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14話 ポンコツンデレサキュバス
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<シラヌイ視点>
私が帰ってきたのは、夕方になった頃だ。
あっという間に殲滅したから、事後処理もすぐに終わらせられた。特にディックが効率よく部下を動かしてくれたのが大きい。あいつ、本当に私より仕事が出来る。
「……あーもう、何なの、あいつ本当になんなの?」
ディックは報告書を書きにどっか行っている。近くに居なくてよかった、今の私、絶対人に見せられない顔になっているから。
「あんな素直に真っ直ぐ言わないでよ、私はそんな、人間に助けられる程落ちぶれてなんかないんだし」
頬に触れると熱いのが分かる。あんにゃろうが言った中でも一番破壊力があったわ……。
「あらお帰りなさいシラヌイちゃん、約束通りお夕飯までに帰ってこれたわねぇ、偉い偉い」
背後からメイライトに抱きつかれた。疲れてる時にやられると少しイラっとくる。
「それでどうしたのぉ、お顔が随分赤いじゃない。ディックちゃんに口説かれたのかしら」
「ばっ! んなわけないでしょうが!」
変な事を言うんじゃない、あんたのせいで思いだしちゃったじゃないの。
ド直球に恥ずかしい事言う奴が一番苦手なのよ私は。どーせ私に変な哀れみを持ってあんな事言ったに決まってるんだから。絶対深い意味なんかないに決まってるんだから! どーせリップサービスの嘘か何かに決まって……。
「でもあの子が母さんって言葉に付ける時って、大抵本気の時なのよねぇ」
「えっ……じゃああの言葉って本当に……」
「あら、ぼろが出ちゃったわね」
「! か、カマかけたの!?」
「どっちかと言うとシラヌイちゃんが自滅しただけじゃない」
「~~~! 余計な事言うなぁ!」
「ちょっと、腕ぐるぐるして殴ってこないでよ、地味に痛いわぁ」
「うっさいうっさいうっさい! 全部あいつが悪いんだからぁ!」
こっちの心乱すような事ばっかりやらかして。おまけにいっつも表情崩さずクールに恥ずかしい事言うし。それで大騒ぎする私が馬鹿みたいじゃないの!
全く、元ゆーしゃパーティの剣士とか、とんだ厄介者を抱えちゃったもんだわ!
◇◇◇
<ディック視点>
「よう、活躍したようじゃないか、ディック」
僕は作戦結果の報告をした後、通りかかったリージョンに呼び止められた。
リージョンは激励するように背を叩いて来る。力が強くてちょっと痛い。
「どうだった、シラヌイは。凄いサキュバスだっただろう?」
「ああ、驚いたよ。あれで四天王最弱なんて嘘だろ?」
「当然だ、あいつが勝手に嘯いているだけで、実際の力は横ばいよ。シラヌイの場合、劣等感が強すぎるのが問題なんだがな。それと、ご苦労だったな。人間軍の部隊長を処理したそうじゃないか」
「気を遣う事はないよ。言いたくはないが、仕事には慣れている。彼女にも言ったけど、僕はあくまで僕が守ると決めたもののために力を使うだけ。そう母さんから教わったから」
「とことんまでブレない奴だな」
リージョンは苦笑した。
「どれ、今日ちょっと飲みに付き合え。祝勝会でもやろう、これは上司命令だ」
「僕の上司はシラヌイだけど?」
「そのシラヌイの上司が俺なんだ、問題あるか? ソユーズも誘ってやるから来い」
言うなりリージョンは空間を割り裂き、無理矢理ソユーズを引っ張り出してきた。力の無駄遣いだな。
「……何をする、リージョン」
「俺が呼び出したのだから聞くまでもないだろう。ディックの初勝利の宴だ。どうせ仕事終わったんだろうし、お前も行くぞ。はっはっは!」
「……この酒好きめ、結局飲みに行く口実を作りたいだけだろう」
「健康診断で医者に咎められても知らないぞ」
飲むならシラヌイとがいいのだけど、あまり傍に居すぎるのもよくないか。
ちょっとお節介を焼きすぎたのか、シラヌイは怒っているみたいだ。今近くに居るのは、かえってよくないしな。
シラヌイの印象もあるだろうし、上司の上司に付きあうのも仕事の内か。
