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106話 勇者、ディックを奪いに迫る。
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エルフの国北西、最終防衛ライン。僕達はその最前線へやってきていた。
作戦開始の三日目が来た。もう間もなくドラゴン達が来る。エルフから提供されたエポナホースにまたがり、僕達は木々の間に身を潜めていた。
僕の隣では、シラヌイとラズリが控えている。二人とも、迫りくる脅威に緊張しているみたいだ。
後方では、ラピスが祈祷場に控え、僕達をバックアップしてくれる。今頃リージョン達も持ち場についているんだろう。皆、どうか無事で帰ってきてくれよ。
「はいこれ、エネルギー補給しておきなさい」
「ありがとう」
シラヌイからサンドイッチを貰い、素早く食べきる。美味いな、料理が苦手だったシラヌイだけど、すっかり上手になっているな。
「いい具合に気分上がってるみたいじゃねぇの、お二人さん」
ワイルが木の上から顔を出した。彼にもサンドイッチを渡しつつ、
「背中は任せたよ」
「あいよ、任された。この怪盗と一緒に戦える事、光栄に思いな」
「お互いに帰らなきゃならない理由があるしね」
「ばーか、俺達だけじゃねぇだろ? ここに居る全員に帰る理由があるんだ。勿論、お前らにもな」
ワイルは兵達を見渡した。
「互いに笑って帰れるよう、精々力を尽くそうじゃねぇの」
「ああ、そうだね」
「……二人とも、刻限のようです」
ラズリが顔を上げた。
空を見れば、黒い影が見え始めていた。三日前よりも、ずっと多い。多分五千は来ているな。
それに、眼下には人間軍の軍勢も見える。数としては二万って所かな。
数の上では、エルフが有利……けどドラゴン一体でこっちの兵十人分の戦力を持っている。実質的な戦力は、相手が上だ。
地空両方から同時に攻め込む作戦か、上ばかりに気を取られていたら、下からの人間軍が襲ってくる。面倒な布陣だよ。
長期戦になれば僕達が不利。そのためにも求められるのは……。
「短期決戦……速やかに、フェイスとディアボロスを無力化する事だ……!」
◇◇◇
<フェイス視点>
「なぁんて考えてるんだろうなぁ、愛しのディックちゃんはよ」
エンディミオンを担いで森を見下ろすと、多数の気配を感じ取った。
案の定、エルフの軍勢が構えていやがったか。ワイルが居た時点で、作戦が筒抜けになっていたのは分かっていたよ。
だがなぁ、だからと言ってせこせこ作戦を変える必要はねぇんだわ。
理由なんて単純な話だ。いくら相手が策を講じようが、俺達はそいつを力でねじ伏せればいいだけなのだから。
だから俺達の作戦は、真正面のぶつかり合い。それだけでいい。シンプル故に、相手のどんな対応策をも無為にできるからな。
『ばっはっは! そもそも世界樹の巫女姉妹がいる国に余計な策を講じる意味もないからなぁ。すぐに世界樹が察知して対応してしまうからのぉ。ばっはっは!』
「だが龍王が来るとなれば話が違う、そうだろう?」
そもそも、ディアボロス自身が戦略兵器みたいなもんだからな。しかもこっちには、もう一匹楽しみな奴も居る。
炎獄龍カノン。シラヌイにぶつけるため持ってきた生物兵器だ。
ディックと恋仲の様だが、悪いね。お前は眼中にないんだわ。
何しろ俺とディックは深く繋がった仲だからな。精々邪魔しないよう、こいつで遊んでいてくれや。
「四天王が居る戦場にも、四星龍を送り込んだ。配置はばっちりだな」
「あ、あの、勇者様……私達は?」
おっと忘れていた。女どもをどうしてやろうかな。
こいつらにはもう飽きた。用が無くなった以上ここで消すつもりだし、適当に動かすか。
「お前らは好きに動け。俺に認められるよう、精々頑張りな」
『は、はい!』
健気だねぇ。ここで捨てられるとも知らず、のんきなもんだ。
俺にはもう、ディックだけがいればいい。あいつとの愛に邪魔なお前らは、とっとと消えな。
『さぁて、では始めようか! 戦の火ぶたを切らせてもらうぞぉ!』
「派手にやってやりな」
ディアボロスは口にブレスを溜めると、豪快に吐き出した。
◇◇◇
<ディック視点>
ディアボロスが巨大な火球を吐き出した。
