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72話 師から学ぶ事
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「到着だ、師匠が活躍した聖地エアロタウン!」
ハワードが旅立って暫く後、カイン達勇者パーティはガーベラ聖国へ入国していた。
新聞で賢者の活躍を知ったカインは、早速エアロタウンへ足を向け、ハワードの辿った軌跡をたどる事にしたのである。
「それにしても、ここまで遠かったなぁ……馬車を使って一週間、こんな時はハワードさんみたいに頼れる足が欲しくなるよ」
「がるるのもふもふ気持ちよかったなぁ、ガンダルフと一緒に旅できるなんてすんごい贅沢よね」
「それでこそ師匠だよ。聖獣すら味方にしてしまう人徳、そして聖獣をも救う絶対的力! あの人が傍に居てくれるだけでなんとかなるって気持ちになれる、世界最高の賢者さ!」
心から賢者への尊敬を口にし続けるカイン。目はらんらんに輝き、まるで恋人の自慢話でもしているかのようだった。
「あのさ、一日に何回ハワードさんの自慢話するんだ? いい加減耳にタコが出来るよ」
「ありがとう、最高の褒め言葉だよ」
「ははっ、とうとう脳みそにカビでも生えた?(乾いた笑顔)」
「まぁまぁ。それにカイン、私達はただハワードさんを追いかけているわけじゃないのよ」
「大丈夫だよ、ちゃんと師匠から出された課題は覚えているさ」
ハワードの偉業を追いかけ、自分がどんな人生を進みたいか考えろ。それが賢者の出した課題だ。
カインはどのように人生を生きていくのか、何の目標もない。だからこそ、ハワードの背を追いかけて、自分なりの答えを見つけ出さねばならない。
「師匠が課題を出したからには、必ず意味がある。弟子として俺は、師匠の意図をくみ取って、自分の人生の答えを出さなきゃならないんだ」
「分かってるなら話は早いね。それじゃあハワードさんがどんな活躍をしたのか聞きに行こう」
「あら、誰に聞けばいいのか知ってるの?」
「……、………、…………誰に聞けばいいのかな?」
「何を言ってるのさ二人とも、師匠が関わる事件に美女の影ありさ」
カインはにこやかに言うと、迷う事無くある場所へ向かっていった。
◇◇◇
『……まさか、わらわの結界を破る人間が二人も居るとは……』
風の精霊が住む領域に来た珍客に、フウリは目を瞬いた。
赤毛の勇者カイン、緑髪の戦士ヨハン、青髪の魔術師コハク。ハワードから聞いた勇者パーティの三人だ。
『試すつもりで結界に誘導したら、まさかこうまで驚かされてしまうとはのぉ……』
「俺は賢者ハワードの弟子ですよ、このくらいの試練ちょちょいのちょいです」
『むぅ、流石は賢者の弟子じゃ。魔王を倒すだけの事はある』
「いやいや、俺一人の力で成し遂げたわけではありませんよ。師匠と、頼れる仲間達の力あってこそです」
ハワードの弟子とは思えないくらい謙虚で純粋無垢な少年だ。彼が気に入るのも分かる気がする。
「俺様を追ってカイン達が来ると思う。来たらたっぷりと俺様の活躍を話してくれよな♪」
ハワードは別れ際、そう残した。フウリとしてもハワードとの思い出を話したかったから丁度良い。
『それに、ハワードについて話したい者がもう一人おるからの』
―ピョエーッ!
頭上からテンペストが降りてきた。風の聖獣の登場にカイン達は驚くも、
「わあっ! 立派な鳩胸、すごくふわふわ!」
「君もハワードさんに助けられたのか。分かるよ、あの人って本当頼りになるよね」
「卵の状態もいいんだって? 師匠がきちんと環境を整えたからね、当然さ!」
『思いのほかあっさりと順応するのじゃな』
「魔王討伐の旅で色々な経験をしましたから。それより、聞かせてください。師匠がこの地でどんな活躍をしたのかを」
『よかろう、では出会いのきっかけから追っていこうか』
―ピョッ
カインはもう熱心に二人の話を聞いた。ハワードの活躍を聞く度、カインはまるで自分の事のようにはしゃぎまわる。フウリとテンペストは勇者に乗せられ、そりゃもう機嫌よく賢者の活躍を語り続けた。
「けど、ハワードさんはどうして自分の活躍を追うように言ったんだろう」
「そりゃ、弟子の俺に教えを伝えようとしているんだよ」
「でもさ、それならハワードさんは直接言うよね。こんな回りくどい方法を取るって事は、何か意味があるんだと思う」
「そうね、あの人は決して無意味な事はしないわ。ちゃんとハワードさんの意図をくみ取らないと、カインに出された課題は解決しないと思う」
「ん……師匠が俺に望んでいる事……」
ハワードはカインに、俺に依存していると言っていた。
確かに、カインはハワードを慕いすぎるあまり、賢者に甘えすぎていたかもしれない。ハワードはカインが自立するために、あえて言葉ではなく行動でカインがどうすべきなのかを教えようとしているのだ。
「これから師匠を追っていく中で、俺は目標を見つけなくちゃいけないのか……そうしないと、追いついても師匠と合わせる顔はないもんな」
もう一度ハワードと冒険がしたい。そのためには、ただ追いかけるだけでは駄目だ。
ハワードに自分がどう生きるのか。その答えを伝えて初めて、賢者は勇者パーティに戻ってきてくれる。