「ただ……彼女を差し置いて遊んでいるようで、気が引けるけどな……」
◇◇◇
<メイライト視点>
「だから本っ当にムカつくのよあいつは!」
私は今日も今日とて、シラヌイちゃんに付きあって居酒屋にいます。
この所シラヌイちゃんから誘ってくれる事が多くて、私嬉しいわぁ。前はずっと仕事仕事で素っ気なくって、お姉さんちょっと寂しかったんだからぁ。
それにこの子ってば、彼の文句言っているようでねぇ……。
「大体素面であんな恥ずかしい事どうして言えるのよ。私は別にマザコンに守ってもらう必要なんざ無いっての! 結局私守るってのも大好きなお母さんが絡んでるからでしょうが! ちょっと剣術の腕が立つくらいで調子乗ってんなっての! いやまぁ、あいつがあの隊長処理しなきゃもっと長引いたとは思うけど、一応元味方を相手にしてんだからもうちょっと気にしろっていうか……変な気後れが出来たらどうすんのさあんの馬鹿は!」
こっちからしたらずっとこんな感じ。のろけ話ばっかりされてるのよぉ。
悪口になれてないわねー。言葉の節々からいい子オーラ駄々洩れで、ほっこりしちゃうわねぇ。サキュバスなのに恋愛下手で乙女なんだから。
相談風自慢なら大歓迎よ。私そう言うの大好きだし。他人の幸せを観察するのも趣味だし、何より私も四人の夫を持つ妻だものぉ。幸せオーバーフローしてるから恋自慢されても何にも思わないわぁ。
「はぁ、シラヌイちゃんを見てると思いだすわぁ、第三夫との大恋愛。一,二,四も燃える恋をしたけれど、第三夫との恋は最初喧嘩から始まったからぁ」
「あのね、私とあいつはそんな関係じゃないの。あくまで部下と上司なだけ。いい? 変な事言ったら今度こそ怒るからね!」
「いやーんこわーい。すいませーん、この子に追加でエール一杯あげちゃってー♡」
こんな時は酔わせましょ、そうしましょ♪ ぐでんぐでんに酔わせてしまえば、こっちのものよん。
「私はあんたみたいな尻軽じゃないのよ。そう簡単に男に心許してたまるもんですか」
「貴方サキュバスなのに硬派すぎるわよぉ、でもそこも好きよ、マジ卍~」
「なんかむかつくからやめい。顔面にファイアボール叩き込んだろか」
「だぁってぇ、シラヌイちゃんがこうやって飲みに誘ってくれるようになったのも嬉しいのよ。前ならいっつも仕事ばっかりで遊んでくれなかったしぃ、こうやって二人で飲みに来れるのがすっごく楽しいんだから」
「……いやまぁ、あいつが時間作ってくれるし、私も不満あるから聞いて欲しいし、聞いてくれるのがあんたしか居ないから仕方ないし」
「あら? それってディックちゃんのお陰って事にならなぁい?」
「なってない! どんな拡大解釈してんのよ!」
「気づいていないなら言うけどぉ、最近のシラヌイちゃんってばすんごく可愛いのよぉ。ディックちゃんの一声や行動をいちいち意識しちゃってぇ。これってもうまさに」
『恋する乙女みたいだもんねぇ~』
あら、急に割り込んで誰かしら。黒子服着てるから顔が分からないわねぇ。
「……誰あんた?」
『そんなの別にいいじゃん。恋バナしてたみたいだからちょっと立ち聞きー』
「まぁ気が合うじゃなーい。どこのどなたか存じ上げないけど、なんて呼べばいいかしらー」
『マッちゃんでいいよぉ。それよりもさっきから気になってたけど、貴方達ディックの話でもしてたのー?』
「そうよぉ、最近魔王軍に入ってきた子で、この四天王シラヌイちゃんの部下なのよぉ」
『うっそーまっじー? そういや魔王軍で働く友達が言ってたんだけど、ディックって軍内ですっごく人気があるんでしょー?』
「はぁ? あいつ人間よ、それがどうして魔王軍で人気出るのよ」
「あらシラヌイちゃん知らないの? 彼本当に人気あるのよ?」
『仕事出来るしイケメンだし、性格も真面目でしかも凄腕の剣士! なのに結構人付き合いも良くって気遣い上手だし。そんなの人間だってほっとくわけないじゃないのぉ』
「え、嘘。あのマザコンそんなに人気あんの? ちょっ、それ聞いてない」
「正味な話、私も欲しいのよぉ。ディックちゃんに文句あるなら頂戴よぉ」