僕は飛ぶ斬撃を放ち、同時にラズリとシラヌイが拳圧とファイアボールを撃ち出す。
互いの攻撃が直撃するなり、派手な花火がはじけ飛ぶ。それが合図となったように、ドラゴン達が攻め込んできた。
「迎撃準備! 弩弓隊は矢を放て、魔術隊、魔法攻撃用意!」
ラズリの号令と共に矢と魔法の弾幕が展開される。濃密な弾幕の前にドラゴンは攻めあぐねるけど、その間に人間軍が迫ってくる。
ドラゴンと森が魔法と矢から身を守る盾になっているのか。けど地上には、僕達が居る。エルフが誇る名馬、エポナホースに乗った騎馬隊がね。
「私は上空のドラゴンを対処する、貴方達は地上の敵を!」
言うなりラズリは上空を駆け抜け、ドラゴンの軍勢に立ち向かっていく。よし、僕達も行こう。
「ディック。ここを上手く切り抜けたら」
「うん?」
「……朝まで、いっぱい愛してもらってもいい?」
「……やる気がでちゃうね」
彼女からのお誘いだ、なんとしてでも生き抜かないとな。
エポナホースを駆り、僕は木に登った。そのまま枝を軽やかに飛び交い、人間軍へ切り込んでいく。
エルフが育てたエポナホースは、木や岸壁を登る力を持った馬だ。普通の馬じゃ通れないようなぬかるみや悪路でも、軽々と走る事が出来る。それも音を立てずにだ。
地上の人間軍は木々を利用して、隠密行動をとろうとしているようだけど……無意味だよ。エルフ達の目と耳は良いんだ。
「物陰に隠れている兵に注意しろ、各自散開!」
『はっ!』
エルフ達は隠れている兵達を見つけ、先制攻撃を仕掛けた。
魔剣や魔槍の攻撃が敵兵を捉える。だけど、全てはじき返されてしまった。
まさか、龍装備か。
「ディアボロスに武具を提供されたんだな」
人間達の装備は、革鎧やレザーシールドといった軽装だ。だけど矢が当たっても、剣で斬られても、傷一つ付かない。
それどころか、持っている武器を突き出す度に見えない圧力が飛んで、木々がへし折られた。
「ドラゴンの革と牙を使った武具か、これは厄介だな!」
「余計に面倒な事してくれちゃって、大変なのよ、あんた達みたいなの相手にするのは! シルフィ、力を貸しなさい!」
『任せるがいい』
シラヌイは杖を振り、幻術を仕掛けた。
すると人間軍は、てんでバラバラの方向に攻撃を仕掛け始めた。その隙にエルフ達が敵兵をなぎ倒していく。
「へへ、エルフの幻影を見せてやったわ。どんなもんよ」
「ナイスシラヌイ! よし、このまま突っ切って」
『そうはさせない!』
僕達の頭上から、何者かが降りてくる。
咄嗟に馬を翻すと、フェイスの女達が攻撃を仕掛けてくる。どうやら、僕達めがけてまっすぐやってきたみたいだな。
「ようやく見つけたぞ、ディック。お前を殺して、そのオベリスクを奪い返してやる!」
「そして、取り戻すのよ。勇者様からの信頼を……!」
「何としてでも、ここで裏切り者のお前を倒す! 覚悟しなさい!」
「……随分な言われようだな、流石の僕もムカつくよ」
彼女達はフェイスに言われるがまま、僕を虐げてきた連中だ。
だから仲間意識なんかない、立ちふさがると言うのであれば、容赦なく叩き伏せてやる。
「そもそも、どうして君達はフェイスを慕う? 奴の本性は分かっているはずだ、それでもあいつについて行く理由はなんだい?」
『お前なんかに話す理由はない!!!』
「そうか……元々興味もなかったけどね!」
刀とオベリスクを握り、エポナホースから飛び出す。
女剣士が迎え撃つけど、オベリスクで剣を粉砕し、刀で押し返した。
魔法使いは詠唱を終える前に煌刃剣で止め、僧侶に関しても回復術を使う前に斬撃で威嚇した。相手が女性であっても、戦場に来たからには容赦しないよ。
彼女達では、僕の足元にも及ばないだろう。正直、戦うだけ時間の無駄だ。
「おっとっと、お前さん結構鬼だなぁ」
そんな時に、ワイルが現れた。
「美女に乱暴しちゃだめだぜ? 相手がどれだけ性悪でも、女は大事にしないとな。って事で、ここは俺に任せな。美女の足止めくらいはやってやるさ」
「助かる、頼んだよワイル!」
「ディック、早く馬に乗りなさい!」
僕の馬を引き、シラヌイがやってくる。すぐに馬へ乗り込み、ワイルに彼女達を任せた。
稀代の大怪盗なら、勇者パーティの相手もできるはず。頼んだよ!
