上 下
59 / 116

58話 次の目的地

しおりを挟む
 翌日、俺様達は爺さんに案内され、フェアリーちゃんの下へ向かっていた。
 爺さんのツテを利用して、信用のある病院に彼女を預けたんだ。んでもって意識を取り戻したそうなんで、ちょいとお見舞いに行こうって事になったのさ。

「にしても、随分厳重に守ったわね。病院に結界まで張ってさ」
「高位の精霊は稀有な存在だ、万一周囲に知られたら、どこの誰に誘拐されるか分からねぇからよ」
「精霊は売り飛ばせば一生遊べる金が手に入るからのぉ、ほれついたぞ」

 病室に入るなり、精霊ちゃんが綺麗な翡翠の瞳で俺様達を見つめてきた。
 改めて見ると、やっぱ極上のキティだぜ。人間離れしたこの容姿……眺めるだけでもよだれがあふれてくるし、俺様自慢のエクスカリバーが今にも爆発寸前だ。

「てなわけで、助けた謝礼に俺様の聖剣を鎮める一発をお願いしちゃおかな♡」
「せいっ!」
「Wow!!??」

 アマンダたんに俺様の宝玉を蹴り上げられ、そのまま悶絶してしまう。ちょっとそこは勘弁してくれ、俺様でも堪えるから……。

「この下郎が大変失礼しました、深く謝罪いたします」
「あんたね、病院でかます発言として最悪の一言よそれ」
「分かってないねぇ、病院という清純な場所で口説くからこそ背徳感が演出されてよりしっぽりとした一発を堪能できるんだろうが!」

 なんて言ったら二人から踵落としのプレゼント、痛烈な一撃と引き換えにパンチラもらいましたー。

『……汝が、わらわを救った者達か。うっすらと覚えておるが……随分軽薄な男がおるようじゃな』
「んっ! なにこれ、頭に直接声が?」
「精霊はテレパシーで会話するのです。ハワードから聞いただけで、体験するのは初めてですが……脳が痺れる感覚がします」
「ま、慣れちまえば問題ないさ。それでレディ、気分はどうだい?」
『悪くはない、昨日よりもずっと調子がいいくらいじゃ』
「そいつは重畳。んで、聞かせてくれるかい。君のような高位の精霊が、チンケなマフィアに捕まっていた理由を。あの程度の連中なら、君一人で壊滅させられるだろう?」
『……情けない話じゃ。住処から出るなり、不意を突かれてしまってな。【封印】のスキルで力を封じられてしまい、身動きが取れなくなってしまったのじゃ』

「【封印】だと?」
「相手の能力やスキルを封じ込める、シンプルながら強力なスキルですね」

「へーっ、そんなのがあるなら、こいつが粗相しないように身に着けるのもありだわね」
「無理だと思います。相手が相手ですから」
「分かってるじゃないアマンダたん。何しろ俺様、賢者ですから。ハワード・ロックを封じ込めたきゃ、天蓋付きのベッドにネグリジェ姿の美女百人でも用意しないとだめだぜ」
『賢者、ハワード……? まさか貴様、あの勇者カインと共に魔王を討ち滅ぼした……賢者ハワードか!』
「こいつの事、知ってるの?」

『魔王討伐の話は精霊達でも話題になっている、しかし汝が大賢者ハワード・ロック……想像していたのとはだいぶ違うが』
「想像よりもイケメンで驚いたんだろ」

『想像よりアホなおっさんで驚いたんじゃ』
「おいおーい、このナイスミドルをアホ呼ばわりすんのはどうなのよ。ねぇリサちゃん」
「うんまぁ、妥当な感想だと思うよ」
「アマンダたんなら俺様の味方してくれるよねぇ?」
「普段の行動を見直してみてはいかがです?」
「……がるる、お前ならわかってくれるだろ?」
―……わふぅ(ぷいっ)

 あからさまに目をそらしやがった。お前さん時々人間以上に人間らしい反応見せるじゃないの。
『じゃが、実力は本物のようじゃ。レベル999の人間、わらわよりも遥かに強い、魔力量もけた違いじゃ。それに……スケベな性根に反して強固な魂を持つようじゃの』