「え、あ……別に持っていきたければ持っていけば? あいつが居なくても私はやっていけるし……今まで一人でやってた頃に戻るだけだし……」
んもぉ、ちょっと涙目になって声震わせて。素直じゃないわねぇ。
「じゃあ持ってっちゃおうかなー」
「で、でもね! あいつ本っ当に筋金入りのマザコンだから、日がな一日母親の話ばっかりさせられるわよ。二言目には母さん母さん煩くてさぁ。第一私についてきてんのも私があいつの母親に似てるからって理由だし。おまけに思った事すぐ口にするから、あんたの部下になったら絶対母親との比較をつらつら言い続けると思うわよ。私だったら絶対おすすめしないけどなー。多分あいつの手綱取れるの私しかいないんじゃないかなー」
脂汗だらだら流しながら彼の悪口言って、私に持っていかれないよう必死になっちゃってるわねぇ。
分かりやすい子だこと、本当は持ってかれたくないんじゃない。
「そうねぇ、そんなにお母さん大好きじゃあ、止めといた方がいいのかしらぁ。私もお母さんと比較されるの嫌だものぉ。やっぱりシラヌイちゃんじゃないとダメよねぇ」
「で、でしょう! あいつは私じゃないと使いこなせないんだから、あんたじゃあ絶対持て余すに決まってるわよ! 全く、迷惑極まりない人間なんだから!」
うふん、意味を全部反対に捉えると面白い事この上ないわぁ。
「ねぇマッちゃんは……あら?」
「居なくなってる。なんだったのあいつ……」
◇◇◇
『んー、やっぱり思惑通り事が進んだか。さっすがワシ!』
ワシの占い通り、シラヌイとディックは相性バッチリだったみたい。
二人が飲みに行くのを聞きつけて後を付けてみたけど、面白い話が聞けて満足満足。部下の色恋沙汰に首を突っ込みたくなる性質なのよねぇワシ。
『だってワシ、女の子だもん』
話し方とかいつも顔見せないとかで誤解されがちだけど、ワシ女なのよ。となれば恋愛話に興味向くのは当たり前。占いもだーい好き。
『さーてと、二人がどんなふうに転がるのか、今から楽しみだーい☆』
今度はディッ君にちょっかい出しにいこーっとぉ。そんじゃ突撃ー!
私が帰ってきたのは、夕方になった頃だ。
あっという間に殲滅したから、事後処理もすぐに終わらせられた。特にディックが効率よく部下を動かしてくれたのが大きい。あいつ、本当に私より仕事が出来る。
「……あーもう、何なの、あいつ本当になんなの?」
ディックは報告書を書きにどっか行っている。近くに居なくてよかった、今の私、絶対人に見せられない顔になっているから。
「あんな素直に真っ直ぐ言わないでよ、私はそんな、人間に助けられる程落ちぶれてなんかないんだし」
頬に触れると熱いのが分かる。あんにゃろうが言った中でも一番破壊力があったわ……。
「あらお帰りなさいシラヌイちゃん、約束通りお夕飯までに帰ってこれたわねぇ、偉い偉い」
背後からメイライトに抱きつかれた。疲れてる時にやられると少しイラっとくる。
「それでどうしたのぉ、お顔が随分赤いじゃない。ディックちゃんに口説かれたのかしら」
「ばっ! んなわけないでしょうが!」
変な事を言うんじゃない、あんたのせいで思いだしちゃったじゃないの。
ド直球に恥ずかしい事言う奴が一番苦手なのよ私は。どーせ私に変な哀れみを持ってあんな事言ったに決まってるんだから。絶対深い意味なんかないに決まってるんだから! どーせリップサービスの嘘か何かに決まって……。
「でもあの子が母さんって言葉に付ける時って、大抵本気の時なのよねぇ」
「えっ……じゃああの言葉って本当に……」
「あら、ぼろが出ちゃったわね」
「! か、カマかけたの!?」
「どっちかと言うとシラヌイちゃんが自滅しただけじゃない」
「~~~! 余計な事言うなぁ!」
「ちょっと、腕ぐるぐるして殴ってこないでよ、地味に痛いわぁ」
「うっさいうっさいうっさい! 全部あいつが悪いんだからぁ!」
こっちの心乱すような事ばっかりやらかして。おまけにいっつも表情崩さずクールに恥ずかしい事言うし。それで大騒ぎする私が馬鹿みたいじゃないの!
全く、元ゆーしゃパーティの剣士とか、とんだ厄介者を抱えちゃったもんだわ!