◇◇◇
「って事で、役者を代えさせてもらうぜ。ここから先は、俺の怪盗ショーだ」
勇者パーティの一面を見渡し、俺は思わず見とれてしまった。
どいつもこいつもいい女だぜ、こんな美女たちをはべらせて、さぞかしいい気分で旅をしていたんだろうなぁ、フェイスの奴は。
ただ……女の扱いはどうやら悪いらしいね。彼女らが遊撃隊に配置されているのを見る限り、完全に捨て駒だろう。
俺達のように目的をもって遊撃隊を任せているわけじゃない、ただ適当に放り込まれただけだ。これじゃ、作戦の指揮も届きやしないだろう。
性悪でも美女が死ぬのは見てられないんでね、適当にあしらってから保護させてもらうぜ。
「ワイル・D・スワン……邪魔だ、どけ!」
「おー恐い恐い。でもねぇ、そう言われて退いちゃうほど、稀代の怪盗様は甘くないぜ」
指を鳴らすと、木の根が俺達を囲んだ。
このあたりは世界樹の加護が届く範囲、ラピスに指示が通る場所だ。
「頼むぜラピス、この戦場ど真ん中で怪盗が生き残るには、お前さんの力が必要だからな」
『大丈夫です、私が必ずあなたを守りますから! それと……な ん で あ の 女 達 に 色 目 使 っ て る ん で す か ぁ?』
おいおいおい! こんな時に何嫉妬してんだよ!?
まだ俺フリーだし、目の前の美女に見とれたっていいじゃないのよ、もう。
『あとでしっかり追及させてもらいますからねっ!』
「へいへい……気が抜けちまったけど、おっぱじめますか」
大怪盗ワイル・D・スワン、勇者パーティの美女たちを頂戴いたします!
作戦開始の三日目が来た。もう間もなくドラゴン達が来る。エルフから提供されたエポナホースにまたがり、僕達は木々の間に身を潜めていた。
僕の隣では、シラヌイとラズリが控えている。二人とも、迫りくる脅威に緊張しているみたいだ。
後方では、ラピスが祈祷場に控え、僕達をバックアップしてくれる。今頃リージョン達も持ち場についているんだろう。皆、どうか無事で帰ってきてくれよ。
「はいこれ、エネルギー補給しておきなさい」
「ありがとう」
シラヌイからサンドイッチを貰い、素早く食べきる。美味いな、料理が苦手だったシラヌイだけど、すっかり上手になっているな。
「いい具合に気分上がってるみたいじゃねぇの、お二人さん」
ワイルが木の上から顔を出した。彼にもサンドイッチを渡しつつ、
「背中は任せたよ」
「あいよ、任された。この怪盗と一緒に戦える事、光栄に思いな」
「お互いに帰らなきゃならない理由があるしね」
「ばーか、俺達だけじゃねぇだろ? ここに居る全員に帰る理由があるんだ。勿論、お前らにもな」
ワイルは兵達を見渡した。
「互いに笑って帰れるよう、精々力を尽くそうじゃねぇの」
「ああ、そうだね」
「……二人とも、刻限のようです」
ラズリが顔を上げた。
空を見れば、黒い影が見え始めていた。三日前よりも、ずっと多い。多分五千は来ているな。
それに、眼下には人間軍の軍勢も見える。数としては二万って所かな。
数の上では、エルフが有利……けどドラゴン一体でこっちの兵十人分の戦力を持っている。実質的な戦力は、相手が上だ。
地空両方から同時に攻め込む作戦か、上ばかりに気を取られていたら、下からの人間軍が襲ってくる。面倒な布陣だよ。
長期戦になれば僕達が不利。そのためにも求められるのは……。
「短期決戦……速やかに、フェイスとディアボロスを無力化する事だ……!」
◇◇◇
<フェイス視点>
「なぁんて考えてるんだろうなぁ、愛しのディックちゃんはよ」
エンディミオンを担いで森を見下ろすと、多数の気配を感じ取った。
案の定、エルフの軍勢が構えていやがったか。ワイルが居た時点で、作戦が筒抜けになっていたのは分かっていたよ。
だがなぁ、だからと言ってせこせこ作戦を変える必要はねぇんだわ。
