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64 マッチョさん、抗う
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フェイスさんを先頭にして私たちは高台まで走った。みんな早いな。龍族の二人はさらに早く、もう交戦を始めている。護衛は精鋭10といったところか。
「龍族下がれ!俺とマッチョが前衛をやる。背後と側面を援護しろ!」
「承知!」
精鋭と言ってもやはりトロールだ。私とフェイスさんの二人でサクサクと潰せる。奥の方にひときわ派手な恰好をしたトロールがいた。大きさは普通のトロールと変わらないが、あれが固有種だろう。大声で威嚇してくる。
ひゅぃ、という音が聞こえたあとに、固有種の目に矢が刺さった。
すかさずフェイスさんが一刀で首を切り落とす。
「なんだかあっけなかったですね。」
「事前の備えがあればこそだ。挟み撃ちにされなくてラクだった。ツイグ、お手柄だな。」
「ういっす!」
「だが俺やマッチョの頭に当たったらどうするつもりだったんだ?次は味方がいない射角から打て。」
「う、ういっす・・・」
固有種に向き合うだけの勇気まで手に入れたか。ツイグの成長は頼もしいな。だが流れ矢を食らうのは勘弁してほしい。
「これで流れが変わるはずだ。あとは各個撃破してお終いだ。」
「・・・全体的に押されてませんか?」
「・・・あれ?」
フェイスさんが考えながら戦局を見ている。なにかに気が付いたようだ。
「・・・ヤバい!俺たちも横から突っ込むぞ!走れ!」
私たちは意味も分からないままフェイスさんに走ってついていった。
「俺が倒したやつ、ただの斥候だったんすかね?固有種にしては簡単でしたもんね。」
「違う!固有種が二体いたんだ!身体強化型の固有種が乱戦の突破口になっている。統率型がいなくても数と組織で割られるぞ!急げ!」
こちらは高台で、あちらは平地だ。間に合うのだろうか?
乱戦の横に出た。敵陣の横から攻撃することは間違いではないのだろうが、数が多すぎる。固有種まで届くだろうか?
「ツイグは本体後方まで行って援護してやれ!龍族は俺たち二人の背後を頼む。マッチョ、固有種まで突っ込むぞ!」
「ういっす!」
「承知した!」
「分かりました。」
固有種がいるであろう方向に進んではいるが、いかんせん敵が多い。四人ではあっという間に囲まれる。後衛の龍族が厳しそうだ。
「マッチョ、前衛頼む。龍族はマッチョの横を固めろ!しんがりは俺がやる。速度最優先で龍族が吹っ飛ばされている方向に進め!」
やることはやっているが、敵がとにかく多い。倒しても倒しても次から次へやって来る。こういう時のコツはあまり戦闘だとは思わないことだ。トレーニングだと思えば敵をいくらでも叩ける。
しかしそうは言ったものの、私の前衛では敵の数が多すぎてこれ以上は進めない。かといって後衛と入れ替える余裕も無い。私たちは完全に敵軍の中で孤立してしまった。このまま潰されるのか?いや固有種の気が変わったらこちらから潰しに来るかもしれない。それならまずは敵の数を減らしていけば・・・
清流まで盛大に吹っ飛ばされた前衛の龍族の中に、ジェイさんが見えた。
あれだけ強そうだったのに、固有種を抑えきれなかったか。
いや、よそ見をしているわけにはいかない。一歩でも固有種に近づけられればこちらに注意を引きつけられるかもしれない。
青白き閃光が清流からあふれ出しているところが見えた。
なにかが飛ぶ姿が見えた。
龍族だ。青白く光っている。ジェイさんか?
