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124 マッチョさん、代役を引き受ける
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エルフの弓兵500というのは大盤振る舞いだったようだ。一人で人間の射手十人分の仕事をする。単純に弓兵5000とほぼ変わらないのだ。凄い早さで魔物が減っているようだ。
「私がいなくても勝てそうでしたね。」
色々私の能力を試せたので私たちは城門内に引っ込んで戦が終わるのを待った。
「単に魔法の脅威が無くなるだけでも、相当にラクになるのう。これからマッチョ君たちは旅立つワケだから、やっぱり以前と同じように魔法は来るじゃろうが・・・」
「いや・・・首を狙ってくる我らの方に魔王は注力するのではないのかな?魔石を追ってくるだろうか?」
「どうでしょう・・・魔王にとっての魔石の重要度次第でしょうか。」
うーむ・・・
「マッチョさんはどう思われますか?」
フィンさんに促された。
「魔物が魔石を狙うのは単なる魔物の習性じゃないでしょうか。魔王の意志では無いような気がします。本気で魔石を狙うのであったら、魔王自らが出陣してくるでしょうから。」
「封印されて魔王が動けない可能性もあるじゃろうに。」
「それはそうなんですが・・・魔王の封印方法を大精霊から教えてもらったときに見えたのですが、どうやら毎回同じ場所で封印されているらしいんです。」
それはそれで間抜けな話にも聞こえるが、魔王は移動したくない理由があるのかもしれない。
ドロスさんは勇者と魔王がすれ違いになって、人間国が攻められることを危惧したのだろう。
「ドロス、心配無いニャー。固有種なしの5000なら普通に戦えニャいこともニャいと思うニャー。それに魔王の居場所も距離も、ニャンとなく分かるんだニャー。」
「そんな報告は聞いてないぞ・・・」
「報告するヒマも無かったですから。魔法攻撃を受けてから攻撃位置を精霊が教えてくれるようになったんです。魔法は痛かったんで精霊に助けて欲しかったですけれどね・・・」
本格的に精霊が弱っているのかもしれないな。魔王と対峙するまで精霊の力は借りられないのかもしれない。私は精霊がどういう仕組みで力を得て、今現在弱っているのかをドロスさんたちに説明した。
「ふーむ・・・ではこれが終わったら魔物は焼かなくてはいかんのう。」
「ニャンコ族の森の魔物も焼けば良かったニャー。でも焼いちゃうと美味しそうな匂いでお腹がすいちゃうからニャー・・・」
勝手に消えるという利便性があると、焼くというひと手間が面倒になるのだろう。そうやって魔王はじわじわと精霊を追い込んできたのだ。
「もう一つ気がかりなことがあるのですが。」
「魔物の数のことじゃろう?たしかに戦力を分散させる意味が分からん。三万も来れば王都でも持たんかもしれんぞ。」
「あくまで想像ですが、魔王は魔物を5000しか一気に召還できないんじゃないでしょうか?」
魔物を大陸に召還するというのは精霊の妨害を受けながらやっているのだ。上限があってもおかしくはない。その辺の戦いのことも説明した。
「可能性はあるが・・・こういう戦で楽観視はできんよ。しかし城壁も健在じゃし材料もある。魔王がどこにいるのか分かっているのであれば、元凶を断つのが一番じゃろう。戦力が一気に減るのはしんどいがのう・・・」
議論をしているうちに、外での戦が終わったようだ。
「今回はなんとか無事に終わったみたいですね。」
魔法が来なければ城壁からの弓兵だけで片がつく。といういよりも、弓というものはパーティの一員として用いるのではなく、こうやって矢の雨を降らすために集団で運用するものなのではないだろうか。
出発前に補給をどうするかという話になった。
限界領域より先に食料があるのかどうか、誰も分からないのだ。空腹で魔王とは戦えない。
馬車に積み込める食料とタンパク質はせいぜい一週間分というところか・・・
「最終的には限界領域を渡って人間族が補給を送る。仮に敗れたとしても、帰ってきて再起すればよかろう。」
うーむ・・・一週間・・・帰路を考えると三日で到着しなければいけないのか。馬で引くには飼葉も水も必要だというのに、一週間も持つのだろうか?
「ニャンで馬車で魔王のところに行くって話になるのかニャー・・・」
「僕らは馬に乗れませんし、馬車が一番速い乗り物ですから。」
「そうじゃニャくて、マッチョが車を引けばいいんじゃニャいかニャー。たぶん馬よりも早く到着すると思うニャー。」
・・・その手があったか!
