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85話 遊ばれてます
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落ち込んだリサちゃんもどうにか立ち直ったし、早速家捜しといきますか。
エルマーの奴はこの拠点を捨てて結構経っているようで、資料の一番新しい日付は二年前で止まっている。それ以来アイカはたった一人でここに住んでいるんだな。
「しかしこいつは……感心だな。俺様が作った理論をこうまで展開するとは。どんなルートを使ったか知らないが、俺様の考えた理論を独自にかき集めてやがる」
「あんた、マジでぶっ飛んだ物ばっかり考えたわね。正直、職人として舌を巻く理論ばっかりだわ。それを一人で解析し、実現しているエルマーもすごいけど」
隣でリサちゃんも驚きっぱなしだ。元々俺様の理論が優れているのを加味しても、相当な頭脳を誇るみたいだな。
できる事なら酒場で腰据えて、理論的な話でもしてみたいぜ。エルマーの奴中々話せそうなやつじゃないか。
「どうだハワード、使えそうな資料はあったか?」
「使えるものばかりだぜ。エルマーの奴、相当な努力家だ。んで、なんで俺様の背におぶさってるわけ?」
「大きくなってもハワードの方が背が高いからな、視線が高くなって気分がいいんだ」
デカアイカになっても中身はチビのままだ。グラマラス褐色美女の姿で俺様に懐いてきやがる。
ちくしょー、属性特盛美女だってのに二十歳未満なのが悔しいぜ。背中に巨大なメガフレアが二つも押し付けられてるってのに、手が出せやしねぇ。
「言っとくけど、アイカに欲情したら憲兵に突き出すからね。見た目はあれだけど五歳児相手は犯罪よ」
「安心して頂戴な、俺様守備範囲外だと下半身反応しないのよ」
「ウソつけ……マジだ、テント出来てない」
「テントとは? なんでハワードの股間を見るんだ?」
「純朴とは恐ろしいもんだねぇ、十五年後に教えてあげるからスルーしときなさい」
「はーい」
無防備すぎるわこのゴーレム娘。エルマーの野郎、どんだけ罪づくりな奴を生み出したんだ。悔しすぎて俺ちゃんポンポンペインペインだぜ。
「これは……ハワード、こちらを」
「んー? エルマー秘蔵のBL写真集でもあったのかい?」
「ハワードのブロマイドなら欲しいですが違います。これが隅に埋もれていました」
アマンダたんが持ってきたのは、鍵付きの箱だ。埃をかぶって、随分古そうだな。
鍵がかかっているが、問題ない。俺様ピッキングのプロなんでね、針金一つではい開錠。
「壊せばいいじゃん」
「スキルを見せびらかしたかったのさ。さてさて、中身はなんでっしゃろな」
つっても、大したものは入ってない。分厚い本と、壊れた懐中時計の二つだけ。時計の裏には「V・W」とイニシャルが彫られている。
「こちらの本は、日記のようですね」
「diary? それってRealy? アマンダたんマジfairy♪」
「韻を踏むな韻を」
俺様のナイスラップはさておいて、几帳面な奴だ。遠慮なく読ませてもらうぜ。
日記の中は、サンドヴィレッジに来てからの研究経過が書かれていた。アイカのな。
人工加護製造のためにアイカを造った、出来なかったからこうやって改良した。その繰り返しでね、根っからの研究者気質みたいだぜ。
有用な情報は得られねぇか。そう思ったとき。
「この一文……何々? 「この研究が完成し、ハワード・ロックになれた時。私はボルケーノカントリーへ戻る事が出来る。あの忌々しくも美しい思い出が残る故郷へ」だとさ」
「ボルケーノカントリー!? あいつそこ出身なの!?」
「リサさん、ご存じなのですか?」
「ご存じもなにも、ガーベラの北方にある職人の聖地よ。そこって特殊金属がたくさん採れる場所でね、鋳造するために特殊な技術が使われてるのよ。前から一度行ってみたかった場所なのよねー」