「よし、頑張ろう。師匠と一緒に居るために、成長しないとな」
決意を固めた勇者に、仲間二人は優しく微笑んでいた。
ハワードが旅立って暫く後、カイン達勇者パーティはガーベラ聖国へ入国していた。
新聞で賢者の活躍を知ったカインは、早速エアロタウンへ足を向け、ハワードの辿った軌跡をたどる事にしたのである。
「それにしても、ここまで遠かったなぁ……馬車を使って一週間、こんな時はハワードさんみたいに頼れる足が欲しくなるよ」
「がるるのもふもふ気持ちよかったなぁ、ガンダルフと一緒に旅できるなんてすんごい贅沢よね」
「それでこそ師匠だよ。聖獣すら味方にしてしまう人徳、そして聖獣をも救う絶対的力! あの人が傍に居てくれるだけでなんとかなるって気持ちになれる、世界最高の賢者さ!」
心から賢者への尊敬を口にし続けるカイン。目はらんらんに輝き、まるで恋人の自慢話でもしているかのようだった。
「あのさ、一日に何回ハワードさんの自慢話するんだ? いい加減耳にタコが出来るよ」
「ありがとう、最高の褒め言葉だよ」
「ははっ、とうとう脳みそにカビでも生えた?(乾いた笑顔)」
「まぁまぁ。それにカイン、私達はただハワードさんを追いかけているわけじゃないのよ」
「大丈夫だよ、ちゃんと師匠から出された課題は覚えているさ」
ハワードの偉業を追いかけ、自分がどんな人生を進みたいか考えろ。それが賢者の出した課題だ。
カインはどのように人生を生きていくのか、何の目標もない。だからこそ、ハワードの背を追いかけて、自分なりの答えを見つけ出さねばならない。
「師匠が課題を出したからには、必ず意味がある。弟子として俺は、師匠の意図をくみ取って、自分の人生の答えを出さなきゃならないんだ」
「分かってるなら話は早いね。それじゃあハワードさんがどんな活躍をしたのか聞きに行こう」
「あら、誰に聞けばいいのか知ってるの?」
「……、………、…………誰に聞けばいいのかな?」
「何を言ってるのさ二人とも、師匠が関わる事件に美女の影ありさ」
カインはにこやかに言うと、迷う事無くある場所へ向かっていった。
◇◇◇
『……まさか、わらわの結界を破る人間が二人も居るとは……』
風の精霊が住む領域に来た珍客に、フウリは目を瞬いた。
赤毛の勇者カイン、緑髪の戦士ヨハン、青髪の魔術師コハク。ハワードから聞いた勇者パーティの三人だ。
『試すつもりで結界に誘導したら、まさかこうまで驚かされてしまうとはのぉ……』
「俺は賢者ハワードの弟子ですよ、このくらいの試練ちょちょいのちょいです」
『むぅ、流石は賢者の弟子じゃ。魔王を倒すだけの事はある』
「いやいや、俺一人の力で成し遂げたわけではありませんよ。師匠と、頼れる仲間達の力あってこそです」
ハワードの弟子とは思えないくらい謙虚で純粋無垢な少年だ。彼が気に入るのも分かる気がする。
「俺様を追ってカイン達が来ると思う。来たらたっぷりと俺様の活躍を話してくれよな♪」
ハワードは別れ際、そう残した。フウリとしてもハワードとの思い出を話したかったから丁度良い。
『それに、ハワードについて話したい者がもう一人おるからの』
―ピョエーッ!
頭上からテンペストが降りてきた。風の聖獣の登場にカイン達は驚くも、
「わあっ! 立派な鳩胸、すごくふわふわ!」
「君もハワードさんに助けられたのか。分かるよ、あの人って本当頼りになるよね」
「卵の状態もいいんだって? 師匠がきちんと環境を整えたからね、当然さ!」
『思いのほかあっさりと順応するのじゃな』
「魔王討伐の旅で色々な経験をしましたから。それより、聞かせてください。師匠がこの地でどんな活躍をしたのかを」
『よかろう、では出会いのきっかけから追っていこうか』
―ピョッ
カインはもう熱心に二人の話を聞いた。ハワードの活躍を聞く度、カインはまるで自分の事のようにはしゃぎまわる。フウリとテンペストは勇者に乗せられ、そりゃもう機嫌よく賢者の活躍を語り続けた。
「けど、ハワードさんはどうして自分の活躍を追うように言ったんだろう」
「そりゃ、弟子の俺に教えを伝えようとしているんだよ」
「でもさ、それならハワードさんは直接言うよね。こんな回りくどい方法を取るって事は、何か意味があるんだと思う」
「そうね、あの人は決して無意味な事はしないわ。ちゃんとハワードさんの意図をくみ取らないと、カインに出された課題は解決しないと思う」
「ん……師匠が俺に望んでいる事……」
ハワードはカインに、俺に依存していると言っていた。
確かに、カインはハワードを慕いすぎるあまり、賢者に甘えすぎていたかもしれない。ハワードはカインが自立するために、あえて言葉ではなく行動でカインがどうすべきなのかを教えようとしているのだ。
「これから師匠を追っていく中で、俺は目標を見つけなくちゃいけないのか……そうしないと、追いついても師匠と合わせる顔はないもんな」
もう一度ハワードと冒険がしたい。そのためには、ただ追いかけるだけでは駄目だ。
ハワードに自分がどう生きるのか。その答えを伝えて初めて、賢者は勇者パーティに戻ってきてくれる。
「よし、頑張ろう。師匠と一緒に居るために、成長しないとな」
決意を固めた勇者に、仲間二人は優しく微笑んでいた。
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