「ミャオさん、妙案です。それで行きましょう。」
「良いのか?マッチョ殿が馬代わりになるなど・・・」
「早く着くのであれば、私が車を引けばいいでしょう。」
おそらく今現在もっとも速くてもっとも力強く車を引ける動物は私なのだ。馬の分の食料と水を我々の食料にもできる。
私の中にあるトレーニーの名残なのだろう。タンパク質を欠いたまま移動してそのまま魔王を封印するなど、私には耐えられそうにないのだ。
「私がいなくても勝てそうでしたね。」
色々私の能力を試せたので私たちは城門内に引っ込んで戦が終わるのを待った。
「単に魔法の脅威が無くなるだけでも、相当にラクになるのう。これからマッチョ君たちは旅立つワケだから、やっぱり以前と同じように魔法は来るじゃろうが・・・」
「いや・・・首を狙ってくる我らの方に魔王は注力するのではないのかな?魔石を追ってくるだろうか?」
「どうでしょう・・・魔王にとっての魔石の重要度次第でしょうか。」
うーむ・・・
「マッチョさんはどう思われますか?」
フィンさんに促された。
「魔物が魔石を狙うのは単なる魔物の習性じゃないでしょうか。魔王の意志では無いような気がします。本気で魔石を狙うのであったら、魔王自らが出陣してくるでしょうから。」
「封印されて魔王が動けない可能性もあるじゃろうに。」
「それはそうなんですが・・・魔王の封印方法を大精霊から教えてもらったときに見えたのですが、どうやら毎回同じ場所で封印されているらしいんです。」
それはそれで間抜けな話にも聞こえるが、魔王は移動したくない理由があるのかもしれない。
ドロスさんは勇者と魔王がすれ違いになって、人間国が攻められることを危惧したのだろう。
「ドロス、心配無いニャー。固有種なしの5000なら普通に戦えニャいこともニャいと思うニャー。それに魔王の居場所も距離も、ニャンとなく分かるんだニャー。」
「そんな報告は聞いてないぞ・・・」
「報告するヒマも無かったですから。魔法攻撃を受けてから攻撃位置を精霊が教えてくれるようになったんです。魔法は痛かったんで精霊に助けて欲しかったですけれどね・・・」
本格的に精霊が弱っているのかもしれないな。魔王と対峙するまで精霊の力は借りられないのかもしれない。私は精霊がどういう仕組みで力を得て、今現在弱っているのかをドロスさんたちに説明した。
「ふーむ・・・ではこれが終わったら魔物は焼かなくてはいかんのう。」
「ニャンコ族の森の魔物も焼けば良かったニャー。でも焼いちゃうと美味しそうな匂いでお腹がすいちゃうからニャー・・・」
勝手に消えるという利便性があると、焼くというひと手間が面倒になるのだろう。そうやって魔王はじわじわと精霊を追い込んできたのだ。
「もう一つ気がかりなことがあるのですが。」
「魔物の数のことじゃろう?たしかに戦力を分散させる意味が分からん。三万も来れば王都でも持たんかもしれんぞ。」
「あくまで想像ですが、魔王は魔物を5000しか一気に召還できないんじゃないでしょうか?」
魔物を大陸に召還するというのは精霊の妨害を受けながらやっているのだ。上限があってもおかしくはない。その辺の戦いのことも説明した。
「可能性はあるが・・・こういう戦で楽観視はできんよ。しかし城壁も健在じゃし材料もある。魔王がどこにいるのか分かっているのであれば、元凶を断つのが一番じゃろう。戦力が一気に減るのはしんどいがのう・・・」
議論をしているうちに、外での戦が終わったようだ。
「今回はなんとか無事に終わったみたいですね。」
魔法が来なければ城壁からの弓兵だけで片がつく。といういよりも、弓というものはパーティの一員として用いるのではなく、こうやって矢の雨を降らすために集団で運用するものなのではないだろうか。
出発前に補給をどうするかという話になった。
限界領域より先に食料があるのかどうか、誰も分からないのだ。空腹で魔王とは戦えない。
馬車に積み込める食料とタンパク質はせいぜい一週間分というところか・・・
「最終的には限界領域を渡って人間族が補給を送る。仮に敗れたとしても、帰ってきて再起すればよかろう。」
うーむ・・・一週間・・・帰路を考えると三日で到着しなければいけないのか。馬で引くには飼葉も水も必要だというのに、一週間も持つのだろうか?
「ニャンで馬車で魔王のところに行くって話になるのかニャー・・・」
「僕らは馬に乗れませんし、馬車が一番速い乗り物ですから。」
「そうじゃニャくて、マッチョが車を引けばいいんじゃニャいかニャー。たぶん馬よりも早く到着すると思うニャー。」
・・・その手があったか!
「ミャオさん、妙案です。それで行きましょう。」
「良いのか?マッチョ殿が馬代わりになるなど・・・」
「早く着くのであれば、私が車を引けばいいでしょう。」
おそらく今現在もっとも速くてもっとも力強く車を引ける動物は私なのだ。馬の分の食料と水を我々の食料にもできる。
私の中にあるトレーニーの名残なのだろう。タンパク質を欠いたまま移動してそのまま魔王を封印するなど、私には耐えられそうにないのだ。
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