おー、リサちゃんの目が輝いているなぁ。しかし、ボルケーノカントリー……炎の聖獣のおひざ元か。
「そんな場所にいたから、人工加護に聖獣の力を使おうなんて思いついたのかもな」
「ああ、エルマーはそう言っていたぞ」
「おおうアイカ、胸押し付けるのはやめてくれ。手を出せないからもう口惜しすぎるんだよ」
「男はこうすると喜ぶってエルマーが言っていたんだがな」
「あいつやっぱ、どっかしらファンキーな奴だよな。お前さんと一緒の時、あいつはどんな風に接してたんだ」
「特に変わった事はなかったがな。一緒に寝食を共にし、ミトラス討伐の計画を立てていた。最終的にアイカが完成できず捨てられたが……エルマーはそれまで、親身に接してくれていたよ」
「へぇ」
アイカの様子からして、エルマーを今でも慕っているようだな。
日記の中にもアイカへの恨みつらみは書いてなかった、むしろ娘を育てるような感覚で、愛情深い台詞がいくつも書かれていたよ。
たとえ演技だとしても、ガキを育てる気概はあったらしい。
「ただ、ちょっとおかしなところはあったかな」
「教えてくれ」
「時々、黒い本を読んでいたんだ。触ろうとしたら凄く怒られたし、本を読んでる間、ずっと独り言を言ってて、それはおかしかったかな」
「黒い本か……」
「けど、そんなのはどうでもいい。アイカは、エルマーにもう一度興味を持ってもらえれば、それでいい」
「お前はまだ、エルマーに振り向いてもらいたいのか」
「そんな事はない。ただ、エルマーが出来なかった事をアイカが出来れば、見返せると思っただけだ」
未練たらたらじゃねぇか。それに完成させるためにミトラスに愚直に挑むだけって芸がなさすぎるだろう。
ミトラスを倒す事で人工加護の完成に近づくのか? 意味がわからねぇな。
「! この気配は……!」
アイカは俺様から降りて、外へ飛び出した。どうやらまたミトラスがおいでなすったようだな。
「ねぇハワード、アイカ危なくない?」
「危ないだろうな。しゃあねぇ、骨でも拾いに行くか」
全く、落ち着きのないお姫さまだ。
◇◇◇
現場へ向かうと、ミトラスの群れがまたサンドヴィレッジの近くに現れていた。
アイカは槍を握りしめ、ミトラスへ立ち向かっている。さっきと違って魔力をフルチャージしているからか、やりたい放題暴れまわってるなぁ。
「雑魚は邪魔だ、どけ!」
周囲にいる小型ミトラスは槍の一突きで吹っ飛んでいく。加護は無いようだが、素の力が強いんだろうな。単純な腕力だけでミトラスを倒していた。
やられたミトラスは光となって消えていく。それに違和感を覚えつつ、アイカを見守っているとだ。
「今日こそお前を倒す、勝負だミトラス!」
―きゅ~?
ミトラスのヌシに果敢に挑みかかり、槍を突き立てていく。だがミトラスは全くびくともしておらず、それどころかだ。
―きゅっきゅっきゅーきゅきゅっきゅー♪
アイカをのっけて楽しげにジャンプし始めたじゃありませんか~いや~可愛らしいですね~。いやー癒されるわー。
「……あれ、遊ばれてるよね?」
「遊ばれてますね」
「砂上のサーフィンか、いいねぇ。俺様も参加しようかしら」
しかしあれだ、ミトラスの違和感がまた強くなったな。
槍刺されてるってのに、怒るどころか上機嫌。アイカを乗っけて大喜び。仲間を倒されているにも関わらず、アイカを大歓迎してやがる。
なーんか、引っかかるな。
「こ、のっ! なめるなぁ!」
―きゅっきゅきゅー♪
ミトラスはより大きくジャンプして、砂中にもぐりこんだ。アイカは力及ばず弾かれて、砂の上に寝転んだ。
んでミトラスは鼻先にアイカをひっかけると、そのまま直立してムーンウォーク。イルカショーみたくアイカを鼻にのっけて、楽し気に芸を披露していた。
「ミトラスさぁ……楽しんでない?」
「楽しんでますね。私も乗ってみたいです」
「シャチは頭いいからなぁ、頼めばやってくれるかもよ」
「こらミトラス! 真剣に戦え! アイカは、お前を倒しに来ているんだぞ!」
―きゅきゅー?