理由なんて単純な話だ。いくら相手が策を講じようが、俺達はそいつを力でねじ伏せればいいだけなのだから。
だから俺達の作戦は、真正面のぶつかり合い。それだけでいい。シンプル故に、相手のどんな対応策をも無為にできるからな。
『ばっはっは! そもそも世界樹の巫女姉妹がいる国に余計な策を講じる意味もないからなぁ。すぐに世界樹が察知して対応してしまうからのぉ。ばっはっは!』
「だが龍王が来るとなれば話が違う、そうだろう?」
そもそも、ディアボロス自身が戦略兵器みたいなもんだからな。しかもこっちには、もう一匹楽しみな奴も居る。
炎獄龍カノン。シラヌイにぶつけるため持ってきた生物兵器だ。
ディックと恋仲の様だが、悪いね。お前は眼中にないんだわ。
何しろ俺とディックは深く繋がった仲だからな。精々邪魔しないよう、こいつで遊んでいてくれや。
「四天王が居る戦場にも、四星龍を送り込んだ。配置はばっちりだな」
「あ、あの、勇者様……私達は?」
おっと忘れていた。女どもをどうしてやろうかな。
こいつらにはもう飽きた。用が無くなった以上ここで消すつもりだし、適当に動かすか。
「お前らは好きに動け。俺に認められるよう、精々頑張りな」
『は、はい!』
健気だねぇ。ここで捨てられるとも知らず、のんきなもんだ。
俺にはもう、ディックだけがいればいい。あいつとの愛に邪魔なお前らは、とっとと消えな。
『さぁて、では始めようか! 戦の火ぶたを切らせてもらうぞぉ!』
「派手にやってやりな」
ディアボロスは口にブレスを溜めると、豪快に吐き出した。
◇◇◇
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ディアボロスが巨大な火球を吐き出した。
僕は飛ぶ斬撃を放ち、同時にラズリとシラヌイが拳圧とファイアボールを撃ち出す。
互いの攻撃が直撃するなり、派手な花火がはじけ飛ぶ。それが合図となったように、ドラゴン達が攻め込んできた。
「迎撃準備! 弩弓隊は矢を放て、魔術隊、魔法攻撃用意!」
ラズリの号令と共に矢と魔法の弾幕が展開される。濃密な弾幕の前にドラゴンは攻めあぐねるけど、その間に人間軍が迫ってくる。
ドラゴンと森が魔法と矢から身を守る盾になっているのか。けど地上には、僕達が居る。エルフが誇る名馬、エポナホースに乗った騎馬隊がね。
「私は上空のドラゴンを対処する、貴方達は地上の敵を!」
言うなりラズリは上空を駆け抜け、ドラゴンの軍勢に立ち向かっていく。よし、僕達も行こう。
「ディック。ここを上手く切り抜けたら」
「うん?」
「……朝まで、いっぱい愛してもらってもいい?」
「……やる気がでちゃうね」
彼女からのお誘いだ、なんとしてでも生き抜かないとな。
エポナホースを駆り、僕は木に登った。そのまま枝を軽やかに飛び交い、人間軍へ切り込んでいく。
エルフが育てたエポナホースは、木や岸壁を登る力を持った馬だ。普通の馬じゃ通れないようなぬかるみや悪路でも、軽々と走る事が出来る。それも音を立てずにだ。
地上の人間軍は木々を利用して、隠密行動をとろうとしているようだけど……無意味だよ。エルフ達の目と耳は良いんだ。
「物陰に隠れている兵に注意しろ、各自散開!」
『はっ!』
エルフ達は隠れている兵達を見つけ、先制攻撃を仕掛けた。
魔剣や魔槍の攻撃が敵兵を捉える。だけど、全てはじき返されてしまった。
まさか、龍装備か。
「ディアボロスに武具を提供されたんだな」
人間達の装備は、革鎧やレザーシールドといった軽装だ。だけど矢が当たっても、剣で斬られても、傷一つ付かない。
それどころか、持っている武器を突き出す度に見えない圧力が飛んで、木々がへし折られた。
「ドラゴンの革と牙を使った武具か、これは厄介だな!」