三叉鎗を好き放題に振り回して敵陣に単騎で突っ込んでいく。青白い光がある先で、トロールたちが宙を舞っている。
トロールの動きが止まった。ものの数十秒の突撃で固有種を倒したらしい。
龍族の、いやジェイさんの雄叫びが聞こえる。
「あれが・・・精霊の恩寵なのか・・・」龍族の二人が戦いながらも驚きを隠せずにいる。
戦いの流れが変わった。龍族は勇者を手に入れたのだ。人の、いや龍族の熱気が渦を巻いてトロールたちに向かってゆく。熱気に後押しされるように、勇猛果敢に龍族はトロールの軍を叩き潰してゆく。先ほどと逆の流れだ。
ジェイさんが敵を倒して、後続が傷口を広げる。トロール全体がジェイさんに集中して突っ込んでいく。これが勇者の最高にして最良の用い方なのかもしれない。私はなにも考えずに目の前の相手を叩く。
「ここまでだな。脱出するぞ!マッチョは俺と場所を替われ!さっきの高台目指して進め!」
敵は私たちに向かってこない。私は斧を左右持ち替えながら道を作ってゆく。途中から道を作る必要すらなくなり、私たちは最初の高台の中段で戦局を見ることができた。
終戦だ。
ほとんどジェイさんが蹴散らしたようだ。
再びジェイさんの雄叫びが聞こえる。龍族がそれに呼応する。
今回も私は生き延びた。
やはり戦闘はトレーニングだと思った方が、ラクな気持ちで戦える。
「龍族下がれ!俺とマッチョが前衛をやる。背後と側面を援護しろ!」
「承知!」
精鋭と言ってもやはりトロールだ。私とフェイスさんの二人でサクサクと潰せる。奥の方にひときわ派手な恰好をしたトロールがいた。大きさは普通のトロールと変わらないが、あれが固有種だろう。大声で威嚇してくる。
ひゅぃ、という音が聞こえたあとに、固有種の目に矢が刺さった。
すかさずフェイスさんが一刀で首を切り落とす。
「なんだかあっけなかったですね。」
「事前の備えがあればこそだ。挟み撃ちにされなくてラクだった。ツイグ、お手柄だな。」
「ういっす!」
「だが俺やマッチョの頭に当たったらどうするつもりだったんだ?次は味方がいない射角から打て。」
「う、ういっす・・・」
固有種に向き合うだけの勇気まで手に入れたか。ツイグの成長は頼もしいな。だが流れ矢を食らうのは勘弁してほしい。
「これで流れが変わるはずだ。あとは各個撃破してお終いだ。」
「・・・全体的に押されてませんか?」
「・・・あれ?」
フェイスさんが考えながら戦局を見ている。なにかに気が付いたようだ。
「・・・ヤバい!俺たちも横から突っ込むぞ!走れ!」
私たちは意味も分からないままフェイスさんに走ってついていった。
「俺が倒したやつ、ただの斥候だったんすかね?固有種にしては簡単でしたもんね。」
「違う!固有種が二体いたんだ!身体強化型の固有種が乱戦の突破口になっている。統率型がいなくても数と組織で割られるぞ!急げ!」
こちらは高台で、あちらは平地だ。間に合うのだろうか?
乱戦の横に出た。敵陣の横から攻撃することは間違いではないのだろうが、数が多すぎる。固有種まで届くだろうか?
「ツイグは本体後方まで行って援護してやれ!龍族は俺たち二人の背後を頼む。マッチョ、固有種まで突っ込むぞ!」
「ういっす!」
「承知した!」
「分かりました。」
固有種がいるであろう方向に進んではいるが、いかんせん敵が多い。四人ではあっという間に囲まれる。後衛の龍族が厳しそうだ。
「マッチョ、前衛頼む。龍族はマッチョの横を固めろ!しんがりは俺がやる。速度最優先で龍族が吹っ飛ばされている方向に進め!」
やることはやっているが、敵がとにかく多い。倒しても倒しても次から次へやって来る。こういう時のコツはあまり戦闘だとは思わないことだ。トレーニングだと思えば敵をいくらでも叩ける。
しかしそうは言ったものの、私の前衛では敵の数が多すぎてこれ以上は進めない。かといって後衛と入れ替える余裕も無い。私たちは完全に敵軍の中で孤立してしまった。このまま潰されるのか?いや固有種の気が変わったらこちらから潰しに来るかもしれない。それならまずは敵の数を減らしていけば・・・
清流まで盛大に吹っ飛ばされた前衛の龍族の中に、ジェイさんが見えた。
あれだけ強そうだったのに、固有種を抑えきれなかったか。
いや、よそ見をしているわけにはいかない。一歩でも固有種に近づけられればこちらに注意を引きつけられるかもしれない。
青白き閃光が清流からあふれ出しているところが見えた。
なにかが飛ぶ姿が見えた。
龍族だ。青白く光っている。ジェイさんか?
三叉鎗を好き放題に振り回して敵陣に単騎で突っ込んでいく。青白い光がある先で、トロールたちが宙を舞っている。
トロールの動きが止まった。ものの数十秒の突撃で固有種を倒したらしい。
龍族の、いやジェイさんの雄叫びが聞こえる。
「あれが・・・精霊の恩寵なのか・・・」龍族の二人が戦いながらも驚きを隠せずにいる。
戦いの流れが変わった。龍族は勇者を手に入れたのだ。人の、いや龍族の熱気が渦を巻いてトロールたちに向かってゆく。熱気に後押しされるように、勇猛果敢に龍族はトロールの軍を叩き潰してゆく。先ほどと逆の流れだ。
ジェイさんが敵を倒して、後続が傷口を広げる。トロール全体がジェイさんに集中して突っ込んでいく。これが勇者の最高にして最良の用い方なのかもしれない。私はなにも考えずに目の前の相手を叩く。
「ここまでだな。脱出するぞ!マッチョは俺と場所を替われ!さっきの高台目指して進め!」
敵は私たちに向かってこない。私は斧を左右持ち替えながら道を作ってゆく。途中から道を作る必要すらなくなり、私たちは最初の高台の中段で戦局を見ることができた。
終戦だ。
ほとんどジェイさんが蹴散らしたようだ。
再びジェイさんの雄叫びが聞こえる。龍族がそれに呼応する。
今回も私は生き延びた。
やはり戦闘はトレーニングだと思った方が、ラクな気持ちで戦える。
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