「そんなつぶらな瞳で見るな! 戦う気が失せるだろうが!」
―きゅきゅーきゅーっ
「くそーっ、屈辱だー!」
結局さんざんっぱら遊ばれた後、アイカはミトラスに運ばれてサンドヴィレッジに戻される。すっかり疲れ切って、大の字に倒れたまま動けなくなっていた。
「はいおかえり。感想は?」
「……最悪だ」
「こっちはシャチのショーが見れて楽しかったぜ」
―きゅきゅーっ!
ミトラスは「またねー」とでも言わんばかりに砂を吹いた。んでもってサービスのつもりなのか、俺様達に頭を差し出し、撫でろと体を揺らしてくる。
「触っていいの? あ、手触りさらさらー♪ 砂みたいで気持ちいいなぁ」
「それにぷにぷにしてます。水風船みたいで飽きのこない感触ですね」
「サービスありがとな、お礼に一杯なでなでしてやる」
―きゅきゅー♪
この手触り、嘘くさいな……やっぱこいつは……。
「じゃ、またねー」
―きゅー!
ハワードガールズとすっかり仲良くなっちゃって、彼女らに見送られるままミトラスは去っていく。んでアイカは負けたショックで動かなくなってら。
「……もうお嫁にいけない」
「結婚相談所に行ってこい」
けど立ち上がれないようだし、しょうがねぇ、おぶってやるか。
◇◇◇
ハワードは順調にアイカと交流を重ねているようだ。
高台から見下ろしていたエルマーは、黒の福音書を手に取りつぶやいた。
「ええ、そうします。アイカを利用してミトラスの……はい、はい……」
福音書に向かって独り言を言い続け、エルマーは虚ろな目で頷いた。
ハワード・ロックになるために、身も心も彼女に捧げた空っぽの残骸。「彼女」の指示に従うだけの人形が、エルマーである。
「私の、愛しい人のために私は……賢者にならねばならないのですから……」
地の聖獣の力、何としても手に入れてなければならない。「彼女」がそれを望んでいるのなら、喜んで人の道を踏み外してもいい。
エルマーの奴はこの拠点を捨てて結構経っているようで、資料の一番新しい日付は二年前で止まっている。それ以来アイカはたった一人でここに住んでいるんだな。
「しかしこいつは……感心だな。俺様が作った理論をこうまで展開するとは。どんなルートを使ったか知らないが、俺様の考えた理論を独自にかき集めてやがる」
「あんた、マジでぶっ飛んだ物ばっかり考えたわね。正直、職人として舌を巻く理論ばっかりだわ。それを一人で解析し、実現しているエルマーもすごいけど」
隣でリサちゃんも驚きっぱなしだ。元々俺様の理論が優れているのを加味しても、相当な頭脳を誇るみたいだな。
できる事なら酒場で腰据えて、理論的な話でもしてみたいぜ。エルマーの奴中々話せそうなやつじゃないか。
「どうだハワード、使えそうな資料はあったか?」
「使えるものばかりだぜ。エルマーの奴、相当な努力家だ。んで、なんで俺様の背におぶさってるわけ?」
「大きくなってもハワードの方が背が高いからな、視線が高くなって気分がいいんだ」
デカアイカになっても中身はチビのままだ。グラマラス褐色美女の姿で俺様に懐いてきやがる。
ちくしょー、属性特盛美女だってのに二十歳未満なのが悔しいぜ。背中に巨大なメガフレアが二つも押し付けられてるってのに、手が出せやしねぇ。
「言っとくけど、アイカに欲情したら憲兵に突き出すからね。見た目はあれだけど五歳児相手は犯罪よ」
「安心して頂戴な、俺様守備範囲外だと下半身反応しないのよ」
「ウソつけ……マジだ、テント出来てない」
「テントとは? なんでハワードの股間を見るんだ?」
「純朴とは恐ろしいもんだねぇ、十五年後に教えてあげるからスルーしときなさい」
「はーい」
無防備すぎるわこのゴーレム娘。エルマーの野郎、どんだけ罪づくりな奴を生み出したんだ。悔しすぎて俺ちゃんポンポンペインペインだぜ。
「これは……ハワード、こちらを」
「んー? エルマー秘蔵のBL写真集でもあったのかい?」
「ハワードのブロマイドなら欲しいですが違います。これが隅に埋もれていました」
アマンダたんが持ってきたのは、鍵付きの箱だ。埃をかぶって、随分古そうだな。
