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175話 最後のエンディミオン戦
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行く手を阻む兵をなぎ倒し、僕達は進んでいく。
ハヌマーンのお陰で、エンディミオンがどこにいるのかが分かる。あいつは謁見の間で、僕達を待ち構えている。
近づくにつれて、肌がビリビリしてくる。あいつの気配が、確実に迫っていた。
「シラヌイ、覚悟はいいかい?」
「ええ、いつでも!」
ハヌマーンで繋がっている僕達だからこそ、エンディミオンに立ち向かえる。僕達の背にのしかかる多くの想い、無駄には出来ない。
『謁見の間まで、あと少しだぞ』
先行していたシルフィが叫んだ。固く閉ざされた、大きな扉が見えてくる。
僕の斬撃とシラヌイの火球で壊し、突入すると……エンディミオンは玉座におさまり、二振りの剣を携えてたたずんでいた。
『随分早い来訪だな。いきなりここまで突撃してくるなんて、王を相手に不躾だと思わないか?』
「お前相手にマナーを守るつもりはない。ここまで来た以上、語る必要はないよな」
「私達が生きるのに、あんたはただ邪魔なだけ。くだらない暇つぶしは、ここまでにしてもらうわよ」
僕らは武器を突き付け、
「エンディミオン! お前の虚無はここで砕く、この世にお前は不要だ!」
「あんたを破壊して、人間との戦争を終わらせてやるわ!」
『ははは! これはまた、物騒な用件だ。そう簡単に壊されては、俺も困るな』
おもむろに立ち上がり、エンディミオンは歩み寄ってくる。
自身と、ディアボロス。二本の剣を握りしめ、凶悪に笑ってきた。
『この退屈を埋めるには、まだまだ足りない。俺が満たされるには、もっと、もっと多くの闘争が必要だ。だから……お前達には踏み台になってもらうよ。より遥かな満足を得るためのな』
「やれるものなら!」
「やってみなさい!」
僕は突進し、エンディミオンに切り込んだ。
刀と聖剣がぶつかり合い、火花が散る。刀身に煌力を満たし、エンディミオンを押し返した。
そこへシラヌイの炎魔法が降り注ぐ。嵐のような猛攻にエンディミオンは一瞬怯むも、その顔には笑みが浮かんでいた。
『いいねぇ、やっぱりお前ら、最高だよ』
「お前を楽しませるために戦っているんじゃない!」
オベリスクを抜き、炎と土を組み合わせて足元にマグマを発生させる。エンディミオンは回避し、僕に斬撃を飛ばしてくるけど、
『あん?』
シラヌイが幻術で、僕の分身を生み出している。斬撃は的外れな方向へ飛び、壁を破壊した。
風魔法で背中を押し、一気に間合いを詰める。エンディミオンもディアボロスを抜いて、双剣での打ち合いが始まった。
フェイスの顔で、フェイスの武具を振るうエンディミオン。だからこそ分かる、なぜフェイスが変わったのか、これまで無意味に人の命を奪ってきたのか。
こいつが、フェイスの自我を乗っ取っていたんだ。
あいつの意志を知らずのうちに侵食して、エンディミオンの思うように動かしていた。こいつはずっと、フェイスを操り人形にして、弄んでいたんだ。
許せない……こいつだけは、許せない。
多くの人の人生をゆがませ、心を虚無で満たし……破滅の波を広げてきた悪魔の剣! なんとしてでも壊してやる!
「ハヌマーン! 勝負に出るぞ!」
『承知!』
覚醒の力を使い、僕は変身した。エンディミオンを確実に倒すには、この力で押し切るのが手っ取り早い!
そこへ煌力も乗せる。出し惜しみなんかする物か、目の前に全てを終わらすキーマンがいるのだから!
『ははは! アンチ魔導具の力、どれだけ俺に通用するか試してみろ!』
エンディミオンは嬉々として、僕にぶつかってきた。
◇◇◇
〈魔王視点〉
『今頃、ディッ君はエンディミオンとぶつかっている頃か』
本省を表わしたエンディミオンは、ハヌマーンの力を持ってしても勝てるかどうか怪しい。ワシも出張らないとならない事態だ。
だけどもあと一人、エンディミオンを倒すために必要な人物が居る。
『遅くなったな魔王よ、フェイスはここか?』
『やぁ、ディアボロス』
魔王城の外から大きな声が聞こえた。龍王ディアボロス、現在、フェイスにとって唯一の味方である存在だ。
エンディミオンを倒すには、フェイスが必要だ。というより、フェイスを連れていかないと、エンディミオンにとどめを刺せない。
『連れ出すには、怪我を治さないとね。君の血を使えば出来るでしょう?』
『うむ。龍の血にはあらゆる怪我を癒す力がある、動ける程度に治すくらいはできよう』
ディアボロスは何も言わずに血を提供してきた。話が早くて助かるな。
それにこっそりシルフィから、ある許可も貰っている。フェイスを覚醒させるのに、この上なく重要な人物だ。勿論、ディッ君を救うためにもね。
『この短期間で、何度も呼び出す事になっちゃうなぁ。シルフィに怒られちゃうよ』
『だが、状況が状況だろう。フェイスが目を覚ましたら、我らも行くぞ』
『勿論。運搬役は頼んだよ』
って事で、一人医務室へ向かう。フェイスとアプサラスはまだ目を閉じていて、硬く手を握り合っている。
今まで愛された事のない勇者に初めてできた、心から愛してくれる人か。この子には、つらい事を強いてしまうかもしれないな。
それでも、ワシは魔王だ。多くの民を救う義務がある。