◇◇◇
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「よう、活躍したようじゃないか、ディック」
僕は作戦結果の報告をした後、通りかかったリージョンに呼び止められた。
リージョンは激励するように背を叩いて来る。力が強くてちょっと痛い。
「どうだった、シラヌイは。凄いサキュバスだっただろう?」
「ああ、驚いたよ。あれで四天王最弱なんて嘘だろ?」
「当然だ、あいつが勝手に嘯いているだけで、実際の力は横ばいよ。シラヌイの場合、劣等感が強すぎるのが問題なんだがな。それと、ご苦労だったな。人間軍の部隊長を処理したそうじゃないか」
「気を遣う事はないよ。言いたくはないが、仕事には慣れている。彼女にも言ったけど、僕はあくまで僕が守ると決めたもののために力を使うだけ。そう母さんから教わったから」
「とことんまでブレない奴だな」
リージョンは苦笑した。
「どれ、今日ちょっと飲みに付き合え。祝勝会でもやろう、これは上司命令だ」
「僕の上司はシラヌイだけど?」
「そのシラヌイの上司が俺なんだ、問題あるか? ソユーズも誘ってやるから来い」
言うなりリージョンは空間を割り裂き、無理矢理ソユーズを引っ張り出してきた。力の無駄遣いだな。
「……何をする、リージョン」
「俺が呼び出したのだから聞くまでもないだろう。ディックの初勝利の宴だ。どうせ仕事終わったんだろうし、お前も行くぞ。はっはっは!」
「……この酒好きめ、結局飲みに行く口実を作りたいだけだろう」
「健康診断で医者に咎められても知らないぞ」
飲むならシラヌイとがいいのだけど、あまり傍に居すぎるのもよくないか。
ちょっとお節介を焼きすぎたのか、シラヌイは怒っているみたいだ。今近くに居るのは、かえってよくないしな。
シラヌイの印象もあるだろうし、上司の上司に付きあうのも仕事の内か。
「ただ……彼女を差し置いて遊んでいるようで、気が引けるけどな……」
◇◇◇
<メイライト視点>
「だから本っ当にムカつくのよあいつは!」
私は今日も今日とて、シラヌイちゃんに付きあって居酒屋にいます。
この所シラヌイちゃんから誘ってくれる事が多くて、私嬉しいわぁ。前はずっと仕事仕事で素っ気なくって、お姉さんちょっと寂しかったんだからぁ。
それにこの子ってば、彼の文句言っているようでねぇ……。
「大体素面であんな恥ずかしい事どうして言えるのよ。私は別にマザコンに守ってもらう必要なんざ無いっての! 結局私守るってのも大好きなお母さんが絡んでるからでしょうが! ちょっと剣術の腕が立つくらいで調子乗ってんなっての! いやまぁ、あいつがあの隊長処理しなきゃもっと長引いたとは思うけど、一応元味方を相手にしてんだからもうちょっと気にしろっていうか……変な気後れが出来たらどうすんのさあんの馬鹿は!」
こっちからしたらずっとこんな感じ。のろけ話ばっかりされてるのよぉ。
悪口になれてないわねー。言葉の節々からいい子オーラ駄々洩れで、ほっこりしちゃうわねぇ。サキュバスなのに恋愛下手で乙女なんだから。
相談風自慢なら大歓迎よ。私そう言うの大好きだし。他人の幸せを観察するのも趣味だし、何より私も四人の夫を持つ妻だものぉ。幸せオーバーフローしてるから恋自慢されても何にも思わないわぁ。
「はぁ、シラヌイちゃんを見てると思いだすわぁ、第三夫との大恋愛。一,二,四も燃える恋をしたけれど、第三夫との恋は最初喧嘩から始まったからぁ」
「あのね、私とあいつはそんな関係じゃないの。あくまで部下と上司なだけ。いい? 変な事言ったら今度こそ怒るからね!」
「いやーんこわーい。すいませーん、この子に追加でエール一杯あげちゃってー♡」
こんな時は酔わせましょ、そうしましょ♪ ぐでんぐでんに酔わせてしまえば、こっちのものよん。
「私はあんたみたいな尻軽じゃないのよ。そう簡単に男に心許してたまるもんですか」
「貴方サキュバスなのに硬派すぎるわよぉ、でもそこも好きよ、マジ卍~」
「なんかむかつくからやめい。顔面にファイアボール叩き込んだろか」
