アラサーでクビになった魔王四天王ですが勇者に「結婚しよ」と告白され、溺愛されてるので今は幸せです

歩く、歩く。

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18話 作り笑い

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 ナルガはハローと共に、挨拶回りへ向かった。

 突然ハローが結婚したと聞いて、村人達は大層驚いていた。しかも相手は急に現れた美女とあって、訝しい視線を向けられた。



「なぁハロー、エドから話は聞いているがよ、そんな別嬪さん、どこから連れて来たんだ」

「元冒険者だよ。前にシンギで会ってから、手紙でやり取りしててさ。怪我で仕事が出来なくなったから、それじゃ一緒に暮らさないかって口説いたんだ」



 ラコ村の農産物や木材は、ハローとエドウィンが定期的に市場へ売りに出している。ナルガはそこで会った冒険者アリスと言う体で、エドウィンが広めていた。

 とはいえ、いきなり入ってきた余所者に対し、村人が好意を示すわけがない。皆ナルガを警戒し、ひそひそと陰口を叩いていた。



 ナルガは気にも留めなかった。どの道、心身が癒えたら出ていくつもりだ。周りから何を言われようがどうでもいい。とはいえハローの体面もあるし、いつまでも不愛想と言うわけにはいかない。



「アリスと申します、不束者ですが、本日よりお世話になります」



 ぺこりと頭を下げ、村人一人一人に丁寧な挨拶をしていく。こわばった頬を無理やり吊り上げ、出来る限り笑顔を浮かべた。

 作り笑いはとても疲れるが、これも生きるため。ナルガは自分に言い聞かせた。



「そんな足で畑仕事は出来るのかい? 旦那の世話だけしてりゃいいわけじゃないんだからね」

「心得ています。仕事を覚えたいので、何なりとお申し付けください」

「それじゃあ早速手伝ってもらおうか。今は麦の収穫時期なんだ、人手が一人でも欲しいんでね」



 村の女達はナルガの腕を引っ張った。ハローは止めようとしたが、ナルガは首を振った。



「信用を得るならば、行動を見せた方がいいだろう。幸い、体は動くようになった。手伝いくらいならできる」

「でも、左足……」

「この足とは三年の付き合いだ、案ずるな」



 ナルガは何度か義足で地面を踏むと、女達について行った。
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