鍵がかかっているが、問題ない。俺様ピッキングのプロなんでね、針金一つではい開錠。
「壊せばいいじゃん」
「スキルを見せびらかしたかったのさ。さてさて、中身はなんでっしゃろな」
つっても、大したものは入ってない。分厚い本と、壊れた懐中時計の二つだけ。時計の裏には「V・W」とイニシャルが彫られている。
「こちらの本は、日記のようですね」
「diary? それってRealy? アマンダたんマジfairy♪」
「韻を踏むな韻を」
俺様のナイスラップはさておいて、几帳面な奴だ。遠慮なく読ませてもらうぜ。
日記の中は、サンドヴィレッジに来てからの研究経過が書かれていた。アイカのな。
人工加護製造のためにアイカを造った、出来なかったからこうやって改良した。その繰り返しでね、根っからの研究者気質みたいだぜ。
有用な情報は得られねぇか。そう思ったとき。
「この一文……何々? 「この研究が完成し、ハワード・ロックになれた時。私はボルケーノカントリーへ戻る事が出来る。あの忌々しくも美しい思い出が残る故郷へ」だとさ」
「ボルケーノカントリー!? あいつそこ出身なの!?」
「リサさん、ご存じなのですか?」
「ご存じもなにも、ガーベラの北方にある職人の聖地よ。そこって特殊金属がたくさん採れる場所でね、鋳造するために特殊な技術が使われてるのよ。前から一度行ってみたかった場所なのよねー」
おー、リサちゃんの目が輝いているなぁ。しかし、ボルケーノカントリー……炎の聖獣のおひざ元か。
「そんな場所にいたから、人工加護に聖獣の力を使おうなんて思いついたのかもな」
「ああ、エルマーはそう言っていたぞ」
「おおうアイカ、胸押し付けるのはやめてくれ。手を出せないからもう口惜しすぎるんだよ」
「男はこうすると喜ぶってエルマーが言っていたんだがな」
「あいつやっぱ、どっかしらファンキーな奴だよな。お前さんと一緒の時、あいつはどんな風に接してたんだ」
「特に変わった事はなかったがな。一緒に寝食を共にし、ミトラス討伐の計画を立てていた。最終的にアイカが完成できず捨てられたが……エルマーはそれまで、親身に接してくれていたよ」
「へぇ」
アイカの様子からして、エルマーを今でも慕っているようだな。
日記の中にもアイカへの恨みつらみは書いてなかった、むしろ娘を育てるような感覚で、愛情深い台詞がいくつも書かれていたよ。
たとえ演技だとしても、ガキを育てる気概はあったらしい。
「ただ、ちょっとおかしなところはあったかな」
「教えてくれ」
「時々、黒い本を読んでいたんだ。触ろうとしたら凄く怒られたし、本を読んでる間、ずっと独り言を言ってて、それはおかしかったかな」
「黒い本か……」
「けど、そんなのはどうでもいい。アイカは、エルマーにもう一度興味を持ってもらえれば、それでいい」
「お前はまだ、エルマーに振り向いてもらいたいのか」
「そんな事はない。ただ、エルマーが出来なかった事をアイカが出来れば、見返せると思っただけだ」
未練たらたらじゃねぇか。それに完成させるためにミトラスに愚直に挑むだけって芸がなさすぎるだろう。
ミトラスを倒す事で人工加護の完成に近づくのか? 意味がわからねぇな。
「! この気配は……!」
アイカは俺様から降りて、外へ飛び出した。どうやらまたミトラスがおいでなすったようだな。
「ねぇハワード、アイカ危なくない?」
「危ないだろうな。しゃあねぇ、骨でも拾いに行くか」
全く、落ち着きのないお姫さまだ。
◇◇◇
現場へ向かうと、ミトラスの群れがまたサンドヴィレッジの近くに現れていた。
アイカは槍を握りしめ、ミトラスへ立ち向かっている。さっきと違って魔力をフルチャージしているからか、やりたい放題暴れまわってるなぁ。
「雑魚は邪魔だ、どけ!」
周囲にいる小型ミトラスは槍の一突きで吹っ飛んでいく。加護は無いようだが、素の力が強いんだろうな。単純な腕力だけでミトラスを倒していた。
やられたミトラスは光となって消えていく。それに違和感を覚えつつ、アイカを見守っているとだ。
「今日こそお前を倒す、勝負だミトラス!」
―きゅ~?
