指ししていた。私の正体を知っていると、叫んでな」
ナルガは口元に手を当てた。
「オクトが約束を破ったのか?」
「それはない、あいつにメリットが無いからな。ただの出まかせか、人違いじゃないか?」
「だが、人の口に戸は立てられぬ。シンギでの話が誰かの耳に入っていれば、可能性としてあり得るだろう」
「……まぁ、確かにな」
疑おうとすれば、いくらでも心当たりが上がってくる。エドウィンも否定しきれなかった。
「思いたくはないが……近頃の野盗騒ぎは、私を狙っての事ではないのか?」
「そんな馬鹿な! ありえないよ、絶対に!」
「ならばなぜこんな田舎の集落に敵が集中する? 「魔王四天王の居所が分かったから、首を狙いに来た」。この上ない程の理由となるだろう」
「ナルガの手配は取り下げられてるんだよ、そんな今さら捕まえたって、なんの益もないだろう!」
「落ち着け馬鹿、声がでかいんだよ」
エドウィンはハローの胸を叩いた。
「情報を整理してみろ、そもそもの発言が不自然すぎるだろ。本当にナルガの正体を知ってたら、直接「魔王四天王ナルガ」って呼ぶはずだ。言い方があまりに回りくどいっての」
「確かに……」
「ナルガの正体が割れたと仮定しても、なんで襲ってくるのが王国兵や冒険者じゃないんだ? 普通は野盗よかそっちが真っ先に来るだろ。それにナルガは「勇者が既に討伐した」って事実が広まってるんだ。その意味が分からない程、お前はバカじゃないだろ」
「確かに……勇者は絶大な権力を持ってる。王国兵や冒険者は勿論、野盗どもが騒いだ所で、オクトが一言「偽物だ」って言えば全部覆せてしまう」
「加えてオクトは公爵家の娘、二重の意味で発言力は凄まじいんだ。オクトの発言をひっくり返そうにも、ナルガの正体を実証する証拠は何も無い。この国のどこにも被害が出ていないんだから。ここに居るのは無害な農婦、アリスでしかないんだ」
「つまり、私の正体に気付いたとしても、手を出せないわけか」
エドウィンの推理は筋が通っていて、ナルガも納得できた。
敵だった頃から思っていたが、エドウィンは頼もしい奴だ。物事を俯瞰して見れるから、自分達の状況を正しく理解できる。
ではなぜ、連中はナルガの正体について言及したのか。「その発言を受けて最も嫌がるのは誰か」、「ナルガを奪われて苦しむのは誰か」。ここに注目すれば、おのずと狙いが透けてくる。
「なぁエド、それだと相手の狙いって、まさか……」
「ああ、そのまさかだ。真の狙いはナルガじゃない」
ナルガも同じ答えだった。敵が真に狙っているのは……。
「ハロー、お前だよ」
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