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23話 薄れゆく孤独

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 子供達にねだられて、ナルガは絵本を読み聞かせていた。
 ナルガは村中の子供達に懐かれていた。いつも「遊んで」と手を引かれては、広場で彼らの相手をさせられている。
 絵本を読み終えると、わっと歓声と拍手があがった。

「ねぇねぇ、これも読んで!」
「いいぞ。これまた、ボロボロだな」

 渡される本はどれも擦り切れていた。何度も回し読みをしているのだろう。
 求められるがまま、絵本を読み続けていたら、とうとう親達からストップがかかった。

「アリスに迷惑かけないの! すまないね、子供達の面倒押し付けて」
「お気になさらずに。また読んでほしければ声をかけるといい」
『はーい!』

 無邪気な返事だ。子供の相手は苦ではない、むしろナルガは楽しんでいた。
 子供と居ると、不思議と心が安らぐ。帰っていく子供達を見送っていると、親の一人がぽんと手を叩いた。

「そうそう、明日はお楽しみの日だからね。遅れずに来るんだよ」
「何かあるのですか」
「おや、ハローから聞いてないのかい? 入浴日だよ」

 この世界では、貴族や王族と言った上流階級でもない限り、毎日入浴は出来ない。そのため庶民にとって入浴は最大の娯楽なのだ。
 この近辺の村は月に一回、教会からの援助によって無料で風呂屋を利用できる。村人達は毎月の入浴日を心待ちにしているのだ。

 入浴をするのは、どれくらいぶりだろうか。

「あんた達は午後のグループだね。村を空にするわけにはいかないから、午前と午後に分かれて入っているんだ」
「それとバケットも忘れちゃだめだよ、帰りが大変だからね」
「なぜバケットを」
「ああ知らないのか、なら当日のお楽しみとしておこうかな。とにかくでっかいの持ってくるんだよ」

 ナルガは首を傾げた。ハローに聞けばいいのだろうが、生憎彼は出払っている。
 なんでも、近隣の村に出没している野盗を追い払いに向かうとの事だ。ハローが居ないと、何となく寂しくなる。
 傍に居てほしい。ナルガは無自覚にハローを渇望していた。ハローと過ごす時間は、ナルガにとってかけがえのない物になりつつあった。

「早く、帰ってこい」

 夕暮れ前には帰ってくるそうだが、それまでがとても長く感じた。
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