「おやおや、精霊は人の魂の色が見えると言うが、どうやら本当のようだな」
『うむ。軽薄な表面の奥にある、ダイヤモンドの如き魂が見える。汝ならば、信用しても……よいのだろうか』
「なんでそんな不安になんのよ、俺ちゃんの魂見たなら信用できるでしょうが」
「あんたの性癖見たら信じたくても信じられないでしょうが」
『その通り。しかし他に当てもない、賢者ハワードよ、わらわの頼みを聞いてもらえるか。わらわはやるべき事があり、故郷へ戻らねばならない。そのために、汝の力を貸してほしいのじゃ。報酬もろくに出せぬ故、汝にはあまり得のない話じゃが……』

「OK! 麗しき精霊様の依頼、このハワード・ロックが引き受けたぜ」
『って二つ返事!? よ、よいのか? アマンダにリサも、その……』
「遠慮する必要はありませんよ、例え報酬がなくても、ハワードは美女の頼みを断らない人ですから」
「それに困ってる人が居るのに、見て見ぬふりは出来ないでしょ。私らも賛成だよ」
『なんて、心意気なのじゃ……恩に着るぞ、ハワード・ロック……』

「どーいたしまして。ってわけで、前金代わりに君の名前を教えてくれるかな?」
『おっと、済まない。まだ名乗っておらなかったの。我が名はフウリ、風の精霊、フウリじゃ。そしてわらわの故郷は』
「アザレア王国の隣国、ガーベラ聖国だろ? さらに言えばエアロタウンの近くかな?」

 フウリちゃんの目が見開かれる。へっへっへ、賢者ハワードを侮って貰っちゃ困るぜ。

『なぜ、そこまで……?』
「君が羽織っているその羽衣、聖獣テンペストの羽で編まれた物だろう。見ているだけで全身に風が吹き抜けるような、爽やかな魔力を感じるんだ。テンペストの姿が見れるのはこの世でただ一か所、ガーベラ聖国エアロタウン近郊だけだ。恐らく君は、テンペストに従属する精霊といった所かな」
『なんたる洞察力……伊達に女をやらしい目で物色しているわけではないという事か』
「まぁな。俺様の独眼竜を褒めてくれてありがとさん」
「褒めてないから。だけど聖獣……がるると同じ存在って事かぁ」
―がるるっ

 がるるが大きく身を震わせた。ガンダルフが氷の聖獣なら、テンペストは風の聖獣だ。俺様も文献でしか知らないが、さぞ美しい姿の鳥らしいな。

「風の聖獣テンペスト……聖書にも名を連ねる崇高なる存在ですね。それにガーベラには、テンペストだけではありません。四種の聖獣が生息する、世界でも有数の聖獣国なのです」
「次の観光地としてはもってこいだぜ、いつまでもアザレアに居たらマンネリしちまうからな。よし、旅の目的も決定だ!」

 ガーベラ聖国、聖獣巡りの旅だ。珍しい動物ウォッチングを楽しもうじゃあねぇか!
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界最強の賢者~二度目の転移で辺境の開拓始めました~

夢・風魔
ファンタジー
江藤賢志は高校生の時に、四人の友人らと共に異世界へと召喚された。 「魔王を倒して欲しい」というお決まりの展開で、彼のポジションは賢者。8年後には友人らと共に無事に魔王を討伐。 だが魔王が作り出した時空の扉を閉じるため、単身時空の裂け目へと入っていく。 時空の裂け目から脱出した彼は、異世界によく似た別の異世界に転移することに。 そうして二度目の異世界転移の先で、彼は第三の人生を開拓民として過ごす道を選ぶ。 全ての魔法を網羅した彼は、規格外の早さで村を発展させ──やがて……。 *小説家になろう、カクヨムでも投稿しております。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

“金しか生めない”錬金術師は果たして凄いのだろうか

まにぃ
ファンタジー
錬金術師の名家の生まれにして、最も成功したであろう人。 しかし、彼は”金以外は生み出せない”と言う特異性を持っていた。 〔成功者〕なのか、〔失敗者〕なのか。 その周りで起こる出来事が、彼を変えて行く。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~

たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!! 猫刄 紅羽 年齢:18 性別:男 身長:146cm 容姿:幼女 声変わり:まだ 利き手:左 死因:神のミス 神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。 しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。 更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!? そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか... 的な感じです。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

処理中です...