「余計に面倒な事してくれちゃって、大変なのよ、あんた達みたいなの相手にするのは! シルフィ、力を貸しなさい!」
『任せるがいい』
シラヌイは杖を振り、幻術を仕掛けた。
すると人間軍は、てんでバラバラの方向に攻撃を仕掛け始めた。その隙にエルフ達が敵兵をなぎ倒していく。
「へへ、エルフの幻影を見せてやったわ。どんなもんよ」
「ナイスシラヌイ! よし、このまま突っ切って」
『そうはさせない!』
僕達の頭上から、何者かが降りてくる。
咄嗟に馬を翻すと、フェイスの女達が攻撃を仕掛けてくる。どうやら、僕達めがけてまっすぐやってきたみたいだな。
「ようやく見つけたぞ、ディック。お前を殺して、そのオベリスクを奪い返してやる!」
「そして、取り戻すのよ。勇者様からの信頼を……!」
「何としてでも、ここで裏切り者のお前を倒す! 覚悟しなさい!」
「……随分な言われようだな、流石の僕もムカつくよ」
彼女達はフェイスに言われるがまま、僕を虐げてきた連中だ。
だから仲間意識なんかない、立ちふさがると言うのであれば、容赦なく叩き伏せてやる。
「そもそも、どうして君達はフェイスを慕う? 奴の本性は分かっているはずだ、それでもあいつについて行く理由はなんだい?」
『お前なんかに話す理由はない!!!』
「そうか……元々興味もなかったけどね!」
刀とオベリスクを握り、エポナホースから飛び出す。
女剣士が迎え撃つけど、オベリスクで剣を粉砕し、刀で押し返した。
魔法使いは詠唱を終える前に煌刃剣で止め、僧侶に関しても回復術を使う前に斬撃で威嚇した。相手が女性であっても、戦場に来たからには容赦しないよ。
彼女達では、僕の足元にも及ばないだろう。正直、戦うだけ時間の無駄だ。
「おっとっと、お前さん結構鬼だなぁ」
そんな時に、ワイルが現れた。
「美女に乱暴しちゃだめだぜ? 相手がどれだけ性悪でも、女は大事にしないとな。って事で、ここは俺に任せな。美女の足止めくらいはやってやるさ」
「助かる、頼んだよワイル!」
「ディック、早く馬に乗りなさい!」
僕の馬を引き、シラヌイがやってくる。すぐに馬へ乗り込み、ワイルに彼女達を任せた。
稀代の大怪盗なら、勇者パーティの相手もできるはず。頼んだよ!
◇◇◇
「って事で、役者を代えさせてもらうぜ。ここから先は、俺の怪盗ショーだ」
勇者パーティの一面を見渡し、俺は思わず見とれてしまった。
どいつもこいつもいい女だぜ、こんな美女たちをはべらせて、さぞかしいい気分で旅をしていたんだろうなぁ、フェイスの奴は。
ただ……女の扱いはどうやら悪いらしいね。彼女らが遊撃隊に配置されているのを見る限り、完全に捨て駒だろう。
俺達のように目的をもって遊撃隊を任せているわけじゃない、ただ適当に放り込まれただけだ。これじゃ、作戦の指揮も届きやしないだろう。
性悪でも美女が死ぬのは見てられないんでね、適当にあしらってから保護させてもらうぜ。
「ワイル・D・スワン……邪魔だ、どけ!」
「おー恐い恐い。でもねぇ、そう言われて退いちゃうほど、稀代の怪盗様は甘くないぜ」
指を鳴らすと、木の根が俺達を囲んだ。
このあたりは世界樹の加護が届く範囲、ラピスに指示が通る場所だ。
「頼むぜラピス、この戦場ど真ん中で怪盗が生き残るには、お前さんの力が必要だからな」
『大丈夫です、私が必ずあなたを守りますから! それと……な ん で あ の 女 達 に 色 目 使 っ て る ん で す か ぁ?』
おいおいおい! こんな時に何嫉妬してんだよ!?
まだ俺フリーだし、目の前の美女に見とれたっていいじゃないのよ、もう。
『あとでしっかり追及させてもらいますからねっ!』
「へいへい……気が抜けちまったけど、おっぱじめますか」
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