ミトラスのヌシに果敢に挑みかかり、槍を突き立てていく。だがミトラスは全くびくともしておらず、それどころかだ。
―きゅっきゅっきゅーきゅきゅっきゅー♪
アイカをのっけて楽しげにジャンプし始めたじゃありませんか~いや~可愛らしいですね~。いやー癒されるわー。
「……あれ、遊ばれてるよね?」
「遊ばれてますね」
「砂上のサーフィンか、いいねぇ。俺様も参加しようかしら」
しかしあれだ、ミトラスの違和感がまた強くなったな。
槍刺されてるってのに、怒るどころか上機嫌。アイカを乗っけて大喜び。仲間を倒されているにも関わらず、アイカを大歓迎してやがる。
なーんか、引っかかるな。
「こ、のっ! なめるなぁ!」
―きゅっきゅきゅー♪
ミトラスはより大きくジャンプして、砂中にもぐりこんだ。アイカは力及ばず弾かれて、砂の上に寝転んだ。
んでミトラスは鼻先にアイカをひっかけると、そのまま直立してムーンウォーク。イルカショーみたくアイカを鼻にのっけて、楽し気に芸を披露していた。
「ミトラスさぁ……楽しんでない?」
「楽しんでますね。私も乗ってみたいです」
「シャチは頭いいからなぁ、頼めばやってくれるかもよ」
「こらミトラス! 真剣に戦え! アイカは、お前を倒しに来ているんだぞ!」
―きゅきゅー?
「そんなつぶらな瞳で見るな! 戦う気が失せるだろうが!」
―きゅきゅーきゅーっ
「くそーっ、屈辱だー!」
結局さんざんっぱら遊ばれた後、アイカはミトラスに運ばれてサンドヴィレッジに戻される。すっかり疲れ切って、大の字に倒れたまま動けなくなっていた。
「はいおかえり。感想は?」
「……最悪だ」
「こっちはシャチのショーが見れて楽しかったぜ」
―きゅきゅーっ!
ミトラスは「またねー」とでも言わんばかりに砂を吹いた。んでもってサービスのつもりなのか、俺様達に頭を差し出し、撫でろと体を揺らしてくる。
「触っていいの? あ、手触りさらさらー♪ 砂みたいで気持ちいいなぁ」
「それにぷにぷにしてます。水風船みたいで飽きのこない感触ですね」
「サービスありがとな、お礼に一杯なでなでしてやる」
―きゅきゅー♪
この手触り、嘘くさいな……やっぱこいつは……。
「じゃ、またねー」
―きゅー!
ハワードガールズとすっかり仲良くなっちゃって、彼女らに見送られるままミトラスは去っていく。んでアイカは負けたショックで動かなくなってら。
「……もうお嫁にいけない」
「結婚相談所に行ってこい」
けど立ち上がれないようだし、しょうがねぇ、おぶってやるか。
◇◇◇
ハワードは順調にアイカと交流を重ねているようだ。
高台から見下ろしていたエルマーは、黒の福音書を手に取りつぶやいた。
「ええ、そうします。アイカを利用してミトラスの……はい、はい……」
福音書に向かって独り言を言い続け、エルマーは虚ろな目で頷いた。
ハワード・ロックになるために、身も心も彼女に捧げた空っぽの残骸。「彼女」の指示に従うだけの人形が、エルマーである。
「私の、愛しい人のために私は……賢者にならねばならないのですから……」
地の聖獣の力、何としても手に入れてなければならない。「彼女」がそれを望んでいるのなら、喜んで人の道を踏み外してもいい。
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