39 / 207
1部
39話 転換期
しおりを挟む
ハローが落ち着いた頃、エドウィンが訪ねてきた。ナルガが残ってくれるのを知ると、彼も胸をなでおろしていた。
「心配かけてごめん」
「全くだ、お前は何度僕の手を煩わせるんだ? 本当、放っておけないよ」
憎まれ口を叩いた後、エドウィンはナルガを見やった。
「改めて、リスタートだな。お互い隠し事は無しだ、仲良くやってこうや」
「そうだな。しかし……お前の意外な一面を知れたな」
「何があったの?」
「言うなよ、絶対言うんじゃないぞ」
「さて、どうするかな」
にやりとするナルガを、エドウィンは睨みつけた。
「んで、いつまで手を繋いでるんだ?」
「ハローが離さないだけだ」
ナルガが左手を上げると、ハローの手がしっかり握られていた。
「なんか名残惜しくてさ、離したくないんだ」
「時と場合は考えろ」
「でも受け入れてくれるんだね」
「甘えろと言った手前、断るわけにはいくまい。だが努々忘れるな、あくまで我々の関係は仮だ。正式に婚姻を結んだわけではないのだから、調子に乗るんじゃないぞ」
「気を付けるよ」
エドウィンは頬をひくつかせた。ちょっと目を離した隙にむずかゆい事になってないかこの二人。
けどまぁ、ハローが幸せそうだし、いいか。
「あ、あの……お取込み中失礼します……!」
ノックに気付いて扉へ向かうと、ミネバがやってきた。
随分息を切らしている。大急ぎで駆けつけてきたようだ。
「何かあったのか?」
「先ほど、都からの知らせがありまして……お二人のお耳に入れておくべきかと」
「ナルガの所在に気付かれたのか?」
「いえ、違うんです……何と言いますか、その……」
ミネバは言い淀んだ後、
「……ウルチ・マサガネの死刑が、執行されたそうです」
ハローとエドウィンの表情が強張った。
「死んだのか、ウルチが……」
「はっ、やっとかよ」
「アトラス軍の総大将だったか」
「うん……仕留めそこなって逃げられた所を、王国軍が捕まえたんだ」
ハローにとって、ウルチは地獄の象徴だ。
死んだと聞いて湧き上がるのは、虚しさだった。あんな奴のために苦しんでいたのかと思うと、悔しさすら感じてしまう。
「ま、ようやく十年の清算が出来たと思うとしよう。もうマサガネを思い出す必要もない。吉報だよ」
「……そうだね」
ナルガと進展して、かつての敵も居なくなった。ハローの憂いが全部消えたのだ。
今はそれを、受け入れるとしよう。
「心配かけてごめん」
「全くだ、お前は何度僕の手を煩わせるんだ? 本当、放っておけないよ」
憎まれ口を叩いた後、エドウィンはナルガを見やった。
「改めて、リスタートだな。お互い隠し事は無しだ、仲良くやってこうや」
「そうだな。しかし……お前の意外な一面を知れたな」
「何があったの?」
「言うなよ、絶対言うんじゃないぞ」
「さて、どうするかな」
にやりとするナルガを、エドウィンは睨みつけた。
「んで、いつまで手を繋いでるんだ?」
「ハローが離さないだけだ」
ナルガが左手を上げると、ハローの手がしっかり握られていた。
「なんか名残惜しくてさ、離したくないんだ」
「時と場合は考えろ」
「でも受け入れてくれるんだね」
「甘えろと言った手前、断るわけにはいくまい。だが努々忘れるな、あくまで我々の関係は仮だ。正式に婚姻を結んだわけではないのだから、調子に乗るんじゃないぞ」
「気を付けるよ」
エドウィンは頬をひくつかせた。ちょっと目を離した隙にむずかゆい事になってないかこの二人。
けどまぁ、ハローが幸せそうだし、いいか。
「あ、あの……お取込み中失礼します……!」
ノックに気付いて扉へ向かうと、ミネバがやってきた。
随分息を切らしている。大急ぎで駆けつけてきたようだ。
「何かあったのか?」
「先ほど、都からの知らせがありまして……お二人のお耳に入れておくべきかと」
「ナルガの所在に気付かれたのか?」
「いえ、違うんです……何と言いますか、その……」
ミネバは言い淀んだ後、
「……ウルチ・マサガネの死刑が、執行されたそうです」
ハローとエドウィンの表情が強張った。
「死んだのか、ウルチが……」
「はっ、やっとかよ」
「アトラス軍の総大将だったか」
「うん……仕留めそこなって逃げられた所を、王国軍が捕まえたんだ」
ハローにとって、ウルチは地獄の象徴だ。
死んだと聞いて湧き上がるのは、虚しさだった。あんな奴のために苦しんでいたのかと思うと、悔しさすら感じてしまう。
「ま、ようやく十年の清算が出来たと思うとしよう。もうマサガネを思い出す必要もない。吉報だよ」
「……そうだね」
ナルガと進展して、かつての敵も居なくなった。ハローの憂いが全部消えたのだ。
今はそれを、受け入れるとしよう。
0
お気に入りに追加
131
あなたにおすすめの小説
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話
カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
チートなんてない。
日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。
自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。
魔法?生活魔法しか使えませんけど。
物作り?こんな田舎で何ができるんだ。
狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。
そんな僕も15歳。成人の年になる。
何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。
になればいいと思っています。
皆様の感想。いただけたら嬉しいです。
面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。
よろしくお願いします!
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。
続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる