アラサーでクビになった魔王四天王ですが勇者に「結婚しよ」と告白され、溺愛されてるので今は幸せです

１部

９話 闇夜の惨劇

　日付が変わる頃、森の中に松明の明りが灯っていた。
　十人の野盗達が武器を握り、マクミード教会へ向かっている。この夜襲のために、念入りに下見をしてきた。襲撃しやすい地形、逃走ルート、そして大量の食糧が入った、教会の備蓄庫。

「お前ら、今日は宴会だ。遠慮なくヤッていいぞ。シスターの奴らは男を知らないからな、たっぷり満足させてやろうじゃねぇか」

　野盗の頭領は手下達に伝え、下品な笑いを見せた。
　その様子を、ハローは木の上に潜み、眺めていた。
　完全に油断している。ハローはナイフを抜き、集団の後ろに目を付けた。

　三人が殿として、集団から距離を取った。刹那、ハローは吹き矢を放った。

　首筋に刺さるなり、男が絶命した。即効性の致死毒だ。二人が気付く前に音もなく飛び降り、男にナイフを突き立てた。
　肩口から心臓を一突きし、続けざま、もう一人の喉を切り裂く。死骸から剣を奪い、ハローは頭領に向かって走った。

　頭領が気付いた頃には既に遅い。ハローは雄たけびを上げて、力任せに頭領を叩き切った。膂力に耐えきれず、剣がへし折れる。
　突然の惨劇に手下達は混乱し、中には腰を抜かす者も居た。

「あと、ろくにん」

　ハローは目が合った一人を切り伏せた。もう一人の服に爆弾を押し込んで蹴り飛ばし、ぶつけた奴と二人同時に爆発。辛うじて息が残っていたから、折れた剣を何度も叩きつけてトドメを刺した。

「ひ、ひでぇ……そこまでするかよ……！」
「こいつ……やばすぎる……な、なんなんだよ、お前……」

　残った三人は腰が抜けて、失禁する者も居た。
　戦意を失った奴らを前にハローは、折れた剣を上段に構え、にじり寄った。

「みなごろしにしなくちゃ。ひとりでものこしたら、みんなしんじゃうから。みんなをまもるには、ころさなくちゃ、ころさなくちゃ、ころさなくちゃころさなくちゃころさなくちゃ」

　ハローから、途方もない殺意と怒気があふれ出る。無表情で、無感情に呟きながら、濁った眼に野盗達を映していた。
　あまりの威圧感に、野盗達はたまらず逃げ出した。その背に、ハローは剣を振り下ろした。
　一人、また一人と命を断ち、最後の一人は剣を投げつけて足を折り、逃げられないようにした。
　ナイフを握りしめ、ハローは男を踏みつけた。

「た、助けてくれ……！　お願いだ……い、命だけは、命だけはぁぁぁぁ！」

　号泣し、必死に命乞いしてくる男を無視し、ハローはナイフを突き立てた。