アラサーでクビになった魔王四天王ですが勇者に「結婚しよ」と告白され、溺愛されてるので今は幸せです

歩く、歩く。

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39話 転換期

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 ハローが落ち着いた頃、エドウィンが訪ねてきた。ナルガが残ってくれるのを知ると、彼も胸をなでおろしていた。



「心配かけてごめん」

「全くだ、お前は何度僕の手を煩わせるんだ? 本当、放っておけないよ」



 憎まれ口を叩いた後、エドウィンはナルガを見やった。



「改めて、リスタートだな。お互い隠し事は無しだ、仲良くやってこうや」

「そうだな。しかし……お前の意外な一面を知れたな」

「何があったの?」

「言うなよ、絶対言うんじゃないぞ」

「さて、どうするかな」



 にやりとするナルガを、エドウィンは睨みつけた。



「んで、いつまで手を繋いでるんだ?」

「ハローが離さないだけだ」



 ナルガが左手を上げると、ハローの手がしっかり握られていた。



「なんか名残惜しくてさ、離したくないんだ」

「時と場合は考えろ」

「でも受け入れてくれるんだね」



「甘えろと言った手前、断るわけにはいくまい。だが努々忘れるな、あくまで我々の関係は仮だ。正式に婚姻を結んだわけではないのだから、調子に乗るんじゃないぞ」

「気を付けるよ」



 エドウィンは頬をひくつかせた。ちょっと目を離した隙にむずかゆい事になってないかこの二人。

 けどまぁ、ハローが幸せそうだし、いいか。



「あ、あの……お取込み中失礼します……!」



 ノックに気付いて扉へ向かうと、ミネバがやってきた。

 随分息を切らしている。大急ぎで駆けつけてきたようだ。



「何かあったのか?」

「先ほど、都からの知らせがありまして……お二人のお耳に入れておくべきかと」

「ナルガの所在に気付かれたのか?」

「いえ、違うんです……何と言いますか、その……」



 ミネバは言い淀んだ後、



「……ウルチ・マサガネの死刑が、執行されたそうです」



 ハローとエドウィンの表情が強張った。



「死んだのか、ウルチが……」

「はっ、やっとかよ」

「アトラス軍の総大将だったか」

「うん……仕留めそこなって逃げられた所を、王国軍が捕まえたんだ」



 ハローにとって、ウルチは地獄の象徴だ。

 死んだと聞いて湧き上がるのは、虚しさだった。あんな奴のために苦しんでいたのかと思うと、悔しさすら感じてしまう。



「ま、ようやく十年の清算が出来たと思うとしよう。もうマサガネを思い出す必要もない。吉報だよ」

「……そうだね」



 ナルガと進展して、かつての敵も居なくなった。ハローの憂いが全部消えたのだ。

 今はそれを、受け入れるとしよう。
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