だからフェイス、世界を救うための犠牲となってくれ。
そんな願いを込めて、シルフィの羽を彼の胸に置いてあげた。
ハヌマーンのお陰で、エンディミオンがどこにいるのかが分かる。あいつは謁見の間で、僕達を待ち構えている。
近づくにつれて、肌がビリビリしてくる。あいつの気配が、確実に迫っていた。
「シラヌイ、覚悟はいいかい?」
「ええ、いつでも!」
ハヌマーンで繋がっている僕達だからこそ、エンディミオンに立ち向かえる。僕達の背にのしかかる多くの想い、無駄には出来ない。
『謁見の間まで、あと少しだぞ』
先行していたシルフィが叫んだ。固く閉ざされた、大きな扉が見えてくる。
僕の斬撃とシラヌイの火球で壊し、突入すると……エンディミオンは玉座におさまり、二振りの剣を携えてたたずんでいた。
『随分早い来訪だな。いきなりここまで突撃してくるなんて、王を相手に不躾だと思わないか?』
「お前相手にマナーを守るつもりはない。ここまで来た以上、語る必要はないよな」
「私達が生きるのに、あんたはただ邪魔なだけ。くだらない暇つぶしは、ここまでにしてもらうわよ」
僕らは武器を突き付け、
「エンディミオン! お前の虚無はここで砕く、この世にお前は不要だ!」
「あんたを破壊して、人間との戦争を終わらせてやるわ!」
『ははは! これはまた、物騒な用件だ。そう簡単に壊されては、俺も困るな』
おもむろに立ち上がり、エンディミオンは歩み寄ってくる。
自身と、ディアボロス。二本の剣を握りしめ、凶悪に笑ってきた。
『この退屈を埋めるには、まだまだ足りない。俺が満たされるには、もっと、もっと多くの闘争が必要だ。だから……お前達には踏み台になってもらうよ。より遥かな満足を得るためのな』
「やれるものなら!」
「やってみなさい!」
僕は突進し、エンディミオンに切り込んだ。
刀と聖剣がぶつかり合い、火花が散る。刀身に煌力を満たし、エンディミオンを押し返した。
そこへシラヌイの炎魔法が降り注ぐ。嵐のような猛攻にエンディミオンは一瞬怯むも、その顔には笑みが浮かんでいた。
『いいねぇ、やっぱりお前ら、最高だよ』
「お前を楽しませるために戦っているんじゃない!」
オベリスクを抜き、炎と土を組み合わせて足元にマグマを発生させる。エンディミオンは回避し、僕に斬撃を飛ばしてくるけど、
『あん?』
シラヌイが幻術で、僕の分身を生み出している。斬撃は的外れな方向へ飛び、壁を破壊した。
風魔法で背中を押し、一気に間合いを詰める。エンディミオンもディアボロスを抜いて、双剣での打ち合いが始まった。
フェイスの顔で、フェイスの武具を振るうエンディミオン。だからこそ分かる、なぜフェイスが変わったのか、これまで無意味に人の命を奪ってきたのか。
こいつが、フェイスの自我を乗っ取っていたんだ。
あいつの意志を知らずのうちに侵食して、エンディミオンの思うように動かしていた。こいつはずっと、フェイスを操り人形にして、弄んでいたんだ。
許せない……こいつだけは、許せない。
多くの人の人生をゆがませ、心を虚無で満たし……破滅の波を広げてきた悪魔の剣! なんとしてでも壊してやる!
「ハヌマーン! 勝負に出るぞ!」
『承知!』
覚醒の力を使い、僕は変身した。エンディミオンを確実に倒すには、この力で押し切るのが手っ取り早い!
そこへ煌力も乗せる。出し惜しみなんかする物か、目の前に全てを終わらすキーマンがいるのだから!
『ははは! アンチ魔導具の力、どれだけ俺に通用するか試してみろ!』
エンディミオンは嬉々として、僕にぶつかってきた。
◇◇◇
〈魔王視点〉
『今頃、ディッ君はエンディミオンとぶつかっている頃か』
本省を表わしたエンディミオンは、ハヌマーンの力を持ってしても勝てるかどうか怪しい。ワシも出張らないとならない事態だ。
だけどもあと一人、エンディミオンを倒すために必要な人物が居る。
『遅くなったな魔王よ、フェイスはここか?』
『やぁ、ディアボロス』
魔王城の外から大きな声が聞こえた。龍王ディアボロス、現在、フェイスにとって唯一の味方である存在だ。
エンディミオンを倒すには、フェイスが必要だ。というより、フェイスを連れていかないと、エンディミオンにとどめを刺せない。
『連れ出すには、怪我を治さないとね。君の血を使えば出来るでしょう?』
『うむ。龍の血にはあらゆる怪我を癒す力がある、動ける程度に治すくらいはできよう』
ディアボロスは何も言わずに血を提供してきた。話が早くて助かるな。
それにこっそりシルフィから、ある許可も貰っている。フェイスを覚醒させるのに、この上なく重要な人物だ。勿論、ディッ君を救うためにもね。
『この短期間で、何度も呼び出す事になっちゃうなぁ。シルフィに怒られちゃうよ』
『だが、状況が状況だろう。フェイスが目を覚ましたら、我らも行くぞ』
『勿論。運搬役は頼んだよ』
って事で、一人医務室へ向かう。フェイスとアプサラスはまだ目を閉じていて、硬く手を握り合っている。
今まで愛された事のない勇者に初めてできた、心から愛してくれる人か。この子には、つらい事を強いてしまうかもしれないな。
それでも、ワシは魔王だ。多くの民を救う義務がある。
だからフェイス、世界を救うための犠牲となってくれ。
そんな願いを込めて、シルフィの羽を彼の胸に置いてあげた。
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