「だぁってぇ、シラヌイちゃんがこうやって飲みに誘ってくれるようになったのも嬉しいのよ。前ならいっつも仕事ばっかりで遊んでくれなかったしぃ、こうやって二人で飲みに来れるのがすっごく楽しいんだから」
「……いやまぁ、あいつが時間作ってくれるし、私も不満あるから聞いて欲しいし、聞いてくれるのがあんたしか居ないから仕方ないし」
「あら? それってディックちゃんのお陰って事にならなぁい?」
「なってない! どんな拡大解釈してんのよ!」
「気づいていないなら言うけどぉ、最近のシラヌイちゃんってばすんごく可愛いのよぉ。ディックちゃんの一声や行動をいちいち意識しちゃってぇ。これってもうまさに」
『恋する乙女みたいだもんねぇ~』
あら、急に割り込んで誰かしら。黒子服着てるから顔が分からないわねぇ。
「……誰あんた?」
『そんなの別にいいじゃん。恋バナしてたみたいだからちょっと立ち聞きー』
「まぁ気が合うじゃなーい。どこのどなたか存じ上げないけど、なんて呼べばいいかしらー」
『マッちゃんでいいよぉ。それよりもさっきから気になってたけど、貴方達ディックの話でもしてたのー?』
「そうよぉ、最近魔王軍に入ってきた子で、この四天王シラヌイちゃんの部下なのよぉ」
『うっそーまっじー? そういや魔王軍で働く友達が言ってたんだけど、ディックって軍内ですっごく人気があるんでしょー?』
「はぁ? あいつ人間よ、それがどうして魔王軍で人気出るのよ」
「あらシラヌイちゃん知らないの? 彼本当に人気あるのよ?」
『仕事出来るしイケメンだし、性格も真面目でしかも凄腕の剣士! なのに結構人付き合いも良くって気遣い上手だし。そんなの人間だってほっとくわけないじゃないのぉ』
「え、嘘。あのマザコンそんなに人気あんの? ちょっ、それ聞いてない」
「正味な話、私も欲しいのよぉ。ディックちゃんに文句あるなら頂戴よぉ」
「え、あ……別に持っていきたければ持っていけば? あいつが居なくても私はやっていけるし……今まで一人でやってた頃に戻るだけだし……」
んもぉ、ちょっと涙目になって声震わせて。素直じゃないわねぇ。
「じゃあ持ってっちゃおうかなー」
「で、でもね! あいつ本っ当に筋金入りのマザコンだから、日がな一日母親の話ばっかりさせられるわよ。二言目には母さん母さん煩くてさぁ。第一私についてきてんのも私があいつの母親に似てるからって理由だし。おまけに思った事すぐ口にするから、あんたの部下になったら絶対母親との比較をつらつら言い続けると思うわよ。私だったら絶対おすすめしないけどなー。多分あいつの手綱取れるの私しかいないんじゃないかなー」
脂汗だらだら流しながら彼の悪口言って、私に持っていかれないよう必死になっちゃってるわねぇ。
分かりやすい子だこと、本当は持ってかれたくないんじゃない。
「そうねぇ、そんなにお母さん大好きじゃあ、止めといた方がいいのかしらぁ。私もお母さんと比較されるの嫌だものぉ。やっぱりシラヌイちゃんじゃないとダメよねぇ」
「で、でしょう! あいつは私じゃないと使いこなせないんだから、あんたじゃあ絶対持て余すに決まってるわよ! 全く、迷惑極まりない人間なんだから!」
うふん、意味を全部反対に捉えると面白い事この上ないわぁ。
「ねぇマッちゃんは……あら?」
「居なくなってる。なんだったのあいつ……」
◇◇◇
『んー、やっぱり思惑通り事が進んだか。さっすがワシ!』
ワシの占い通り、シラヌイとディックは相性バッチリだったみたい。
二人が飲みに行くのを聞きつけて後を付けてみたけど、面白い話が聞けて満足満足。部下の色恋沙汰に首を突っ込みたくなる性質なのよねぇワシ。
『だってワシ、女の子だもん』
話し方とかいつも顔見せないとかで誤解されがちだけど、ワシ女なのよ。となれば恋愛話に興味向くのは当たり前。占いもだーい好き。
『さーてと、二人がどんなふうに転がるのか、今から楽しみだーい☆』
今度はディッ君にちょっかい出しにいこーっとぉ。そんじゃ突撃ー!
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